美麗なハイトーンファルセットを唯一無二の武器として、ロック、J-POP、ファンク、フォーク――ありとあらゆるジャンルを横断し、圧倒的なメロディーセンスで異彩を放ち続けるピアノマン&シンガーソングライター、ビッケブランカ。2014年、インディーズシーンに新風を吹き込んだ彼が、10月26日、ミニアルバム『Slave of Love』で待望のメジャーデビューを果たした。
エンターテイメント性あふれるファンタジックなMVワーク、キャッチーなステージングで異才を発揮する彼の、縦横無尽な音楽性はどこからやってきたのか? そのルーツにまつわるトークから、『Slave of Love』の魅力に迫る!
インタビュー・文/阿部美香
父と母の往年の音楽体験がビッケブランカの核を築いた
――ビッケさんの音楽は、メジャー1stミニアルバム『Slave of Love』を聴いただけでも……まぁ、音楽性が幅広くて! ピアノロックを基調に、英語詞の正統派のファンクやクラシカルでプログレッシヴなロック、日本語で歌われるJ-POP的サウンドもありと、かなり捉えどころがない(笑)。
ビッケブランカ(以下、ビッケ) :よく言われますね(笑)。ひとつデフォルメされたものじゃなく、いろんなジャンルの幅が広いんで、「ルーツはどこ?」って聞かれることは多いです。
――なので、教えてください、ルーツ(笑)。プロフィールには、ご両親の影響で日本のフォークと洋楽を聴いてきた、とありますが?
ビッケ:日本のフォークは父親からで、財津和夫さんがいたチューリップとか、伊勢正三さんがいた風とかをガッツリ聴かされ、母親からはマイケル・ジャクソン、ベイ・シティ・ローラーズとか、海外のアーティストを聴かされてましたね。
――めちゃめちゃ70年代色が濃いですね。ビッケさんご自身の年代だと?
ビッケ:最初に大好きになったのは、小学校時代のSMAPですね。曲がいいし。僕、小学生時代は身体が弱くて入院しがちな子で。丸1年、病院にいたこともあるんですよ。そういうときに、うちにあったいろんなアーティストをシャッフルしてずーっと聴いてたんです。
最初はピアノマンではなくバンドのギターボーカルだった
――そこが幅広い音楽の原体験を培ったんですね。今はピアノがメインですけど、楽器も小さい頃から?
ビッケ:でも、最初は小学生で親父のフォークギターでイルカさんの曲とか歌ってたんですよ。そこからはずっとギター。そして中学入ってポップスに行くかと思いきや……RIZEとかに行っちゃいました(笑)。
――いきなり!?
ビッケ:そう、ちょっと流行ってたし。仲間4人くらいでバンドの真似事でRIZEをコピーしながら、ギターロック、ミクスチャーなオリジナル曲を作り始めました。そして、高校で洋楽のリンプ・ビズキットとかリンキン・パークを聴きまくるように。なかでもロストプロフェッツはかなり本気で好きになりましたね。
――バンド活動も続けながら?
ビッケ:うーん……というより、演奏するより曲を作るほうが楽しくなっちゃって。高校3年間は曲を作りまくり、自分でCDを焼いて3曲入りを500円で友達に売りまくってました(笑)。で、大学進学で東京に出てきたんですけど、自分の音楽をもっといろんな人に聴いてもらいたいと思っても、何をしたらいいか分からないじゃないですか。じゃあ、バンドを組んで認められればいいんじゃないか?と思って、同じ大学のメンバーとバンドを組んだんです、ギターボーカルで。ジャンルでいうとロストプロフェッツに近いギターロックですね。
――今の音楽性とはちょっと違いますね。
ビッケ:はい。でも……なんか違うなと思って、1年くらいでバンドを辞めたんです。で、20歳の後半くらいかな、「ギターを持って歌うのが、ホントに自分に合ってるのか?」と思い始めた。なんとなくそういうスタイルしかないと思い続けてきたけど、もっと違う表現方法があるんじゃないかと。実際、ライブをやってても、ギターの歪んだ音ってなんかしっくりこないと、ずっと思ってましたから。
――ギターロックじゃないな俺は、と気づいちゃった。
ビッケ:で、音楽スタイルを変えよう!と思ったんですけど、ボーカルだけじゃ物足りない。音は自分で鳴らしていたいから、子どもの頃、勝手に鳴らして遊んでいた「ピアノはどうかな?」と思い出して、さっそくピアノを買って曲を作ってみたら…すごくしっくりきたんですよ! これは面白いことできそうだと、ケータイを解約して、毎日毎日、ピアノを猛特訓しました。
――ケータイを解約……って、どういうことですか?(笑)
ビッケ:その頃、住んでいたのが大学のすぐ近くだったので、友達から誘われるとすぐ遊びに行っちゃうんですよ。俺はピアノを練習するから、連絡してくるんじゃない!という決意の表れです(笑)。ピアノは全部独学だったので、ピアノボーカルのベン・フォールズやビリー・ジョエルなどのアーティストをひたすら耳コピーして勉強しました。
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