渋谷ヒカリエに音楽シーンの未来を担う約100名のキーマンが集結
昨年から引き続き2回目を迎えるTokyo Dance Music Event(TDME)。11月30日~12月2日の3日間にわたって、音楽の未来について考える複合型イベントが開催されました。会場は渋谷ヒカリエ。本イベントは以下の3つのパートで構成されており、様々なベクトルで音楽について考えることができました。
CONFERENCE
音楽ビジネス、マーケティング、アート、テクノロジー業界に従事している方向けのビジネスカンファレンス
SESSION
著名アーティストが参加する楽曲制作者向けのワークショップやスタジオセッション
LIVE
国内外のアーティストによる、渋谷エリアのクラブ・ライブハウスで開催されるライブイベント
そしてコチラが当日のタイムテーブル(CONFERENCE、SESSION)。
カンファレンスはメイン・ステージとテック・ステージに分かれ、それぞれのテーマでトークが展開されます。
これらのトークテーマ、ざっと見て如何ですか?音楽を愛する人であれば、「それ気になってたわ!」というトピックのオンパレードかと思います。「日本におけるフェスティバルとダンスミュージック・カルチャーの関係」、「日本の音楽ストリーミング」・・・。
セッションには筆者が個人的に楽しみにしていたジェフ・ミルズによるアート・インスタレーション等々。いやはや、どれも興味深いコンテンツばかりでした。
この記事では、その中でも特に面白かったコンテンツをいくつかピックアップしてます。まずは水口哲也氏による「Dance Musicとゲームの出会い、そしてVR ~Rez Infiniteへ~」。
水口哲也と『Rez』の革新
みなさんは『Rez Infinite』というゲームをご存知ですか?水口氏はこのゲームのプロデューサーにあたります。俗っぽい表現をすれば、本作『Rez Infinite』は「神ゲー」です。それもゲーム文脈のみならず、様々な娯楽をワンランク上に押し上げるうえでも神がかり的でありました。
Rez Infinite
2001年に発売されたプレイステーション用ゲームソフト『Rez』の高解像度+VR拡張版が『Rez Infinite』。前作の『Rez』からして「音楽と光をゲームに融合させる」という作風が革新的で、当時からカルト的な人気を集めておりました。それが15年の時を経て、昨年ついにリリースされたわけです。
上の動画を見てもらえれば分かる通り、プレイヤーのアクションに連動して音楽と光が美しいシンフォニーを奏でます。まるで、プレイヤーがコントローラーのボタンを押すことで楽器を演奏しているかのように。それがVRになるとどうなるか?その感動はこの記事には書ききれません。何せ”VR(仮想現実)”ですから、もはや実態を持っているわけです。五感でこのシンフォニーを「体験」できる。
水口氏は「シナスタジア(共感覚)」というコンセプトを掲げ、長いことこのリアリティを追求してきました。その完成形が『Rez Infinite』だと言います。その言葉に違わず、そのままの意味で本作は「次元を超えた」ゲームだと言えるでしょう。
Rez Infinite Original Soundtrack
そしてトーク終わりに水口氏はこう言いました。「制約があることで確かに発展するものはありますが、そこから解き放たれたとき、僕らはさらに大きく前進できるはずです」。VRを筆頭としたデジタル・テクノロジーが僕らの想像力に追いついた今、まさに水口氏の言葉通り、今後のエンターテイメントは加速度的に発展してゆくでしょう。その未来はきっと明るい。
テック・ステージでは、よりビジネスライクなトピックが展開
メイン・ステージ横の通路を奥に進むと、特設ステージが見えてきました。こちらで展開されるのは、どちらかと言えば音楽にまつわるビジネスの話。音楽ビジネスも今や完全に分岐点ですから、筆者もトークを聞きながら必死に考えました。
ここでは、『音楽定額制配信サービスの現状』をピックアップ。
写真左から、音楽メディア<Spincoaster>のキュレーター/インタビュアー、野島光平。渋谷の音楽シーンを牽引するレーベル<origami PRODUCTIONS>のCEO/A&R、対馬芳昭。デジタル音楽のディストリビューションサービス<TUNECORE>の日本版設立者、野田威一郎。
文字通り、音楽のサブスクリプション・サービス(SpotifyやApple Music)の話ですね。日本の音楽市場では、いまだにCDが大きな存在感を放っていますが、そろそろ本格的にデジタル配信に移行するときかもしれない・・・。そんなふうに思ったトークセッションでした。
突然ですけれども、AmPmというアーティストを知っていますか?
AmPm feat. Michael Kaneko – 『Best Part of Us』
この記事に興味を持ってくれるような人は、もうご存知かもしれませんね。Spotifyを介して世界的なブレイクを果たした覆面ユニットです。2017年12月時点で、全楽曲累計で約1600万回も再生されています。特筆すべきは、彼らが日本人であること。CDが覇権を握る日本の音楽市場において、なぜ彼らの楽曲の再生回数はここまで高い数字に至ったのか?答えは簡単。海外のリスナーが、彼らの音楽を聴いているからです。SNS的なコミュニケーションでもって、彼らの音楽は草の根的に広がっていきました。そしてインドネシアで開催された万人規模のフェスにも出演を果たします。で、このトークセッションの論旨は、この「AmPm的事案」は今後も増えてゆくだろうし、増やしてゆかなければならないだろうということ。
ちなみにこのトークを受けて、筆者がSpotifyで各アーティストの再生状況を調べてみたところ、「AmPm的事案」に近いのはKOHHでした。
KOHH – 『飛行機』
KOHHは既にブレイク済みと見る向きが大半でしょうが、ここでは海外からのアクセス数が日本のそれに勝るとも劣らないという点でピックアップしております。
トークの最後の「AmPm的事案を増やすためには?」という問いに対し、対馬氏はこう言います。
「”シェア”が足りてないんですよね。国内の音楽シーンは競争が第一で、横の繋がりを持とうとしない。『出し抜いてやろう』ではなく、シェアできるところはシェアし合ったほうが日本の音楽シーンのためになると思います」
多くの人材を抱えるメジャーレーベルともなると中々動きにくいところもあるでしょうから、それこそインディペンデントなクラブシーンには、何かヒントが転がっているかもしれませんね。Spotifyが得意とするSNS的コミュニケーションをクラブに持ち込んでも面白そうです。
カナダの音楽プロデューサー/DJ、ライアン・ヘムズワースによるプレイリスト。
海外だと既に一般化しているプレイリスト機能も、日本国内ではまだまだ発展の余地がありそうですし。
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