圧倒的ノスタルジーを放つ、osage
まだまだ若輩者であると思っていたら、第三者から「もうあなたは若くありません」と恐ろしい事実を告げられることがあります。osageのライブパフォーマンスはまさにそれ。メンバーがそれぞれシュッとしているのも理由として大きいですが、やはり彼らもオーラを持っておりました。初恋モーテルがカルピスならば、こちらはサイダー。切なくなるぐらいの青空と、郷愁を煽る夕焼けが似合うようなバンドです。そして甘くて辛い、青春の暴力をふるってくる。
ひたすら刹那的なのでした。彼らには「今」しかないのです。大人には大人の青春がありますけども、大人と「あの頃」が決定的に違うのは打算や思惑が極端に少なかったこと。そういう向こう見ずな推進力を、彼らは持っています。
レーベルメイト(murffin discsに所属)にはSUPER BEAVERやsumikaがおりますが、音楽的な系譜としては彼らと同じ線の上にいると思います。これまで邦ロックの先人たちによって脈々と継承されてきた、ギターロック的文法。そこを主軸に、osageは誰にも真似できないノスタルジーをまぶしていく。この日のeggmanには女子高生とおぼしき女の子が何人か来ていたのですけれども、漏れなくosageのファンのように見受けられました。現在進行形で「あの頃」を体現する彼女たちには、心から共振するものがあるのだと思います。もちろん我々大人にも響くものはありますが、ティーンエイジャーが感じるそれとは別種だと感じました。
ライブで聴く「エンドロール」や「ウーロンハイと春に」は、まるで今日この日しか聴けないような切なさがあります。多少歳を重ねて大人になりかけている身には、めいっぱいの愛しさと小さじ1杯分の怖さが残りました。
本日の大トリ、ヨイズが登場
フロントマンの佐藤リョウスケによるソロプロジェクト「YOI’S」を経て、今年の頭に結成されたバンド、ヨイズ。結成されてから最も日が浅い彼らでしたが、その経験値は随一。テクニックやルックスとは別次元の、バンドとしての圧力がありました。「アンドロイド」は涙腺に来ますね。レイラとは違うベクトルで音の抜き差しが巧みです。ヨイズの場合は、よりエモやパンクからアイデアを引っ張ってきている印象を受けます。ちなみに佐藤さんは以前、赤色のグリッターというバンドを組んでおりました。
少し個人的な話をさせてください。実は筆者はラジオ番組のスタッフだった過去があり、赤色のグリッターともご一緒したことがあるのです。出入りしていたのは、今はもう放送を終了している「wktkラヂオ学園」という番組だったのですが、その音楽コーナーに出演して下さいました。佐藤さんでなく他のメンバーが出演されていたのですが、当時のことは今もよく覚えてます。その時は、「愛の舌打ち」をオンエアしました。2014年のことですから、もう5年前の話です。恐らく、メンバーはまだ10代だったのではないでしょうか。それから紆余曲折経て、佐藤さんはヨイズを結成して音楽を続けている。赤色のグリッターを初めて聴いたときはそりゃあ大きな衝撃を受けましたけれども、様々なものを背負ってステージに立っている今はまた別の魅力があります。
「辛い現実から忘れたいときって誰しもあると思うんだけど、みんなにとってライブハウスはそういうものから逃避できる所であって欲しい。そんな場所を求めてここに来てくれる人のために、僕らも良い曲を作れるように頑張ります」。「ともしび」を演奏する前の佐藤さんのMCです。5年なんて本当にあっという間の歳月ですが、その間に色々あるもんです。バンドの解散と結成を両方経験する人もいる。それらを受け入れて、それでもステージに立ち続けるアーティストの言葉は響きますよ。「押しすぎても引きすぎても ちょうどいいところは 見つからないからやになっちゃうぜ すれ違っても見失っても 会えない日々が続いても 何にも僕は変わらないから (ともしび)」。
音楽を続けていると、いつかまたどこかで会えるもんですね。大トリにふさわしい、最高のライブでした。
Photography_Reiji Yamasaki
Text_Yuki Kawasaki
ローチケpresents「LIVE BEATER!! 2nd match」
2019年9月4日(水)@shibuya eggman
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