魔暦21年11月10日(日)、ZEPP DiverCityにてデーモン閣下の「DEMON’S ROCK “DKR(うたどくろ)” TOUR」ファイナル公演が開催された。このツアーは10月16日にリリースされた『うた髑髏 劇団☆新感線劇中歌集-』に伴うもので、10月21日に大阪、11月2日に名古屋で公演を行ってきた。この日は本ツアーの千秋楽ということもあり、多くの熱心な信奉者が全国各地から集結していた。
開演直前、デーモン閣下の陰アナウンスが始まる。聞き慣れたあの笑い声が会場に聞こえてくるやいなや、ファンから大きな歓声が上がった。ファンにはおなじみの、閣下「~な奴らをどうすればいい?」「ころせー!!」という掛け合いに加えて、今期は別のタイプだとして「生かせー!!」というコール&レスポンスも行われ、観客のボルテージは最高潮に。壮大な物語の幕開けを感じさせるSEとともにバンドメンバーが登場し、コンサートが始まった。
Interview & Text_Akihiro Aoyama
劇団☆新感線とのコラボレーションで生まれた『うた髑髏』
『うた髑髏 -劇団☆新感線劇中歌集-』は、四半世紀にわたって閣下が劇団☆新感線に提供してきた劇中歌が収録されたコラボレーションアルバム。その世界観をベースにしているだけあって、今回のコンサートはアルバムの曲順にしたがって披露していく特別なセットリストとなっていた。
開幕を飾った「修羅と極楽」では、冒頭から大桃俊樹によるベースの凄まじい音圧に圧倒される。続く「Love Dies」では、ヘヴィで切れ味の鋭い演奏に乗って閣下のハイトーンシャウトも炸裂。『“シアトリカル”を超えた真の“Theater Rock”』という言葉にふさわしい、ドラマティックな世界観が展開されていた。
楽曲の間には、バンドメンバーによる朗読劇が挟まれ、演劇とロックが融合したロックオペラに豊かな表情を加えていく。この朗読劇は、閣下が十数曲の歌詞提供と劇中歌歌唱を行った『髑髏城の七人』シリーズをベースにしたもの。『うた髑髏』の収録曲もこの『髑髏城の七人』の提供曲が大半を占めるため、世界観がいっそう際立つ。
3曲目の「いきる」は、激しさから一転して、切迫した感情を伝える壮大なロッカバラード。閣下の歌声が会場に響きわたり、ファンの胸を絞めつける。続く「天魔王誕生」では、打って変わって閣下が天魔王になりきり、「髑髏城で待っている!」と不遜に言い放った。
二度目の朗読劇を挟んで、披露されたのは「刃よ明日に向かえ」。ここでは閣下が日本刀を持ち、歌いながら切り結んでいく。激しい死闘を感じさせる楽曲の後は、「きみ死に給ふことなかれ」が続き、バラード調からメロディアスなハードロックへと展開する中で仲間の無事を願う心情が会場全体へと伝播していった。
3(三?)度目の朗読劇で緊迫したシーンから一旦場面が切り替わり、「流れながれて極楽に」。祝祭的なイメージを持つこの楽曲では、みんなが拳を上げて陶酔している様子だった。曲の終わりでは、バンドメンバーが石垣愛(Gt)、松崎雄一(Key)、大桃秀樹(Bass)、ayumi(BGV)、MIYAKO(BGV)、原田喧太(Gt)、LEVIN(Drs)の順でソロ回しを披露。それぞれが見事なテクニックで魅せる中、MIYAKOは由紀さおり、中島みゆき、和田アキ子の歌マネで客席を盛り上げていた。そのソロ回しの間にデーモン閣下は衣装をチェンジして、次の「The Rock Age -闇に集いし妖しき衆生-」へ。さらに激しさを増す終盤へと突入していった。
朗読劇がクライマックス直前の様相を伝えた後、「名もなき火の鳥」を披露。続いての「Burning Beauty」は閣下、原田喧太、ayumiとMIYAKOによるコーラスで始まり、四つの歌声が絡み合うような競演を見せた。「Medleyさんちゃご 〜神の王国をつくれ 〜なぜに奪われし光」では、その2人がステージ前方へと進み出て、デュエット形式で観客を魅了。最後の朗読劇は24年前に閣下が主演を務めた「星の忍者」のラストシーン。そこから力強く前向きな「Get The Planet’s Power!」をパフォーマンスして本編は終了。閣下とバンドメンバーは一旦ステージを去っていった。
