このコラボを知ったときは、心がザワついた。以前、リミックスで雨のパレードとDos Monosが邂逅しているものの、今回はガッツリ両者が1曲の作品でコラボしたからだ。雨のパレードが3人体制になって初のアルバム『BOREDERLESS』は全編、これまでの彼らのアプローチを超えているが、その最たるものがDos Monosとコラボした「惑星STRaNdING(ft.Dos Monos)」なのではないだろうか。
12月4日にデジタル・リリースされた瞬間から、雨パレ、Dos双方のファン、ひいては両者の音楽に紐づくアーティストにサブスクリプション経由で接しているリスナーにもリーチしている「惑星STRaNdING(ft.Dos Monos)」。自然と耳にした人も多いはずだ。
メジャーシーンで日本のポップミュージックシーンに刺激を与える雨のパレードと、日本のヒップホップのコンテキストでも逆輸入でもなく、独自な立ち位置のDos Monos。接点のなさそうな両者がどう出会い、何を糸口に「惑星STRaNdING」の完成に至ったのか。そして「デススト」との関係は?
奇跡的に6人全員が集合した、ある夜のクロストークを届ける。
Photography_Toyohide Kanda
Interview&Text_Yuka Ishizumi
Edit_Miwo Tsuji
最初、やんわり断ろうと思って(荘子it)
――雨のパレードと、Dos Monosは、元々知り合いだったんですか?
福永浩平(以下、福永) : そうですね。共通の友達が多くて。DATSのライブにDos Monosがゲストで来ていたのが、2年前ぐらいだっけ。
荘子it : そこで(DATSのMONJOEに)紹介されたんだよね。中高時代にギターをやっていたのもあって、その縁でMONJOEをはじめとするバンドの知り合いが多くて、雨パレとのこういう組み合わせが自ずと発生するような境遇にいたのかも。Dos Monosってアンダーグラウンドヒップホップに繋がりがそもそもないもんだから、早くラッパーらしいライフを送りたいと思うけど、実際にはラッパーの友達が、ほぼいないんだよね(笑)。
大澤実音穂(以下、大澤) : えー? そうなんだ!
雨のパレード:左から、山﨑康介(Gt)、大澤実音穂(Dr)、福永浩平(Vo)
――仕事としては雨パレ「Hometown」のリミックスが始まりですか?
福永 : そうですね。リミックスを、一度お願いして。で、今回のアルバムでもDos Monosとなにか一緒にできたらいいなっていうのは考えていて、ディレクターとも話していたんです。
荘子it : アルバムの最後のピースとしてね。この話をいただいた時はあまりにも光栄なこともありつつ、荷が重いから、最初、やんわり断ろうかと思って(笑)
福永・大澤・山﨑 : (笑)
荘子it : 呼び出された打ち合わせの日には、まず寝坊して2〜3時間待たせて、しかもちょっと「最近忙しいんすよね」ベースで、殺される覚悟で行って。
――なんでまた(笑)
荘子it : 雨パレが軌道に乗っているバンドなのに対して、俺らの普段の音楽は、かなり変わっているというかニッチな音楽性なので。Dos Monosは自分の空間だから好きにやっていいんだけど、人とコラボする時は、組んだ意味があるコラボをしたいなって。なんかメジャーなシーンで変なことやってスベるの好きじゃないから、そこで相乗効果を生めるようなコラボができるなと思った時にだけやりたいと思ったし、まだそれなりに時間をかけないといけないんだろうなと思ってたから、最初ちょっと弱気に行ったんだけど、雨のパレードのディレクターさんが「ぜひ、お願いします」、と。
福永・大澤・山﨑 : (笑)
荘子it : ぜひっていうか、「え?やらないつもりですか?」みたいにくるから、「……やります」みたいな感じで(笑)。「じゃあ明後日、浩平くんの家行って、曲作りなよ」と。
――詰められてる(笑)。じゃあ荘子itさんと福永さんが主に交流があり?
福永 : まぁそうですね。Taitanとはライブハウスで会えば挨拶するし。
――音楽以外の文脈で言うとどんなところで会ってるんですか?
