5. アナログフィッシュの異世界的アーバン
アナログフィッシュの音楽はいつも違った「シティ」を見せてくれる。特に2014年にリリースされた『最近の僕ら』は実に映画的で、様々な街の風景が音として映し出されていました。例えば、『Nightfever』は深夜~明け方のハイウェイ、『There She Goes (La La La )』は煌びやかな夜のスクランブル交差点といった具合に。
そんなアナログフィッシュですが、前作『Almost A Rainbow』ではシティの風景を少々歪な形に変形させていたように思います。そして、今年11月に7インチシングル盤としてリリースされた『WITH YOU (GET IT ON)』。
何というか、異界に通じてしまったような印象を受けます。シティであってシティでないような。『Almost A Rainbow』の実験精神の延長線上にあるとは思うのですが、本人たちは「実験的」とすら思っていないような気がします。掴みどころのないアーバン・ソウル。
サンダーキャットとも地続きであると思います。
6. 今こそArμ-2+lee (asano+ryuhei)の音楽を聴いてくれ!
そろそろ日本でもサンプリングという方法論が市民権を得始めている頃合いでしょうか。パクリと引用の境界線は極めて曖昧ですけれども、要はアイデアとセンスの有無だと思われます(もちろん権利関係をクリアしたうえで)。DJシャドウやアヴァランチーズなどはこの方法論でもって喝采を浴びていますね。
そういう類い稀なアイデアとセンスを日本のアンダーグラウンドで見せているのがこの二人、Arμ-2+lee (asano+ryuhei)です。
Arμ-2+lee (asano+ryuhei) – 『p.001 from TANHÂ』
この曲が収録されている『TANHÂ』が出たのは2014年3月。東京ビート・シーンの若き奇才Arμ-2と、ビートメイクに限らずペインティングなどでも活動するlee (asano+ryuhei) のコラボアルバムは、海を超えてアメリカの音楽メディア<Pitchfork>でも激賞されました。
そして今年の12月20日、ついにこの二人による新作『2PAC』がリリースされます。もうね、心から売れて欲しい。
7. L.A.ビートシーンも注目!東京在住トラックメイカーEccy
フライング・ロータスを輩出したLAの最重要パーティー<Low End Theory>のPodcastでも楽曲がプレイされるなど、海外からも熱い視線を向けられるEccy(エッシー)。キラキラしたダンスチューン~内省的なビート・ミュージックまで、レンジの広いサウンドを鳴らします。今年初めにリリースされた『Narrative Sound Approach』は、どちらかと言えば後者の内容でした。
Eccy – Lonely Planet feat.あるぱちかぶと
流麗なピアノと、下腹部を刺激するビート。そして”あるぱちかぶと“のリリックセンス。”Lonely Planet”とは言い得て妙で、この壮大な美しさと切ない描写は、まるで「わびさび」を詞で体現しているかのようです。
歌モノとインストが交互に繰り出される本作、『Narrative Sound Approach』。サウンドも素晴らしいですが、このアルバムの本質は「言葉」にあると思います。
8. 東京発の黒きグルーヴ、Scarf & the SuspenderS
タワーレコード渋谷の6階フロア入ってすぐのところに、大きく展開されているバンドがありました。無国籍なジャケットが目を引く『Invitation』。ポップを読む限りでは、何やらデビューEPらしいことが分かります。そして備え付けのヘッドホンを付けた瞬間、持っていかれました。洒脱さとエネルギッシュなグルーヴを併せ持つサウンド。夜の東京に忽然と現れたのがこのバンド、Scarf & the SuspenderSであります。
Scarf & the SuspenderS – K.I.K.E
オールドスクールなヒップホップを連想させつつ、圧倒的に洗練されています。『K.I.K.E』はア・トライブ・コールド・クエストへの熱烈なラブコールに聞こえますね。Scarf & the SuspenderSのようなバンドがビル・エヴァンスやマイルス・デイヴィスと同じフロアに居ることが、今の時代のジャズを象徴しているようです。
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