ダンスとラップが生み出すエンターテイメントに注目してほしい!
ダンスとラップ。それぞれ日本で何度かブームを呼んできたカルチャーですが、同じタイミングでダンスとラップが注目されるということはなかったように思います。筆者はTOKYO TRIBEというダンスとラップが組み合わさった舞台を観に行く機会がありまして、その世界観を堪能させてもらったのですが、ダンスとラップの生み出すシナジーに感動と可能性を感じました。
そこで、ダンスとラップの生み出すシナジーに注目して、ラップ&ダンスのコンテンツやアーティストを紹介します。
日本のダンスとラップのブームがついに重なる
まず、ダンスとラップの現状として共通しているのは、アンダーグランドなものからメジャーなものに進化していったことです。その大きな要因は10代を筆頭とした若年層への広まりと企業の参入が挙げられます。
ダンスシーンは2008年に”ダンス必修化”をキッカケに、一般層に浸透し始めました。そのバックヤードには、キッズダンスシーンの盛り上がり、先人ダンサー達のシーン開拓と教育、人気若手ダンスチームの台頭、アーティストのダンサーフックアップなどあるのですが、かなりの情報量になるのでここでは詳細を省略させて頂きます。
こういった流れを組んで、現状のダンスシーンが出来上がったのですが、現在は企業がCMでダンスを取り入れたり、キャンペーンの一環でダンス動画を使用したりなど、だいぶ世間に馴染んでいきました。
出典:YouTube
一方、ラップは各年代の音楽シーンでヒットチャートを飛ばす偉大なヒップホップアーティストにより、何度もブームが作られます。近年では、人気番組「フリースタイルダンジョン」の影響と多種多様なスタイルのラッパーが現れたことにより、ラップブームが起こりました。
ラップも同じく、企業のCMで使われたり、学生の間では休み時間にラップのフリースタイルで遊ぶ高校生もいるなどとメディアで報道されたり、その熱は未だ下がることなく現在進行形でラップは世間に馴染みあるものになって行きました。
出典:YouTube
元はストリートカルチャーのひとつとして根付いてたダンスとラップが、満を辞して注目時期が重なった現在。ダンスとラップが生み出すコンテンツはさらなる進化を続けています。
ダンスとラップが最強のシナジーを生んだ伝説の舞台 「TOKYO TRIBE」
舞台「TOKYO TRIBE」は、井上三太による大人気コミックを原作とした革新的な舞台で、ヒップホップカルチャーをベースとした日本のラップシーンに燦然と輝く名曲の数々が全編に散りばめられた舞台です。演出を梅棒の伊藤今人(ダンサー)、音楽監督をKEN THE 390が担当。ダンサー、ラッパー、俳優、歌手と各分野から第一線で活躍する豪華出演者も話題になりました。
舞台「TOKYO TRIBE」出演者一覧はこちらから
この舞台の何が良かったのかというと、ダンスとラップミュージックが舞台の世界観をわかりやすく作っていたことの一言につきます。
舞台の音楽はKEN THE 390の選曲でジャパニーズラップソングでストーリーに色をつけていくのですが、ダンスパートにも命を与えてくれました。
例えば、劇中にハラヂュクJINGUSというトライブ(つるむ仲間的なもの)がブレイクダンスを踊るのですが、同じブレイキンのムーブでも、キャッチーで日々の平穏さを綴ったリリックのラップミュージックが流れれば仲間と和気藹々サークル(輪になって一人ずつ真ん中で踊ること)を組んでる世界観、メジャー調の曲で高速フロウが流れればクリーンなダンスバトルの世界観、エッジの効いた重たい曲に攻撃的なリリックとフロウのラップミュージックが流れるとストリートで己の存在をかけるような危険なバトルの世界観という風に、誰が見てもシーンの状況がわかるようにしてくれました。
現状、ヒップホップやブレイクといったダンスは邦楽よりも洋楽の方が相性がいいです。ただ、リスナーは日本人なので、伝わりやすくするにはやはり日本語の曲がベストなのも事実。J-POPはダンスシーンにおいてジャズやジャズヒップホップを踊るダンサー向けのものでしたが、日本語ラップに関してはヒップホップやブレイクと相性がいいです。さらに日本語リリックがダンスに言葉をつけてくれるので、一気にリスナーに浸透しやすいダンスを生み出してくれます。
ダンスとラップで舞台を作る。日本のヒップホップシーンにはいくつか伝説と呼ばれる作品や音楽がありますが、この舞台はそのひとつの仲間入りと呼んでいいですし、ダンスとラップのシナジーの高さと可能性を示唆していたと思います。
注目したいラップ&ダンスのアーティスト
次にラップとダンスのシナジーが強いアーティストを紹介しましょう。ここではラップ&ボーカルダンスグループではなく、ラッパーとダンサーのみで構成されているアーティストをフィーチャーします。
CRAYZYBOY
出典:YouTube
知らない方のために少しだけ説明すると、CRAYZYBOYは三代目 J Soul BrothersのELLYです。ラッパーとして活動するときは”CRAYZYBOY”名義になります。社会現象にもなった『R.Y.U.S.E.I.』にランニングマンを取り入れた振付を考えたパフォーマーといえばわかりやすいでしょうか。
