1月29日、赤い公園が新体制での初シングル『絶対零度』をリリースした。
石野理子加入後、初めてのCD作品『消えない – EP』を昨年10月に発表してから2カ月に及ぶツアーを終え、今回のシングル・リリースへ。加速度的に勢いを増す新体制の赤い公園による新曲「絶対零度」は、バンドの勢いそのままに新たな挑戦を詰め込んだ、爽快なロックナンバーとなっている。
この曲の大きなインスピレーションとなった、TVアニメ『空挺ドラゴンズ』との幸福な関係性と、赤い公園の現在地について、メンバー4人に話を聞いた。
Text_Akihiro Aoyama
「FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”」の手応え
――昨年末に全国11カ所を回ったツアー「FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”」では、未発表曲もたくさん披露していました。まずはツアーの感想を教えてください。
津野米咲(以下、津野) : 今回、初めて来てくださる方が多かったんですよ。それがすごく嬉しかったですね。そんな環境で、以前からライブに来てくれているファンの方も初めて聴く曲を結構な数演奏したんですけど、ちゃんと会場が一つになってくれていたと思います。
――以前からあったレパートリーも、かなりアレンジを変えたそうですね。
津野 : せっかく理子が歌うし、今のバンド感にもっと合うアレンジがあるはずなので、既発の曲も新曲のように扱ってみたんです。けっこう根気強く検証して、用意して。
藤本ひかり(以下、藤本) : スタジオで、ずっとリハーサルしてたの思い出すね。
津野 : ツアーを通して、最後までアレンジが変わっていった曲もありましたね。
歌川菜穂(以下、歌川) : 曲間とかつなぎ目とか、やりながらアレンジを変えていく感じだった。
――石野さんが加入してから何度かツアーを行っていますが、以前と比べても今回は大胆にアレンジを変えたのでしょうか?
津野 : 今回は特に、ですね。シンプルな音像でリアレンジする作業は、理子が入って最初のツアーでもやっていたんですけど、もっと減らせるところを減らして、フレーズのなかったところにフレーズをつけて、フレキシブルに対応しました。
――石野さんは、どんどん変わっていくアレンジに戸惑いなどはなかったですか?
石野理子(以下、石野) : いや、私も初めて聴く曲のように扱っていたので、前と比べて歌い方に悩む、ということはあまりなかったです。
津野 : 初めての方にとっては、旧曲すらも新曲に聴こえていたんじゃないかと思いますね。かなりフレッシュな気持ちで臨めたツアーでした。
TVアニメ『空挺ドラゴンズ』から得たインスピレーション
――今回リリースされるシングル『絶対零度』は、TVアニメ『空挺ドラゴンズ』のエンディングテーマになっています。まずは曲の制作経緯から教えてください。
津野 : この曲は『空挺ドラゴンズ』のお話を頂いて、それに合わせて書き下ろした曲です。何曲か書き下ろして、その中から『空挺ドラゴンズ』の制作陣が「絶対零度」を選んでくれました。曲の作り・テーマなどは『空挺ドラゴンズ』が連れてきてくれたインスピレーションが大きいですね。
――『空挺ドラゴンズ』から受けたインスピレーションは、どのようなものでしたか?
津野 : 『空挺ドラゴンズ』は、龍を捕って、市場に卸す人達の話なんですよ。そう聞くだけだと、「えっ?なんぞ?」って感じじゃないですか。でも、それが日常的なこととして描かれていて、すごく色んな捉え方ができる。めちゃくちゃ強い龍を食べるために捕まえて市場に卸すという生業を、この人たちはすごく楽しそうにしていて。無理難題に挑む戦いとか、獲物との向き合い方とか、バンドをやっていくことと近いものがあるな、と思ったんです。「これはできない」「これは無理」というのではなく、歌詞にもある「トキメキ」のような心の奥にある何かに正直になって、死海だろうとどこだろうと飛び込んでみるという挑戦心。それが一番のインスピレーションでしたね。
――「アラバの海」=死海という言葉が印象的に歌詞に出てきますけど、雲海を突き抜けてクィン・ザザ号が姿を現すシーンとも重なりますね。
津野 : そうなんですよ。制作チームの方々も、そこを重ねて見てくれたみたいです。
――実際にこの1月から『空挺ドラゴンズ』が放送されていますが、実際に観られての感想は?