後半戦は信者とのコミュニケーションが濃密に
数刻の後、デーモン閣下によって事前に録音されたラジオのDJ風“ネタ”紹介がスタート。このコーナーは、ここ数年のコンサートtourでおなじみとなっていて、web上で観覧予定のファンから募集されていたもの。「私の人生の修羅場!(自分の人生最悪の経験談)」というお題のネタが数個読み上げられ、更に「うた髑髏」制作にあたってやはりwebで募集された「BGV用の『声』」を集めた音声が披露された。その内容に来場者からは悲鳴や笑い声が巻き起こっていた。
ネタ紹介が終わり、閣下とメンバーが再びステージに登場。披露されたのは聖飢魔Ⅱの「NO GOOD NEWS TODAY」。まさかの選曲に、ファンからは悲鳴のような歓声が上がった。「人生の修羅場」というネタコーナーのお題とも共通するテーマの楽曲で、途中の間奏部ではまたネタが読まれ、再度楽曲に戻るという凝った構成となっていた。たくさんの「人生の修羅場」をくぐり抜けてデーモン閣下と共に生きてきた信者の人生を祝福するように、続いて「NEW DAY COMES」を披露。会場中が国賓を迎える時のような小旗を振る景色でいっぱいとなり、閣下を呼ぶ歓声が鳴り止まない。
演劇を取り入れた内容ゆえに本編ではフリーMCなしだったが、ここでデーモン閣下が初めてステージ上でトーク。今回のバンドメンバー七人を丁寧に一人ずつ紹介していった。それぞれのミュージシャンにまつわる様々なエピソードが開陳され、会場は和やかなムードに包まれた。
憧れのアリスがプロデュースした新曲「NEO」
メンバーを交えたトークの後、内容は今の自分についての話へ。聖飢魔Ⅱの解散と再集結について、本当はずっと嫌だったと話しつつ、その間に大ファンだったアリスの活動再開を名古屋まで観に行ったことで、好きなアーティストが再集結することはこんなに嬉しいものなのかと気づいたという。そして、今回40年来の夢がかなってアリスにプロデュースしてもらえることになったと語り、披露されたのは12月4日にリリースされるニューシングル「NEO」。閣下が語ったように、谷村新司作詞、堀内孝雄作曲、矢沢透編曲による、アリス史上初の他アーティストプロデュース作品だ。
「NEO」は、この「DEMON’S ROCK “DKR(うたどくろ)” TOUR」東京公演が本邦初披露。これぞアリス節と言いたくなるようなどっしりとしたミドルテンポの楽曲で、閣下のシャウトが活き活きと響きわたる、互いの魅力を引き立て合った素晴らしい出来だった。
最後に「太陽がいっぱい」と「ハート8」を続けて披露……と、「ハート8」を間奏突入直前まで歌い終えたところでサプライズが。ハッピーバースデー♪の歌と共に、バースデーケーキが登場すると、閣下は「ここでか! 今回はなし!というサプライズかと思っていた」と言いながらも、嬉しそうな表情を見せた。デーモン閣下の発生日は、この公演当日の11月10日。最後の最後に、スタッフを含む会場のみんなから盛大な祝福の声が飛び、会場は温かな空気に包まれた。
「どこから再開する?」という閣下とバンドの相談を受けて、客席から「最初から!」という声が聞こえると、それに従って再び「ハート8」をフルコーラスで披露。そのパフォーマンスが終わり、メンバーがステージから降りていく中、閣下は独りステージ上に残り、アカペラで「千秋楽」(アルバム「うただま」収録)を歌い上げた。鳴り止まない拍手と歓声。二時間半に及ぶ熱演だった。
デビューから30年以上が経過した今も、新たな試みを通して「最新の自分」を更新し続けているデーモン閣下。この「DEMON’S ROCK “DKR(うたどくろ)” TOUR」にも、演劇とロックを融合させたロックオペラという最新の試みが詰まっていた。記念すべき「NEO」のリリースもついに果たし、閣下はまだまだ新しい景色を信奉者のみんなに見せてくれることだろう。
デーモン閣下 公式サイト
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