三浦大知のダンスと歌の完成度の高さには秘密があった
――サビのダンスも激しいですし、改めて歌と踊りの両立がすごいなって思うのですが、以前「関ジャム 完全燃SHOW」の振付師特集に出演した際に、「腕の筋肉をつけたら、声帯が伸びなくなった」という話を聞いたときに興味深いと思いました。他にもダンスと歌の両立で気を付けていることはありますか?
三浦大知 : 1番はその経験が大きかったです。重い筋肉というか、自分に合ってない筋肉の付き方ってあるよなって思いました。後はマッサージで太ももとかお尻とか腰とかを緩めて柔らかくしておくと声が出しやすいとか。これは体感した人にしかわからない感覚だと思うんですけど、体って全体が繋がっているという事が、研究すればするほどわかってきました。
――長年アーティストをやっているからこそ気づくものなのでしょうか。
三浦大知 : アーティストというよりは、なんで今自分はこうなんだろうって考えるからじゃないですかね。ライブとかパフォーマンスに対して、この前はこんなに疲れてなかったのに、なんで今はこんなに疲れてるんだろうとか。なんでここは結構余裕で出来たんだろうとか、いつもブレスしていた所で、ブレスしてないから違うんだとか、一個一個あるんです。それに気づいて、じゃあこういう風にやったらいいんだなとか、自分を理解するというか分析するようになりました。トップダンサーの人達やアーティストの方はみんなやっていると思いますね。
――歌とダンスの両立というと『Cry&Fight』が最難関だったと言っていましたが、アカペラでダンサーが踊る演出は、ダンサーにとって音をとれないですし難しいと思います。どうやって合わせているんだろうって思うのですが、どうやっているのですか?
三浦大知 : あれは大変だと思います。ダンサーは頭の中で『Cry&Fight』を流しているんだと思いますよ。なので、練習と今までの積み重ねですね。一夜漬けでできるようなことではなくて、三浦大知の曲に対する理解が深いんだと思います。こういう風に揃えていたという感覚から音をそぎ落としたというか、頭の中で音楽が流れているという感じですね。
――代々木第一体育館のリハーサルもバシって決まった感じなのですか?
三浦大知 : 代々木第一体育館の時は今までにもやったことがあったので、そこに女子ダンサーも入ってもらってという感じだったんですけど、三浦大知が軸になるので、僕の空気感を感じながらやってもらいました。今まで三浦大知チームとしてやってきたからこそできるパフォーマンスですね。
出典:YouTube
『Darkest Before Dawn』に隠されたメッセージが深い
――ここからアルバム『HIT』の話しをさせて頂きます。公式のインタビューで「2017年は歌の印象をダンスと同じくらいにしたい」と言っていたのが印象的で、アルバムのリード曲『Darkest Before Dawn』を聴いたときに、その一歩を感じたのですが、何か歌の面で見せていく事でイメージしていることはありますか?
三浦大知 : 改まって特殊な事をやろうとは思ってないです。今までやってきた事の積み重ねだと思ってます。やっぱりダンスが入口になって、三浦大知を知ってもらう事が多かったんですけど、実は歌も歌っていますよっていう事も伝わっていけばといいと思ってます。ダンスもただ激しければいいというものではないので、歌とダンスのバランスを考えて見せていきたいです。
出典:YouTube
――『Darkest Before Dawn』は悩んだり、嫌なことがあって落ち込んでいる人の背中を押してくれる曲だと思ったのですけど、MVを見たときに歌とダンスが率直に伝わってくる感じがしました。印象的なシーンも多くて、後半は険しい岩場で踊っていたと思うのですけど、撮影は大変でしたか?
三浦大知 : すごく足場がギリギリな岩場で踊ったんですけど、撮影しなきゃいけないんで、怖いとか思わなかったですね。すごく壮大なロケーションで撮影したんですけど、あそこは海外とかでなく日本の和歌山県にある場所で撮影しました。
――MVで踊っている振付は感情が伝わってくる踊りで、グッとくるものがあったのですが、あれは決められた振付ではないですよね?