津野 : 4人でめっちゃ話したよね!
藤本 : とりあえず、どのキャラが好き?みたいな。
歌川 : 皆で推しを語るっていう(笑)。
――ちなみに、皆さんは誰推しなんですか?
歌川 : 私はミカです。普段はボーっとしてるのに、龍を目の前にしたらカッて目の色が変わって。
石野 : 私は今のところジローさんですね。
藤本 : ミカ派かジロー派で分かれてるよね。私も今のところジロー派かな。
津野 : 私はずっと酒飲んでるバーコ。めっちゃ良い。でも、本当に趣味が分かれるって話したよね。
藤本 : いろんな需要にお応えしてくれるキャラクター達です。
――あとはファンタジーなのにリアルで美味しそうな料理のシーンも良いですよね。
津野 : そう、めっちゃお腹空く! 当たり前の日常のテンションで調理してくれるから見やすくて。
歌川 : 私、Netflixで一足先に全話見ちゃった。今、漫画も読み始めてるところで、めっちゃ面白い。
津野 : 漫画はまだ続いてますからね。みんなで楽しみながら見てます。
――「絶対零度」が使われたエンディングはどうでしたか?
津野 : すごく丁寧に曲を可愛がってもらっていて、嬉しかったです。「絶対零度」に合わせて登場人物たちが踊ってくれて、私達が言っていいのか分からないけど、ピッタリだったよね(笑)。
「絶対零度」の余白を、バンドがカッコよく埋めてくれた
――この曲は爽快なロックナンバーですが、「消えない」や「凛々爛々」と比べてもアレンジが緻密になっています。そこにバンド力の伸びを感じたのですが、本人としてはいかがですか?
津野 : 自分だけである程度組み上がったときに、「これを皆でやったら、どうなるんだろう?」っていう余白みたいなものがあったんです。それから実際にバンドで演奏してみると、自分が思っていた以上にカッコよくなった。そこはEPの時から成長している部分かなと思いました。
――最初にあった余白を、バンドがカッコよく埋めてくれたということですね。
津野 : 今回、細かいところで、今までやったことないことが多かったと思うんですね。例えば、このBメロとサビを一曲の間に収録するとか。普段、歪んだ音では鳴らさないようなアカデミックなコード感を鳴らしたりとか。本当に細かいいろんな要素が、実は今までなかったことだったりして。挑戦するワクワク感があって、最後にはあっぱれな感じで仕上がったので、今だからこそ出来るバンド力が曲に込められたかなって思います。
――他の3人は、「絶対零度」の最初の印象はいかがでしたか?
藤本 : 戦いに出る瞬間のイメージでしたね。あとは、RPG感と言いますか、皆で縦一列になって冒険に出かける感じ。向かっていく前向きな感じがカッコいいなって思いましたね。
石野 : 初めて聴いた時から、ゾクゾクというか、スリルみたいなものを感じました。こっちが煽られてるような、試されているような感じもあったりしたので、歌は気迫があるようなイメージで歌ってみました。
歌川 : 冒険感と、合唱曲の感じと。「怪獣のバラード」みたいなイメージでした。強くて、すごくスケールの大きい感じで、最初聴いた時は笑っちゃいましたね。「はっはっはっ!すげー!」みたいな。
石野 : 確かに、凄すぎて笑っちゃう感じ。イントロからすごくてビックリしちゃいました。、あそこもアニメで良い感じにピッタリくるように使ってくれていて、嬉しかったです。
――アニメの制作チームからはどんな反応がありましたか?
