メジャーとインディーズにこだわらず活動するアーティストが増えている影響か、「アンダーグラウンド」という言葉が昔ほど具体性を持たなくなったような気がします。けれども、何となく雰囲気として残る「アングラ」。もはや定義にこだわれるほど輪郭がはっきりしていないかもしれませんが、今回はマスを意識してアングラなアーティストをピックアップしてみました。
「全員知ってたぜ!」という人は、恐らくアングラの住人です。タワレコと渋谷のクラブとインターネットがホームでしょう。
なお、記事の終わりにはピックアップしたアーティストの曲をSpotifyでプレイリスト化しましたので、ぜひそちらもチェックしてみて下さい。
1. Seiho
この記事の指標と言ってよいSeiho(セイホー)。彼の音楽が好きなリスナーは、ぜひ最後まで記事をお読みください。高確率でお気に入りのサウンドが見つかるはずです。
と言うのもですね、Seihoの音楽のレンジがあまりにも広すぎるんですよ。特にダンス・ミュージックの文脈はほぼ全て汲んでいます。ポップユニットSugar’s Campaignの片割れとしてメジャーでも活躍する一方、ソロではハイコンテクストな音を鳴らし続ける(シュガーズも実は相当にハイコンテクストですが)。
Seiho – 『I FEEL RAVE』
Perfumeの『If you wanna』によって日本でも市民権を得た感のあるフューチャー・ベース。このジャンルが浸透したのは海外でも2015年頃ですが、Seihoは2013年の時点でこの曲をリリースしていたわけです。カシミア・キャットなど、世界的にフューチャー・ベースのパイオニアと目されるアーティストとほぼ同時期ですね。音楽のレンジが広いと言いましたが、他にアブストラクト・ヒップホップやポスト・ダブステップ、チルやジャズなど、いわゆる「IDM」と称される音作りも精巧です。今年リリースされた『UNREAL』も傑作でした。
<Seiho公式Twitter>
https://twitter.com/seiho777
2. AmPm
音楽家のアイデンティティはどこに宿るのでしょう? 個人的に思うのは、もはや必ずしも母国語を使うことではなくなったということです。言語も含めた普遍性を追求するアーティストも増えました。バンドで言えばThe fin.やDYGLがそうでしょう。で、今年Spotifyのチャート上に突如現れた覆面の二人組クリエイティブユニットAmPm(アムパム)もその典型です。
AmPm feat. Michael Kaneko – 『Best Part of Us』
サウンドクラウド上でも公開されている同曲ですが、「AmPmはどこの国のユニットなの?」なんてコメントが寄せられています。僕もよもや日本人だとは思いませんでした。それぐらい海外仕様。ヴォーカルにはシンガーソングライターのMichael Kanekoを起用しておりますが、この曲では彼のキャラクターにもだいぶ変化があります。ここまでハウスが似合うなんて。
現在Spotify上ではカバー曲も含め8枚のシングルが公開されておりますが、Michael Kanekoの他にNao KawamuraやHiro-a-keyなど、ブラック・ミュージックマナーに則したシンガーが起用されています。
<AmPm公式Instagram>
https://www.instagram.com/ampm.tokyo/
3. in the blue shirt
2016年にリリースされたtofubeatsのメジャー通算2作目のアルバム『POSITIVE』のリミックス盤に名を連ねた、in the blue shirtこと有村崚(ありむら りょう)。彼が担当したのは『Without U』でして、この曲だけ聴くとハードコア系のトラックメイカーのようですが、その射程距離はもっと長いです。コチラ、同じくtofubeatsの『ひとり』のリミックス。
tofubeats – ひとり(in the blue shirt remix)
BPM(曲のテンポ)低めのメランコリックなトラック。イントロには蓮沼執太フィルの『Hello Everything』のフレーズが使われるという遊び心。さらにはルーツにthe band apartが居るというので、ロックへの愛情も深いです。サンプリングの方法論については、アヴァランチーズを感じさせるところもありますね(Send Aroundとか)。
今年の初めには昨年リリースされた『Sensation Of Blueness』のアナログ盤がリリースされたのですが、ボーナストラックにはCD未収録の『Stevenson Screen』が追加されております。エレクトロニカ好きは反応せざるを得ない内容ですよ。
<in the blue shirt公式Twitter>
https://twitter.com/Arimuri
4. Qrion
日本のビートシーンにおけるブライテスト・ホープのQrion(クリョーン)。札幌に生まれ、現在はL.A.在住のトラックメイカーです。一言で言えば、月並みですが天才です。2014年に弱冠19歳で『sink』を作ってしまった。
Qrion – 『sink』
音楽遍歴の豊かさも透けて見えますが、何よりプロダクションのセンスですよね。ポスト・ダブステップの暗さと瑞々しいヴォーカルのアンバランス。水滴音をサンプリングするというアイディア。小気味良く挿入されるチョップヴォーカル。当時リアルタイムで聴いてましたが、「コレで19歳、嘘だろ・・・」とノートPCの前で驚愕したもんです。そりゃあライアン・ヘムズワース(カナダの気鋭プロデューサー)だって放っておきません。
リミックスの腕も抜群で、これまでに多くのアーティストの楽曲を自身の解釈でもって再定義してきました。個人的なお気に入りはHow To Dress Wellの『Repeat Pleasure』のリミックス。ヴォーカルの繊細さは原曲以上では、とすら思います。
<Qrion公式Twitter>
https://twitter.com/_Qrion_
SHARE
Written by