三浦大知 : あれは全部フリースタイルです。即興ですね!
――フリースタイルはどういうことを意識して踊りましたか?
三浦大知 : 『Darkest Before Dawn』に関しては希望です。この曲は「夜明け前が一番暗い」という曲なんですけど、暗闇みたいにネガティブに語られがちなものがポジティブなものに繋がっている。夜明けの前兆だという部分を描いている歌なので、希望を表現できたらいいなという事と、後は単純に暗闇の中や足元が悪い中でも踊り続けてきた、やり続けるんだということを表現したかったので、文字通り足場の悪い所で撮影をしました!
三浦大知が音楽で伝えたいこととは?
――あの踊りと岩場のシーンはそういうメッセージがあったんですね! アルバムの最初が『Darkest Before Dawn』で最後の曲が『Hang In There』になっているのですが、どちらも背中を押してくれる楽曲だと思います。最初と最後に背中を押してくれる曲にしたのは、何かメッセージがあるのですか?
三浦大知 : 2曲ともNao'ymtさんと一緒に作らせてもらったんですけど、Nao'ymtさんの曲はどのアルバムも最初と最後にしか入れてないんですよ。世界観が確立されているので、前後にあんまり左右されないですし、混ぜたくないというのもあるので、いつもアルバムの前後に置いています。楽曲も励ましたいというよりかは、日々生きてる中でみんな大変な事もあるし、報われない事もあると思うんです。でも、そういうことがあるからこそ幸せがあるんだと思いますし、表裏一体みたいなところがあると思っていて、そのことを常に音楽で言えればと思っているんです。それを歌うことで、曲を聴いた人にとって音楽が救いになったり、一人じゃないんだって思ってほしい。孤独を共有できるから、孤独じゃないみたいな所もあると思うので、『Darkest Before Dawn』についてもそうですし、『Hang In There』も踏み留まるんだとか、堪えるんだということが伝えられたらいいなと思っています。これは僕の理想なんですけど、三浦大知の音楽が人生における救いだったり、キッカケだったり、そういうものになってくれればいいなって思っています。なので『HIT』は『Hang In There』の頭文字からとってるという部分もあります。
――『Rise UP feat. SOIL&”PIMP”SESSIONS』でSOIL&”PIMP”SESSIONSとコラボして、アルバムの中でもパーティー感があって印象に残る楽曲になっていると思うのですが、SOIL&”PIMP”SESSIONSとコラボしたキッカケを教えてください
三浦大知 : 元々、全部生音で三浦大知が踊るっていう曲を作りたいという考えがありました。福原美穂ちゃんとSOIL&”PIMP”SESSIONSさんが一緒にやっている曲があって、それがすごく好きでいつも聞いてたんです。土着感があって、土埃っぽい感じのファンキーな感じが良かったので、これで踊りたいなと思ってました。加えて全部生音でやりたいってなった時に、お願いするならSOIL&”PIMP”SESSIONSさんしかいないなと思ってオファーをしたんですけど、快くOKしてくれました。
――ライブで聞くのが楽しみです。まだまだアルバムについて聞きたいのですが、タイトルで一番目を奪われた曲が『誰もがダンサー』でした。曲を聴く前は明るいパーティー系の曲を想像していたのですが、実際はダンサーや夢を追っている人の辛さや大変さを書きつつ、応援している曲に聴こえました。ダンサーという言葉を使った意味やどういう思いが込められている曲なのですか?
三浦大知 : 三浦大知がダンスで注目を頂いている中で、三浦大知が人生の事をダンサーに例えて歌詞を書くのもおもしろいかなって思いました。多分みんな日々頑張ったり、辛かったり、いいことがあったり、踊ってる時もあれば、踊らされてる時もあると思うんですよ。そう考えるとみんながダンサーに見えてきて、そういうことを三浦大知が歌ってみたらおもしろいと思ったので、ダンサーに例えて歌詞を書きました。
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