津野 : 申し訳ないくらいに、ありがとうって言ってくれて。菜穂も言ってたように、ロックの中にも少し合唱曲感というか、アカデミックで重厚感のある“襟付き”な気持ちを入れて、それを芯にしながら線を引いてる感じがあったんですね。それはあくまで芯であって、肉ではなかったんですけど、アニメサイドの方々はその“芯”の部分を気に入ってくださった実感があったんですね。それがすごく嬉しかったです。
――すごく良い関係性ですね。
津野 : 本当に誠意のあるやり取りをさせて頂いたと思います。アニメ自体もすごいクオリティで、凄すぎて笑っちゃう感じはアニメにもありますよね。言葉にならないけど、人の心が思わず動いてしまうようなものを作れている姿を見ると、泣きそうなくらい嬉しくなるんです。私達にも無理じゃないって、勇気がもらえる。
海をテーマに対のイメージを描いたカップリング「sea」
――カップリングの「sea」は、「絶対零度」と同じく海が一つのテーマになっていますが、真逆のイメージになっていますね。「絶対零度」が荒々しい海なら、「sea」は穏やかな母なる海というような。
津野 : 確かに。飛び込んでいく海と、中に沈んで見上げている海という。
藤本 : 「絶対零度」は日本海って感じですよね。「sea」はギリシャとか、西洋の海みたいな。
――曲調もガラリと変わって、打ち込み主体のヒップホップ/R&Bになっていますね。前EP収録の「Yo-Ho」にも通じるサウンドになっていますが、この曲調になった経緯は?
津野 : 浮遊して、行ったり来たり、答えが出ないようなサウンドがいいなって思っていたら、こうなりました。明るめだった「Yo-Ho」から、より海の底に沈んでみたという。
――「Yo-Ho」が石野さんのルーツに近いという話をされていたので、こういった曲調には石野さんの存在も大きいのかなと思いました。
津野 : そうですね。実はこの曲、そこまでブラック・ミュージック寄りではなく、わりとホワイトな感じのリズムになっていると思うんです。こういうテイストは理子が入ってくるまで全くなかったものだったので、理子が連れてきてくれたんだろうなって思います。
――この曲はベースの存在感がすごいですね。
藤本 : 実は、あのベースも打ち込みなんです。勝手に私がすごいみたいになってしまっていて申し訳ないんですけど(笑)。
津野 : だから、この曲もライブを楽しみにしてもらいたいです。あれに全く出てこない、もっとカッコいいフレーズを用意するっていう課題を出してるんで。
藤本 : 大変ですけど、きっと大丈夫です。
津野 : 「sea」に関しては、他のメンバーもライブで何やる?っていう状態なので、楽しみですね。
新体制初のアルバムと春ツアー、赤い公園のこれから
――新体制初のアルバムが5月にリリースされることも発表されました。どのようなアルバムになっていますか?
津野 : メンバーそれぞれがドラマチックな数年間を過ごしてきたわけですけど、結局はこの4人での今日の記録、の繰り返しなんです。理子が入ってから新しい挑戦をたくさんしてきて、ようやく新体制でのフルアルバムが作れるくらいの健康状態に大回復しているということを、まずは伝えたいですね。そして、聴いてもらえれば、赤い公園がさらに元気になっていることが分かってもらえると思います。新しく出来ることも増えて、より音楽的になっていることが伝わる内容になっていますので。
――では、最後にアルバムとその後のツアーに向けて、ファンの皆さんに一言お願いします。
津野 : これから、私達はなる早で着実に大きくなっていきたいと思っています。これまで、シンプルだけどなかなか出来ていなかった、皆さんと一緒に分かち合って、挑戦して大きくなっていくということを、これからやっていきたいと思っていますので、参加者募集中、という感じですね。
〈リリース情報〉
2020.01.29
赤い公園
『絶対零度』
[通常盤]
品番:ESCL-5208
価格:¥1,200 (tax out)
仕様:ジュエルケース
[期間生産限定盤]
(アニメ盤)
品番:ESCL-5209
価格:¥1,500 (tax out)
仕様:デジパック
※初回仕様ライブ先行封入あり
<収録曲>
1. 絶対零度
2. sea
3. 絶対零度 (TV Size Version)
4. 絶対零度 (Instrumental)
5. sea (Instrumental)
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