TDMEの終着点、ダンスフロア
TDMEに集まった人たちの最終目的地は何といってもここ、ダンスフロア。レーベルもメディアもインフルエンサーもオーディエンスもDJも、終着点は一緒です。今回のTDMEライブパートは、渋谷中のクラブを巻き込んだスケールで展開されました。内容もすこぶる豪華。石野卓球のレジデント・パーティー<STERNE>にはゲストとしてダニエル・ミラー(伝説のインディペンデントレーベル『Mute』の創始者)が登場しましたし、CIRCUS TokyoではWarpの新鋭patten(パテン)の再来日公演が開催されました。原宿のVENTにはベルリンのベストパーティー<Homopatik>の主宰”Mr. Ties“まで来たわけですから、もうお祭り状態ですよ。
で、ミーティアでは12月2日に渋谷ヒカリエを舞台に開催されたSPINNIN’ SESSIONSの模様をレポートします。ULTRA JAPAN以降、フェス化したダンス・ミュージックがクラブというクローズな空間に回帰した4時間でした。
Madison Marsと幸福なHexagonian
オランダのDJ/プロデューサー、ドン・ディアブロが2015年に立ち上げたレーベル、<Hexagon>。ダンス・ミュージック界隈で今最も勢いがあるのはここでしょう。主宰のドン・ディアブロ同様、いつの間にか巨大なファンベースを築き上げておりました。(“Hexagonian”とはまさしく彼らのファンのことです)
今回のSPINNIN’ SESSIONSで初来日を果たしたのは、そんなレーベルの一員、マディソン・マーズ。元々彼はトランス系のトラックメイカーでして、現行のフューチャー・ハウスに流麗なピアノやシンセサイザーのサウンドを散りばめた音像が特徴です。
「巨大なファンベース」というのは当然日本も含まれておりまして、この日のオーディエンスも『Ready Or Not』や『Milky Way』に狂喜乱舞していました。
Madison Mars – 『Milky Way』
最後はレーベルメイトのRetroVisionの『Waves』をプレイして〆。マディソン・マーズのDJというよりは、<Hexagon>のストーリーをミックスで表現したような内容でした。オーディエンスのレスポンスも相まって、双方向で理想的なフロアの雰囲気であったように思います。その勢いに違わぬ、未来的で多幸的な物語。
ところで、今年の大晦日は御大ドン・ディアブロのカウンドダウン・パーティーが新木場のagehaで開催されるようですよ。さらっと発表されておりましたが、この冬一番のビッグなニュースですね。
ディープとフューチャーを繋いだEDX
個人的に一番楽しみにしていたのがこの人、EDXです。ダンス・ミュージックがフロアからフェスに場所を移してから、多くのDJがスタイルを変え、ビッグルーム仕様のトラックを作り始めました。しかもその時々でトレンドがダイレクトに反映されるわけです。バウンス系のトラックが流行り、トラップが流行り、トロピカル・ハウスが流行り・・・。
そんな中、EDXは一味違います。ずっとディープ・ハウス。たまにプログレッシブ。全くブレない。スイス出身の41歳、場所を2017年の渋谷ヒカリエに移しても、鋼鉄のごとくブレないのであります。新曲の『Runnin’』や『All I Know』から、少し前にリリースされた『Belong』や『Missing』まで一貫したプレイ内容。
EDX – 『All I Know』
いわゆる「EDM」という括りの中では分かりにくい方かもしれませんが、彼の音楽こそクローズなフロアの空間とダイレクトに繋がっていると思いますね。今回のSPINNIN’ SESSIONSのような規模感だとさらに輝く。最高でした。
次世代ポップスター、Mike Williams
イケメンであります。弱冠21歳の新鋭、マイク・ウィリアムス。加えて真夏のプールのように爽やかな好青年なので嫉妬する気も起きません。
今回のSPINNIN’ SESSIONS、音楽的なテーマとして「フューチャー・ハウス」が根底にあったと思います。「音楽の未来を考える」というTDMEのコンセプトに掛けたわけではないのでしょうが、ラインナップに一貫したストーリー性を感じました。
で、トリを務めたマイク・ウィリアムスはフューチャー・ハウスと王道ビッグルームを掛け合わせたようなトラックを作ります。一発目の『Jetlag』からしてそんな感じ。
彼も今回が初来日ということもあり、筆者も彼のDJは初めて見ました。けれども、何でしょう。この主人公感。単純に顔が良いというだけでなく、大器を感じさせる雰囲気があったのです。ちょうど、3年ぐらい前のマーティン・ギャリックスのような。
Mike Williams x Dastic – You & I
最後は『You & I』で締めくくりました。マイク・ウィリアムスの出番が終了した後は、「エンディング」というよりもむしろ「始まり」を予感させました。その意味では、TDMEの期間中最も未来を感じたのはこの瞬間だったかもしれません。フロアの熱気も冷めやらぬ様子。
そんな独特な熱気を放ったまま、ヒカリエの夜は終わりました。考えて、聴いて、踊ったTDME。東京のダンス・ミュージック、延いては日本の音楽シーン全体にとって、有意義なイベントであったと思います。来年も色んな人に来てもらいたい。
■Tokyo Dance Music Event(TDME)
日程: 2017年11月30日(木)・12月1日(金)・2日(土)
会場: 渋谷ヒカリエ ヒカリエホールA ホールB 、渋谷周辺のクラブ
オフィシャルHP: http://tdme.com
Facebook: http://www.facebook.com/TokyoDanceMusicEvent
twitter: http://twitter.com/TDME_JP
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