もっと知りたい細野晴臣(前編)
2019年、音楽活動50周年を迎えた細野晴臣さん。「50年」音楽活動を続けているってよくよく考えなくてもものすごい事なんだけど、さらに細野晴臣さんがシーンに与えた影響は計り知れず。はっぴいえんど、YMO、ロック、テクノ、エレクトロニカ、映画、プロデュース、シンガーソングライター…「細野晴臣とは?」を考えた時、ちょっとやそっとじゃ説明できません。引き出しが多いとか懐が深いとか、そんな生易しいもんじゃない。もはや「細野晴臣という宇宙でありひとつの文化」だよね…。 そんな思いを元に考えた企画が『細野晴臣のABC』。細野晴臣という宇宙をAから順に読み解いていくことで、「細野晴臣辞典」を作ってしまおうという試みです。執筆者としてお迎えしたのは音楽ライターの森朋之さん。ここ数年にわたり、継続的に細野さんにインタビューしている方です。森さんの視点で紡がれる細野晴臣入門、保存版です。
Text:TOMOYUKI MORI
Edit:ADO ISHINO(E inc.)
【A】安部勇麿
“はっぴいえんど”で日本語のロックの礎を築き、YELLOW MAGIC ORCHESTRAでテクノというジャンルを世に知らしめ、ソロアーティストとしてアメリカのルーツミュージック〜“南国の楽園”を想起させるエキゾチカ〜テクノロジーを駆使したエレクトロニカなどを辿りながら、半世紀に渡って(!)豊かな音楽を生み出し続けている細野晴臣さん。“存在自体が巨大な図書館のよう”と称される細野さんは、様々なジャンルのアーティストに影響を与えて続けていますが、なかでも溢れんばかりの“ホソノ愛”を表明しているのが、never young beachの安部勇磨さん(V/G)です。細野さんの最新作「HOCHONO HOUSE」(ソロデビュー作「HOSONO HOUSE」のリメイク作品)のリリース時にラジオ番組「Daisy Holiday!」にゲスト出演した際も、「感動というか感謝しかなくて。まだこんなすごいものを聴かせてくれるか!と」「『僕は一寸・夏編』」の〈嵐の中を歩くのが好き/坂を登れば/きっと景色が変わる〉という歌詞を聴いて泣いたんですよ!」とエモーショナルに激白。細野さんは「へえ」「そうなんだ」と後輩ミュージシャンの思いを受け止めていたのでした。
◾︎参照記事◾︎
細野晴臣と安部勇磨が語り合った『HOCHONO HOUSE』の魅力「宝物を開けた感覚でした」
【B】ベース
細野さんのキャリアのはじまりはセッション・ミュージシャン。作曲家、ボーカリストの前に、ベーシストとして音楽家の道を歩み始めました。立教大学の学生だったときに初めてベースを弾いたという細野さんは、いくつかのバンドの参加した後、シンガーソングライターの小坂忠さんらと“エイプリル・フール”を結成。その後、はっぴいえんど、YMOでも質の高い演奏を披露しているほか、プロデュース・チーム“キャラメル・ママ”のメンバーとして、吉田美奈子「扉の冬」(‘73年)、荒井由実「ひこうき雲」(’73年)などに参加。さらに矢野顕子「JAPANESE GIRL」、山下達郎「SPACY」などでも、魅力的なプレイを聴かせています(名盤に細野さんのベースあり!)。サスティン(音の振動、伸び)が短く、丸みがあるのにタイトなベースはまさに細野節、真似しようと思っても絶対できません。細野さん自身は「チャック・レイニー(60年代後半から活躍するアメリカのベーシスト)のソフトな音色とミュート感、倍音、ハーモニーなどに影響を受けました」と語っていますが、ベース奏者としても完全に唯一無二の存在だと断言できます。
◾︎参照記事◾︎
Vol7.細野晴臣さん『チャック・レイニーのソフトな音色とミュート感、倍音、ハーモニーはどれをとっても他のベーシストとは違っていて、とても影響されました。』
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