5. 普遍的な愛をテーマにした『美女と野獣』は、実写版もいい
こちらも古典的名作です。魔女の呪いによって恐ろしい野獣の姿に変えられてしまった王子と、読書と空想が大好きな女の子ベルの恋物語。王子にかけられた呪いを解く方法はただひとつ。誰かを愛し、愛されること――。実写版も数多くつくられていますが、本稿ではディズニーによるアニメ版をピックアップしました。
『美女と野獣』予告編
アニメ版に焦点を当てたのは、2017年にエマ・ワトソン主演で公開された実写版が劣っているからではありません。むしろ個人的にはエマ・ワトソンVer.は大好きです。実写版の何が優れているかと言うと、本作アニメ版『美女と野獣』の不足しているポイントを全て埋め合わせた点でしょう。アニメ版に比べて、実写版はあらゆる意味でシビア。魔女の呪いが王子の住む城だけでなく付近の町にも波及しているし、ベルの母親の悲しい過去が明かされています。そしてキャスティングも2億点(100点満点)。エマ・ワトソンがしばらくベルにしか見えなかった。
何が言いたいか?ぜひ実写とアニメをセットで見てください。
6. 『ペネロピ』が送る、女の子への超絶エール
本作の主人公の名前は、映画のタイトルどおり「ペネロピ」です。先祖の過ちにより、彼女にはある「呪い」がかけられているのでした。それは「見た目」に関わるもので、ゆえに彼女は25歳という年齢でありながら家の外へ出た経験が一度もありません。
『ペネロピ』予告編(英語)
ご覧のとおり、生まれながらにして彼女は豚の鼻と耳を持っているわけです。身体的特徴がわずかに違うだけで「歪(いびつ)」と言ってしまうのは、いまの世の中的にいかがなものかとも思ったのですが、むしろこれを「些細な違い」とするほうが失礼かなと。コンプレックスを受け入れた上で、ペネロピは健気に恋をする――。最高のガールズムービーです。
7. 『ラースとその彼女』は狂気か、純愛か。
いまをときめくライアン・ゴズリング(代表作『ラ・ラ・ランド』)が究極にシャイな男子・ラース役を熱演した本作。2018年現在、世界一勢いのあるスターが2008年に公開された本作で恋に落ちたのは、なんとリアルドールでした。
『ラースと、その彼女』予告編(英語)
なかなかにパンチの効いた設定です。当然ながら、劇中でもラース(=ライアン・ゴズリング)に対しては、周囲の人々から冷ややかな目が向けられます。リアルドールを完璧に人間扱いする彼に対し、「アイツはイカレちまった……」と陰口を叩かれることもしばしば。けれども、この設定に途中から無理がなくなってくるんですよ。脚本のマジックがさく裂しております。ラースとその彼女の恋路は、紛れもなく純粋な恋でした。
8. 『アンドリューNDR114』に見る「本気の恋」
惜しまれつつも2014年に亡くなった俳優、ロビン・ウィリアムズの代表作のひとつ。優しくてユーモラスな彼の人柄が存分に発揮されています。原作はアイザック・アシモフのSF小説『バイセンテニアル・マン』。人型家事ロボット「NDR114(=ロビン・ウィリアムズ)」が人に恋をするお話です。
『アンドリューNDR114』予告編
本作はまさに、ロビン・ウィリアムズという俳優のよさを活かしきった映画です。人間の複雑な感情を学んでゆくロボットの愛らしさ、純朴さを演じられるのは彼以外にいなかったのだろうと思います。人間に対して本気で恋心を抱いてゆくまでの過程も鮮やか。『her』と似た設定のように思われますが、こちらはより「人間とは?」という疑問に迫った内容です。人とロボットの違いはどこにあるのか? その核心へとユーモラスに迫った、実にロビン・ウィリアムズらしい映画です。
9. 『オアシス』でぼくらは途方に暮れる
動画も画像も公式に上がっていない『オアシス』。
この作品こそ、「歪(いびつ)」という言葉を使ってよいのか最後まで迷いました。けれども、やはり本作のキモは影を照らし出すことにあったと思うので、最後にこの映画を。
脳性麻痺を患うコンジュ(ムン・ソリ)と、前科持ちのジョンドゥ(ソル・ギョング)の恋物語。「歪」と言ったのは、コンジュが自分の家族にすらも人間扱いをされていないからです。症状が重く会話すらままならない彼女が心を開けるのは、ゴロツキのジョンドゥだけでした。正直言って、観るのがつらい映画です。「含み」のあるエンディングを本作は迎えるわけですが、その解釈は人によって違うかなと。個人的な見解を述べさせてもらえば、ハッピー・エンドではないと思います。もしこの記事を読んで本作を観てくれる人がいるのなら、ぜひ感想を聞いてみたい。そんな作品です。
■映画『シェイプ・オブ・ウォーター』
公開日時:2018年3月1日
上映館:TOHOシネマズ新宿ほか全国順次公開
<公式サイト>
http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/
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