シリアスと道化の間を往来するシャムキャッツ
何というか、ズルいバンドだと思う。シャムキャッツの夏目知幸(Vo.Gt.)はいつもライブのMCでおどけてみせるけども、音楽に対しては至って真面目。いや、このおふざけだって彼にとっては単なる冗談ではないのかもしれない。この日もドラムの藤村が着ていたオッパイのTシャツをいじり倒し、右のキ○タマがどうとか言っていた。こんなに破天荒なのに、彼が書く曲は果てしなく甘酸っぱい。
シャムキャッツ – 『AFTER HOURS』
いやー、ズルい。下ネタのあとでこんな曲聴かされたら、そりゃあ好きになります。新曲も披露されたのけれど、まだタイトルが決まっていない模様。この記事が公開される頃には何らかの動きがあるかもしれないが、曲名を『暗闇に手を伸ばせ』か『トラベル・エージェント』のどちらにするかで迷っているのだとか。シャムキャッツの凄いところは、複雑な状況を複雑なまま、それを飾り気のないシンプルな曲にして聞き手に訴えかけるところです。例えば、『洗濯物をとりこまなくちゃ』。何気ない風景に潜む不穏さとか不気味さのようなものを、淡々としたテンションで歌い上げる。先の新曲もそんな感じ。「暗闇」と「暖かいところ」という、ある意味で相反するようなモチーフを抱き合わせ、繊細な心象風景を表現する。ちなみに同曲収録の新作『FRIENDS AGAIN』がリリースされるのは6/21。まだ少し先なので、首を長くして待ってます。
新曲パラダイス。レコーディングから解き放たれたNabowa。
この日のNabowaはえらく気合が入っていた。バイオリンの山本曰く、「最近ずっとレコーディングだったんですけど、やっぱりライブは楽しいですね!」とのこと。今回はセットリストのほとんどが新曲で構成されていて、さながらこれまでのフラストレーションを爆発させるかのようだった。オーディエンスのリアクションを楽しみながら演奏する様子は、まるで新人バンドのようにフレッシュである。あくまで初見の感想として解釈して欲しいですが、Nabowaの新作はややブラック・ミュージックに寄った内容になるのではと思います。リズム隊のグルーヴ感が今までになく強調されていた。
Nabowa – 『ナイスパレード』
既存の楽曲で披露されたのは『ナイスパレード』ぐらい。やはりよく知っている曲には安心感があって、「いつもの曲もやります」というMCのあとにこの曲のイントロが流れたときはホッとした。彼らは卓越したテクニックを持つジャムバンドだけれど、それを鼻に掛けるようなところがない。本当に楽しそうに演奏するんです。バンドを結成してから10年以上経つのに、今も変わらず「気の良い音楽兄さん」といったところ。この素朴さこそが、NabowaがNabowaたりえる所以なんでしょうね。思えば彼らの演奏を屋内で聴いたのは今回が初めてだったけれど、「秘密の音楽会」みたいで良かった。
それはネタか、超絶か。驚きに溢れていたCHAI劇場。
うめぇ。僕がCHAIに抱いた感想は至極シンプルなものだったけれど、彼女たちの音楽は全くもって単調ではなかった。一体どんな原体験を経れば、こんなにハチャメチャなサウンドが出来上がるのだろう。彼女たちの音楽はとにかく雑食性が高い。ときにヒップホップで、ときにオルタナティブ。かつ、そこらのバンドマンが霞むほどの高い技術力を持っている。ベースのユウキに至っては、もはや「職人」である。チョッパーからスラップまで、何でもござれ。
CHAI – 『ヴィレヴァンの』
このMVを観ても分かる通り、彼女たちは自由極まりない。双子のマナ(Vo.Key.)とカナ(Vo.Gt.)を中心に、ステージ上を所狭しと動き回る。ラッパーに変身したり、骨太なギターサウンドを鳴らしてみたり…。挙句の果てにはBackstreet Boysの『I Want It That Way』の替え歌まで披露しておりましたよ。持ち時間は30分と短かったけれど、十分過ぎるほど爪痕は残せたように思う。最後に演奏された『sayonara complex』にはやられた。あれだけ我が道を行きながら、最後はちょっぴりセンチメンタル。色んな意味で、今後が楽しみなCHAIでした。
■インディーロックの狂騒。プレイリスト
■『SYNCHRONICITY’17』
開催日時:
2017年4月8日(土)
開催場所:
TSUTAYA O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest
公式Webサイト
■本稿でピックアップしたアーティスト
OGRE YOU ASSHOLE
Yogee New Waves
シャムキャッツ
Nabowa
CHAI
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