心根まで疲れ切った朝、Black BoboiのロンTを干すために起床。
踊り狂った。踊り狂ってしまった。2日目のレッドマーキーの夜は、素晴らしいひとときでありました。
ダンスミュージックの素晴らしさは、文字通り刹那的であるところです。フロアの人間はその瞬間に生きる。日常の瑣末から離れ、音楽に没頭します。しかし弱点も同じなんですね。残念ながら後先のことを全く考えていないので、次の日に自分の状態がえらくグロッキーであることに気付くのです。睡魔と二日酔いに苛まれながら、湿った服の感触で目が覚めました。そしてある事を悟ります。「やべぇ、着る服がねぇ」。豪雨のため、初日に買ったBlack BoboiのロンTに頼り切りでありました。つまりストックしてあった服のほとんどがびしょ濡れだったわけです。彼女たちが出演する最終日の今日着るつもりだったのに、なぜか朝からそれを干しております。
フレッシュな気持ちで楽しむために、Black BoboiのロンTをもう1着買いに行きました。他方は黒パターンでして、こちらもカッコイイのです。雨とオタクはフジロックの経済を回しますね。ついでにサンダルまで買ってしまいました。
さて、予期せぬ出費のため気も大きくなったところで、最終日はグリーンステージのnever young beachからです。
2日目に鍛えられた我々は、ぬかるんだ地面など全く気になりません。全くです。すいすいグリーンまで進んでゆきます。確かに疲れはたまっておりましたが、それよりも苗場のコンディションが良くなっていることのほうが嬉しかったのです。そのタイミングでネバヤンですから、彼らはつくづくフジロックで魅せてくれるバンドだと思います。
彼らのフジロックヒストリーは2015年の苗場食堂で端を発しました。新人バンドの多くは「ROOKIE A GO GO」を登竜門に他のステージへ羽ばたいてゆきますが、彼らの場合は初っ端から場内に舞台を割り当てられていました。そしてそのわずか2年後の2017年、メジャーデビューを果たし、フジロックに凱旋します。しかも今度はメインステージのひとつであるレッドマーキー。赤いテントの外側にまで人が溢れる、超満員でした。「これはもう次はホワイトかグリーンだな」と思っていた矢先、彼らは本当に2019年のグリーンに君臨したわけです。
「4年前の苗場食堂来てた人っているー?」とフロントマンの安部勇磨がオーディエンスに聞きます。グリーンは広くオープンエアなステージですから、マイクに乗った声が全然跳ね返ってこないんですね。お客さんとのやり取りやバンドの空気感は変わらずインディーなのですが、この時に彼らの今のスケールの大きさを実感しました。
その問いに対して、客席のあちこちから手が上がります。「エモいー!エモいね!」と安部。4年のうちに苗場でストーリーを重ねてきた彼らですが、そんな彼らを見守ってきた人たちも変わらずこの広大なグリーンステージにいる。フジロックだなぁと思いました。歴史がドラマチックに可視化されてゆく。そこでは「明るい未来」が、エバーグリーンに鳴り響いていました。そして今の彼らにとってはここもきっと、通過点。
SHARE
Written by