福永 : カフェですかね(笑)。カメラマンの友達がいるんですけど、同年代ではものすごく顔が広くて、カルチャー系の知り合いがめちゃくちゃいるんです。モデル然り、ミュージシャンやカメラマン、編集者だったり、いろんなやつらが繋がっているグループに行くことが結構あって。
Taitan : それが2年前とかで。で、たまに会うとコミュニティが一緒で、っていう。30人ぐらいで、一気に会うことはないですけど。その中で、選択制でカフェに集まるんだよね。
日常でつながった人たちと何かをするのは大事なことな気がしてて(福永)
――なるほど。では、お互いの音楽性についての第一印象を教えてください。
福永 : うーーーーーん。でも、日常でつながった人たちと何かをするっていうのはすごく大事なことな気がしてて。もちろん音楽的にすごく好奇心くすぐられたというか、興味がかなりあったので、これは一緒にやってみたらどんな感じになるんだろう? って気になりましたね。完成図が見えなかったからこそ、その分期待もしていました。
荘子it : 前に聞いた話で面白かったのが、(福永が)東京に出てきたばっかの頃に、まずバンドメンバーを探すのに、音楽学校にモグリで入って、同じクラスのやつが全然ダメだった、という話で(笑)。
福永 : (笑)。キーボードのメンバーを入れたくて、渋谷にある専門学校に体験授業で入ったんです。ここに、いいキーボードの人がいるかもしれないと思ったんだけど。
Taitan : 強えなあ。
福永 : でも、結局いい人に巡り会えず、そのまま帰りましたけど(笑)。
――……これ何の話でしたっけ!
一同 : (笑)
荘子it : 「お互いの音楽性に対する印象」ですね。これは雨パレに限らず、バンド系の人全般に対して思うんだけど、俺とは音楽を作る焦点が違うような気がする。雨パレも音源を打ち込みで作っている曲もあるけど、バンドサウンドが見えてくるような打ち込みっていうか。それに対して、俺の音楽性って、ほぼバンドで再現できないタイプなんですよね。むしろそこが聴きどころになってるんだけど。それはバンドの人にとってはせいぜい「味」、ちょっとしたエグみでしかないところが、俺らの場合はほとんどそこの魅力だけで作ってるから、結構そこは考え方が違うかなと。だから雨パレのサウンドは打ち込みなんだけど、俺が普段作ってる、一番焦点置いてるポイントとは違うところ、曲の骨格みたいなところに焦点が置かれてるから、だからこそ俺の味を入れやすいっていうか、コラボしやすかった。俺のエグみを入れる余地があるというか。
――雨パレの打ち込みは単なる味付けみたいには聴こえなかったと?
荘子it : 普通、バンドサウンドにとってのふりかけみたいなものとして、電子音楽とか打ち込みのビートがあるとしたら、雨パレの場合、結構、骨格から打ち込みの音楽を昇華してて。電子音にしろ打ち込みにしろちゃんと理解して、それが曲の骨格になっていて。その先にちゃんとバンドサウンドの再現が見えてるなっていうふうな印象。俺はその打ち込みの音楽をやるのに、バンドサウンドの再現とか普段は意識してないから、その違いは感じるな、と。
――なるほど。大澤さんはDos Monosの音楽性について思うことは?
荘子it : ヒップホップ、そんなに聴かないでしょ?
大澤 : や、そのヒップホップの世界を理解してるかはわからないけど、そういうのは結構好きで。Dos Monosは同世代でちゃんとかっこいいことやってる3人っていう感じで、荘子itくんとかも、浩平(福永)の知り合いのDATSの子たちとやってるんで、注目はしていました。なんかかっこいいことやってるなってずっと思ってたんで、今回も一緒にやれてめっちゃ嬉しかったです。
山﨑康介(以下、山﨑) : 僕もヒップホップの文化自体にはほとんど馴染みがなくて、どっちかというとミクスチャーとかから入ってて。で、特にリンプ・ビズキットとかだとギターサウンドのアプローチとか、ビートもすげえ粗いっていうか、パンチ力すごいし、ギターのアプローチもエッジが立ったのが多くて。さっき言ってたエグみのあるサウンドがもともと好きだったんで、Dosのトラックとかも結構エグいサウンドがふんだんに使われていて、僕はそこに惹かれるものがありましたね。リミックスされたものも然り、今回一緒にやった「惑星STRaNdING」然り、そういうエッセンスが出てたからすごい良かった。
――Taitanさんは?
Taitan : 最初知り合った頃は「線の細い音楽やってるのかな?」って、名前の印象だけで思っていたんです(笑)。でも(雨パレの)ライブ見たら、芯が太かったんですよ。なんかアトモスフィア系のバンドじゃ全くないところが、めっちゃいいなと思って。生で見て、音でちゃんと殺しにかかるっていうか、歌がちゃんと本物としてあるっていうのが。その意味で今回コラボするときも僕らが持ってる重心の低さみたいなところとうまく合致するのは見えてたっていう感じの印象でしたね。
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