寄席に行列ができたり、『超入門!落語 THE MOVIE』や『落語ディーパー!~東出・一之輔の噺(はなし)のはなし~』などの番組が人気を博したりと、何年も前からブームと言われ続けている“落語”。それでも、何を聴いたらいいかわからないという声もよく耳にします。そこで、落語を聴いたことのないひとにオススメの9席セレクトしてみました。
2018年の笑い始めに、泣き始め。そもそも落語始め、してみませんか?
初心者は立川志の輔という洗礼を受けるべき。
映画、テレビドラマ、舞台にもなった『歓喜の歌』をはじめとした数々の新作落語、演劇的な手法で落語を知らない人にもその魅力を伝える『志の輔らくご』など、落語初心者はまず立川志の輔さんからというのが定石。ですが、個人的には長尺の人情噺こそ聴いてほしい。
1時間近くの噺を飽きさせない、緩急の付け方。1,000人クラスの会場で全員が同じタイミングでぐっと息を呑み、驚き、笑う瞬間。あれは、ぜひ体感して頂きたい。
では、新作はと言えば『モモリン』がオススメ。着眼点、展開など、古典にとどまらない創作能力の高さをお楽しみあれ。
戌年なので『元犬』を
落語家は季節や時事ネタを踏まえて、その日のネタを決めているそう。今年は、戌年なので『元犬』を聴く機会も多いのでは。動画は古今亭志ん朝さんの高座から。音声だけでもその場の情景が浮かび上がる昭和の大名人。なんて言われるととっつきにくいかもしれないですが、本当に聴きやすくおもしろいのです。
猪鍋を食べる仕草に注目
季節の噺つながりで、三遊亭兼好さんの『二番煎じ』を。寒い冬の晩に、役人に見つからないように鍋をつついて、酒を飲む人たち。本当に美味しそうで、ひとの持つ可笑しみもある。この季節に聴くと、すごくほっこりする噺です。
元タウン誌記者でその後、魚河岸で働きながら三遊亭好楽さん(笑点のピンクの着物)に弟子入りした兼好さんは、おじいさんがボソボソしゃべるという落語のイメージを確実に崩してくれます。
まさか羽織りが……!?自由度の高さが面白い柳家喬太郎の『コロッケそば』
動画のタイトルにもあるように、柳家喬太郎さんがまくら(本題に入る前の小咄)でコロッケそばについて語っているのですが、『え、落語ってそんなに自由なの? あ、コロッケそばをそう表現する!』など、驚きと笑いの連続。もちろん本編も面白いので、ぜひ動画でご覧ください。
ちなみに、喬太郎さんの『死神』も一見の価値あり。コロッケそばの後に聴くと、幅の広さに驚きます。
落語は観客も一緒に作り上げるもの
去年、国立演芸場で聴いた入船亭扇遊さんの『たちきり』は、噺もさることながら客席の集中力が凄まじかった。飴の包装紙を開ける音も、携帯の着信音も、何もしない。扇遊さんが発する音だけが響く。それはそれは、いい体験でした。
最近、場内での撮影や着信音が鳴るという事が増えてきました。
場内での撮影は禁止となっております。
飲酒も禁止となっております。
また、携帯電話の電源はオフにするか、音が鳴らないように設定お願い致します。— 末広亭 (@suehirotei) 2017年11月18日
然しながら、聴いて欲しい噺家の動画がないのが、落語を紹介することの難しさ。ですが、『たちきり』を好きになったのは柳家さん喬さんがキッカケなので、こちらをぜひ。映画の番宣でよく聞くあれには懐疑的ですが、泣けます。サゲの鳴り物が効果的で、そして切ない。
腹がよじれるとは、このことか!
さて2017年で一番笑ったのは、三遊亭萬橘さんの『次の御用日』でした。とにかく笑った。腹がよじれるとはこのことか! と思うほどに。サゲに向かって、このまま行くとどうにかなってしまうんじゃないかと思うくらい笑った。やっぱり本人映像はなかったので、上方落語ということで桂枝雀さんでひとつ。
ネタは違えども萬橘さんの高座は、三遊亭きつつきさん時代のモノでどうぞ。
これを機に落語に興味を持った方は、ぜひ生の落語に触れてみてください。音楽がそうであるように、落語も音源とライブは別物。じゃあ、誰を聴けばいいのか。今回ご紹介した方々はもちろん、広瀬和生さんの著作で予習することをオススメします。きっと、「聴いてみたい!」と思える落語家に出会えるはずですから。
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