フジロック2017をあとにして…
絶賛フジロスであります。みなさんは、この虚無感をどう埋めていますか?僕は隙あらば、Twitterの検索欄に「#フジロック(または#fujirock)」と打ち込んで現実から逃避しています。例年より飛び抜けて先鋭的だったラインナップも含め、夢のような3日間でした。
さて、本稿では音楽フェスティバル終演後の楽しみのひとつ、「ベストアクト」を独断と偏見で選んでみます。音楽もイベントの楽しみ方も細分化した今、むしろその何万通りのうちのひとつにリアリティを感じませんか?タイムテーブルの被りもあって見逃したアーティストも多いのだけれど、「コイツはこんなフジロックを過ごしたのか」と思っていただければ幸いです(Lordeを見逃したのは本当もう痛恨の極み)。
何より、フジロックにも僕みたいな「若者」の姿はあったということをお伝えしておきます。
エイフェックス・ツインが好きで好きでたまらなく、その憧れがUKにまで波及し、19歳の頃にイギリス移住を真剣に検討したギーク野郎が振り返る「フジロック・ベストアクト」。
ロック復活の狼煙となるか。帰ってきたJet
フジロックがなかったら、Jetが再結成していたことすら知らなかったかもしれません。『ゲット・ボーン』を擦り切れるほど聴いておきながら、彼らが2012年に解散を発表してからはそれきりでした。
フジロック出演のアナウンスがあった後、小さじ一杯程度の不安があったのは僕だけではないと思います。『Are You Gonna Be My Girl』がテレビ(iPodのCM)から流れてきた当時の、あの頭蓋を叩き割られたような衝撃が、今もまだ残っているのです。「思い出はキレイなままで!」と、フジロック前の僕はそう思っていました。
Jet – 『Are You Gonna Be My Girl』
ところがどうでしょう。全く衰えを感じさせないニックのヴォーカルに、相変わらずソリッドなバンドサウンド。ルックスに若干の玉手箱感はあったものの(主にニックに)、彼らのロックは死んでいませんでした。ジャンルとしての「ロック」にかつてほどの元気がない今、復活の狼煙を上げるのは彼らかもしれません。
静かなる「轟音」。アンチノミーな世界観を確立したSlowdive
シューゲイザーの先駆者であるスロウダイヴが、今年の5月に22年ぶりのフルアルバム『Slowdive』をリリースしました。「シューゲイザー」というジャンルがトレンドの一つであった90年代当時、マイ・ブラッディ・バレンタインやライドらと共に一時代を築き上げたのが、彼らスロウダイヴです。
他のレジェンドと比べても、僕は圧倒的に彼らの音楽が好きでした。シューゲイザーと言えば、フィードバック・ノイズやエフェクトを多用したバンドサウンドですが、スロウダイヴはそこへ切なさやノスタルジーを乗せたのです。先の『Slowdive』はその集大成。感涙もの。
Slowdive – 『Sugar For The Pill』
この日のセットリストは、さながらスロウダイヴのベストアルバムのような内容でした。『When The Sun Hits』や『Golden Hair』など、過去に発表された名曲も立て続けに演奏されたのです。
それを踏まえても言いたい。最新作の『Slowdive』、とにかく傑作です。本当に。新譜なのにずっと昔から知っていたような感覚を覚えました。
それはまるで祈り。ホワイトステージに響いたÁsgeirの声
アウスゲイルの最新アルバム、『Afterglow』の過小評価ぶりがすごい。前作よりも聴きやすくなると評価を下げなきゃいけない決まりでもあるのか?と疑問におもうほど。
2008年にアイスランドが経済危機に陥ったとき、音楽の売り上げはそれほど落ちなかったのだそう。かの国で生活する人々にとって、音楽はもはや生活に不可欠なものなのでしょう。そして暗いトンネルの先で待っていたのが、この男アウスゲイルでした。
Ásgeir – 『Stardust』
高潔すら感じるファルセットは、まるで「祈り」のようにも思われました。『I Know You Know』なんて、まさに希望そのもの。「音楽に救われる」など、今ではチープな言い回しかもしれませんが、彼の音楽を聴くとそんな可能性を信じてみたくなるのです。
『Torrent』の演奏時、泣きながらステージを見つめている人がいました。横顔が綺麗な人でした。
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