「音楽に国境はない」なんてことを言うと、偽善的な胡散臭さを感じる人がいるかもしれない。僕が言いたいのは、もっと純粋な意味での「国籍消失」。歌詞が英語なのはもちろん、バンドによってはルーツとして日本を全く通過していなかったりする。最近はそういうミュージシャンが本当に増えた。ときに「保守的である」と批判される日本のポップミュージック界においては、歓迎すべき潮流だと思う。
4/8に開催された『SYNCHRONICITY’17』は、そこが渋谷であることを忘れるほど、無国籍なサウンドを鳴らすアーティストで溢れていた。本稿では、そんな「邦楽離れ」という安い煽り文句すら当たらない4組(うち一組は本当に海外のバンド)をライブレポート。
以下、本記事でピックアップするアーティスト。
WONK
Nulbarch
yahyel
JOJO Mayer & Nerve
ちなみに、「国内インディー・ロックの喧騒」というテーマでも『SYNCHRONICITY’17』のライブレポを書いているので、そちらもよろしくお願いします。
それでは、どうぞお付き合い下さい。
難解な音楽をクールにこなすエクスペリメンタル・ソウルバンド、WONK
正直に言って、WONKの音楽を全て咀嚼できたと思えるほど自分のリテラシーを信じてはいない。エクスペリメンタル・ソウルバンドと形容されるように、彼らが鳴らす音は豊富な知識と圧倒的な練度に裏打ちされている。意図的に拍子を変えたり、その場で即興的にアレンジしてみせる。ともすればオーディエンスが置いてけぼりを食らいそうだけれど、彼らはエンターテイナー。しっかり観客をアゲる。
WONK – 『1914』
こんなに複雑なビートでも彼らは自在に操るわけです。このビートに乗せて、長塚健斗(Vo.Gt.)が甘美な歌声を響かせる。難解なリズムをメロディが引っ張っていくというリスキーな展開。言うまでもなく、難易度はめちゃくちゃ高い。図抜けた音楽的素養を持っていなければ、途端に空中分解してしまいます。彼らは終始涼しい顔で演奏していたけれど、そこがまたかっこ良かった。この日はWONKのライブではお馴染みの安藤康平(Sax)も参加していて、彼がバンドにとって如何に重要な役割を果たしているのかもよく分かった。仕上げの曲は『savior』。音以外のギミックは一切なし。まさしく音楽との真剣勝負であったWONKのステージは、最後までクール過ぎた。
涼しさに垣間見えたNulbarichの熱いところ
短絡的なので、バンドの音楽を聴いただけで「この人はこんなキャラクターだろう」と勝手に思い込んでしまう。Nulbarichは聴いての通り、程よい抜け感のあるメロウなサウンドが特徴だ。そんなもんだから、僕は彼らに「お洒落」とか「アーバン」とか、やはり勝手なイメージを持っていた。それがしかし、彼らは想像以上に熱かった。
Nulbarich – 『NEW ERA』
フロントマンのJQ(Vo.)はMCでガンガン胸の内を吐露する。音楽だけ聴くとクールで都会的な印象が先行するが、本人たちは至ってロック。「歌詞を通してリスナーに伝えたいことは特にないです」と言い切るアーティストも多い中、彼らはちゃんと言葉を持っていた。最後に披露されたのは『LIFE』だったが、JQはこの曲の歌詞(When you’re going〜の部分)を引用してこう語る。
「ツイてないときは、いっそ世界をひっくり返してみようぜ。君がイイ時間を過ごせますように」
パッケージでは分からない彼らの一面が、垣間見えた気がした。
SHARE
Written by