CRAYZYBOYはニュータイプのラッパーです。LDHアーティスト特有のトレーニング量とダンサーとしての音楽センスをラップに反映させた音楽は、立体的で世界観が色濃くあらわれます。
上記の『NEOTOKYO』は、リリックを見ると上京してきたダンサーが東京のクラブシーンに足を踏み込み、期待と不安を抱えながらも、自分はここでやっていくといった内容になっていますが、まさにダンサーであるELLY(CRAYZYBOY)ならではの作品です。
映像ではラップをしながら踊っていますが、ニュースクール系のヒップホップダンスの中でも、黒くてドープなダンスでラップと同調させているのもパフォーマー出身である彼にしかできない見せ方のひとつ。素人目に見てもこのダンスはこういうニュアンスで使われるダンスなんだというのが伝わりやすいのではないでしょうか。
ヒップホップの5大要素は「ラップ(MC)」「DJ」「ブレイクダンス」「グラフィティ」「知識」(諸説あり)と言われています。ELLY(CRAYZYBOY)はブレイカー(ブレイクダンスを踊るダンサー)ではないですが、やはりダンサーとしてヒップホップカルチャーは大切にしていると思いますので、彼がラップに触れることになったのは、必然だったと思います。
ダンスとラップのシナジー感を打ち出すアーティストとして今後もCRAYZYBOYの音楽に注目して欲しいです。
BeatBuddyBoi
出典:YouTube
BeatBuddyBoiは6人組のラップ&ダンスグループです(2017年8月にakihic☆彡とYASSが卒業)。
BeatBuddyBoiは元々ダンスチームとして活動していて、人気実力ともにダンスシーンのトップクラスにいました。ダンスチーム時代にはあの伝説のラッパー・Busta Rhymes(バスタ・ライムス)とコラボしたこともあり、ラッパーとダンサーが起こすシナジー感にいち早く取り組んでいたグループだと思います。
メジャーデビューを機に、ソロで活動していたラッパー・ SHUNがメンバー入りして、ラップ&ダンスグループに形を変えましたが、それぞれ実力者同士の出会いなので、パフォーマンス力の高さは最初から群を抜いていました。
シングル曲は一般層向けを意識した部分もあり、キャッチーなものが多いですが、BeatBuddyBoiはライブで実力の全てがわかります。
ラップやボイスパーカッションとダンスを組み合わせたパフォーマンスやグループで見せるライブは厚みが違いますし、メンバー全員が音楽とダンスのセンスを持ち合わせているので、本格派からコメディまでなんでもできてしまうのも魅力のひとつです。
ダンスとラップを追求し、様々な可能性を打ち出すという点では、日本で一番おもしろいグループだと思います。
SKY-HI
出典:YouTube
最後はラッパーとダンサーのいい関係ということで、ミーティアでも紹介してきたSKY-HIに触れます。
SKY-HIの魅力についてはこちらを参照ください。
SKY-HIは日本のラッパーの中で一番オシャレで器用だと思います。そして、ラップとダンスのシナジーをダンサーが納得する形でリスナーも満足できるパフォーマンスを作れるアーティストです。
AAA初期の頃からクラブでラップバトルをしてきたのもあり、アンダーグランドにもリスペクトがありますし、メジャーで活躍しているダンスボーカルグループに在籍しているので、メジャーシーンの音楽を肌で体感していることも武器になっていると思います。
上記の『Marble』のMVでは、多種多様な人々が混ざり合った世界で生まれる様々なドラマや、その世界に生きることの喜びや苦しみをリリックに込めたメッセージをラップだけでなく体でも表現。この時点で彼の生み出すリリックは、体に命を与えて動きを生み出す力を持っていることがわかります。
出典:YouTube
上記はSUPER FLYERS(SKY-HIとともに音楽パフォーマンスを作るクルー)のダンサーであるKensuke、Money、TAK-YARD、JUNによるダンス寸劇です。ラップに乗せて演劇&ダンスで見せるパフォーマンスなのですが、まずもってこのパフォーマンス自体がライブのワンコーナーとは思えないくらいオシャレでクオリティが高いことに驚きます。ダンサーへのフックアップが強いアーティストが、ダンサーのソロシーンを用意してくれることは近年増えましたが、ここまで一緒にパフォーマンスを作ってくれるアーティストはSKY-HIくらいじゃないでしょうか。
自分の作品作りの中にダンサーの顔が浮かんでくる。そういうクルーだからこそ、SKY-HIの生み出すダンスとラップのシナジー感はクオリティが高く、リスナーを感動させることができるのだと思います。
現在、SKY-HIはSUPER FLYERSとともに初海外公演を含む24箇所25公演のライブハウスツアー<SKY-HI Round A Ground 2017>を敢行中ですが、アメリカ公演でも、このダンス寸劇”センテンス”はオーディエンスから大好評だったようです。
ダンスとラップのシナジーは様々なパフォーマンスを生み出す可能性に満ちたものだと思います。
今回紹介した舞台やアーティストの他にも、おもしろいダンス&ラップのコンテンツは日々生まれていますし、この流れが今後も根強く広まり支持を集めていくのではないでしょうか。
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