「伝える」ことを意識した1年間の成果『BORDERLESS』
――そうした影響もあって、今回のアルバム『BORDERLESS』はとても祝祭的な作品になっていますね。
福永 : そうですね。僕らも嬉しかったし、お客さんも喜んでくれていて、その影響はすごく出ていると思います。音のクオリティに関しても、今回は段違いに上がっていると僕たちは思っていて。これまで、クリアな音はあまり出せていなかったのかなと思うんですけど、今回はとてもクリア。そうした音質の違いも祝祭感みたいな部分に繋がっていると思います。
――特に、1曲目でタイトルトラックになっている「BORDERLESS」は、ライブでの大合唱が目に浮かぶような曲で、雨のパレード史上もっとも明快なポップ・ソングと言っていいんじゃないかと思います。
福永 : 作っていく上で、これは1曲目だなっていう感覚があったんですね。いろんなジャンルに広がっているバンドなので、このアルバムは作品としてどういう見え方になるんだろうと考えていたんですけど、1曲目が「BORDERLESS」になれば何をしても許されるんじゃないかと思ったんです。この曲は、人はみんな誰かに許してもらいたいんじゃないかという思いから作った曲。その人の人生を、どんな寄り道でも肯定してあげられたらいいなって思いながら書いたんですね。そうすることで、僕らも逆に許してもらえているというか。
雨のパレード – BORDERLESS (Official Music Video)
――そうした許しだったり、人と何かをシェアするような感覚は、アルバム全体の芯になっていると思うのですが、いかがですか?
福永 : 新体制になってからの1年は、より「伝える」ということを意識した1年でした。。前作タイミングからレーベルのディレクターその方が本当に信頼できるディレクターも新しく変わったんです。その方が僕と思考が似ているところもあって、可能な限り提案に応えようと思っていたんですね。「プロデューサーを入れてみたらどうだろう?」っていう提案をしてくれたのもそのディレクターで、歌詞のやり取りも相当しましたね。バンドが新体制になっただけじゃなく、チームとしても新体制で出来たことが良い方向に進んだという実感はあります。
――「Story」や「Hallelujah!!」は、ゴスペルを取り入れていた新機軸に仕上がっていますね。
福永 : 今までもずっとやりたいと思っていたんですが、いかんせん同期を使っていなかったので、ライブのアプローチ的に難しかったんですね。でも、今は何も臆せずにやろうと思ったことを出来る。だから、ようやく実現できたという感じです。
――ゴスペルはゴスペルでも、現代的なゴスペルの解釈になっていますよね。ボン・イヴェール以降のデジタル・クワイアというか。
雨のパレード – Story (Official Music Video)
福永 : そうですよね。「Hallelujah!!」はほぼ生のコーラスなんですけど、「Story」に関しては特にそういう要素に仕上げてます。自分たちも好きな音楽なので。
海外の音楽から受けたインスピレーション
――海外との同時代性について、今回はどれくらい意識しましたか?
雨のパレード – 惑星STRaNdING (ft.Dos Monos) (Official Music Video)
福永 : 実は毎回、曲ごとに意識している人がいるんです。ただ全体を意識するという訳ではなくて、今回で言えば、「Hallelujah!!」の歪んだハープの音はトロイ・シヴァンの「The Good Side」という曲からインスピレーションを受けていたり、「惑星STRaNdING (ft.Dos Monos)」のイントロでは、オーストラリアのプロデューサー・フルームの「Hi This Is Flume」というミックステープを参考にしていたりします。パンフルートを狂ったように弾いてるのが「イケてるな」って思って。
――やはり新譜からインスパイアされることが多いんですね。
福永 : 基本的には新譜ばかりですね。でも、「Gullfoss」はシガー・ロスのヴォーカル・ヨンシーと恋人が作った、ヨンシー&アレックスの『Riceboy Sleeps』に影響を受けていますね。アンビエントアルバムなんですけど、すごく大好きで。最初はアルバムに入れるつもりもなく、その作品を真似て作っていて、カセットテープに録音して、そのカセットをグチャグチャにして、それをまたパソコンに取り込んで……。出来たのを聴いたら、まさにこれじゃん! っていう(笑)。
山﨑 : カセットテープの質感がまた良いんだよね。
――なるほど。「Gullfoss」というタイトルはオートEQプラグインの名前から取ったのかと思っていたんですが、そうではない?
