【T】タイタニック(祖父がタイタニック号に乗っていたというエピソード)
1912年4月15日、当時、世界でもっとも豪華な客船として知られていたタイタニック号が沈没しました。驚異的なヒットを記録した映画「タイタニック」(1997年)のもとになった歴史的な出来事ですが、タイタニック号にたった1人、日本人の男性が乗っていたことをご存知でしょうか? じつはその人こそが、細野晴臣さんの祖父・細野正文さんなのです。東京高等商業学校(一橋大の前身)を出て逓信省の鉄道作業局に勤務していたエリート官僚だった正文さん。鉄道研究のためにロシアに留学、イギリス経由で帰国する際、サウサンプトンに寄港するタイタニック号を知人から勧められて乗船、事故に遭ってしまったというわけです。
九死に一生を得て、日本に帰国した正文さんは、「女性、子供を押しのけて助かった」と言われない誹謗中傷を受けることになりますが、小学生の頃、その話を聞いた晴臣少年は「映画や物語世界の話のような感覚でとらえているところがありました」といいます。
【U】UFO
2007年のアルバム「FLYING SAUCER 1947」(HARRY HOSONO & THE WORLD SHYNESS)は徳武弘文、高田漣、伊賀航、コシミハル、浜口茂外也によるワールド・シャイネスとともに制作した“歌モノ”アルバム。アメリカの古きよきルーツ・ミュージックを“再発見”するという細野さんのモードは、このアルバムから始まったと言えるでしょう。当時60歳だった細野さんは、「還暦記念じゃなくて、円盤飛来60周年ということでやろう」と思い、「ロズウェル事件」(アメリカ・ニューメキシコ州で墜落したUFOがアメリカ軍によって回収されたとして有名になった事件)の1947年に生まれたことにちなんでアルバムのタイトルを決めたそうです。
UFO、密教、神社信仰など、ちょっと不思議なモノにも興味を示してきた細野さん。YMO以前、いわゆる“トロピカル3部作”の頃には「音楽を辞めて出家しようかと思っていた」という発言もあるくらいですから、その傾倒ぶりはかなりのもの。それは単なるオカルト趣味ではなく、以前から「よくわからない、分析できない音に惹かれる」というコメント通り、やはり“未知なもの”への興味の表れなのだと思います。
【V】Voice
心地よい中低域を響かせ、豊かな歌心を感じさせてくれるボーカル。はっぴいえんど時代から(「風をあつめて」「夏なんです」「相合傘」など)シンガーとしての魅力を発揮してきた細野さんですが、当時はそこまで歌うことが好きではなかったそう。筆者も細野さんが「40年前はわりとキツかったし、イヤイヤながら歌ってたところもがあったので。とにかく人前に出るのが得意じゃなくて、スタジオでレコーディングするのが好きだったんですよね」と話すのを聞いたことがありますが、00年代後半あたりから歌に対する興味が増して、いまでは「体力は衰えましたけど、声だけは出るし、歌うのも楽しい」と言うまでになりました。
その特徴的な声は、音楽以外のフィールドでも求められていて、数多くのテレビ番組、CMなどでナレーターとしても活躍。最近では、映画「シェイプ・オブ・ウォーター」(2018年)のCM、資生堂「イハダ(IHADA)」のCMなどでナレーションを担当しています。
SHARE
Written by