福永 : その由来にもなっているアイスランドの滝の名前から取りました。ノイズだらけの曲なので、滝の雑音みたいなものを感じてもらえたらいいなと思って。
――今回、雨のパレードとしては初めてインストの曲が収録されていませんよね。
大澤 : あぁ、確かに!
福永 : いや、絶対に今気づいたよね(笑)。
大澤 : 「Gullfoss」がそういう箸休め的なイメージだったんだよね。
――そうですね。ただ、これまでなら「Gullfoss」のような曲をインストとして仕上げていたんじゃないかと思うんです。それも1つ象徴的なんじゃないかと。
福永 : 確かに、そうなんだと思います。気づいたら自然と歌を乗せていたので、どこかにそういう意識はあったんじゃないかな。
3人体制での新たなスタート、新たな魅せ方
――アルバムのラストを飾るのが「Ahead Ahead」で、一気に再浮上して終わる流れも印象的です。この並びになったのはどうして?
福永 : いろんなアルバムの流れを試す中で、ここが1番しっくりきたんですね。今の自分たちのマインドに1番合っている終わり方が「Ahead Ahead」だったんです。
――今のマインドというのは?
福永 : 3人体制になって初のアルバムということで、ここからがまた新たなスタートという気持ちですね。その始まりにピッタリの締め括りという。
――では、最後に。今回のアルバムを引っ提げて、2月から全国ツアーが始まりました。それぞれの意気込みを教えてください。
山﨑 : 3人になってから初めてのアルバムということで、今まで以上に多種多様な楽曲を収められたと思います。『BORDERLESS』というタイトルがまさしく表現された作品になったので、皆さんに届いてほしいですね。今回のツアーでは、今までワンマンで行けていなかった場所にも足を運ぶので、3人体制の僕らを観られていない人にもようやく今のパフォーマンスを見せられるということで、楽しみにしています。
大澤 : ドラムでいうと、前作よりも打ち込みが多い分、生ドラムの良さや構築されたビートの面白さを感じてもらえると思います! ぜひ、アルバムをいっぱい聴き込んでから、ライブに来てもらいたいですね。
福永 : 1年かけてライブの構築をいろいろ試してきて、また新たな魅せ方を披露できると思っています。「BORDERLESS」や「Ahead Ahead」、「Summer Time Magic」のようなお客さんと一緒に楽しめるような曲もありつつ、僕らの深い世界観を表現できるようなセクションもありつつ。いろいろな表情を見せられればいいなと思いますね。
雨のパレード ニューアルバム「BOREDERLESS」
2020年1月22日(水)発売
【通常盤】
<1CD> 品番:VICL-65265/ ¥3,000+税
【完全生産限定盤】
<CD+BONUS CD+GOODS> 品番:VIZL-1696/ ¥4,800+税
GOODS:ドイツ製本アートブック仕様(A4サイズ・48ページ)
BONUS CD:LIVE ALBUM『Live at TOKYO-LIQUIDROOM 2019.4.24』
<『BORDERLESS』 収録内容> *両形態共通
1. BORDERLESS
2. Summer Time Magic
3. Story
4. Walk on
5. Trust
6. 惑星STRaNdING (ft.Dos Monos)
7. Hallelujah!!
8. EXIT
9. Gullfoss
10. Material
11. Ahead Ahead (new mix)
<BONUS CD収録内容>
1. Reason of Black Color
2. Tokyo
3. You
4. 1969
5. speech(interlude)
6. free
7. Hwyl
8. /eɔː/
9. Take my hand
10. Shoes
11. You & I
12. Noctiluca
13. new place
14. Count me out
15. Ahead Ahead
雨のパレード
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