Warpaint × yahyel。最高のカード。
2月28日、恵比寿のリキッドルーム。チケットは完全ソールドアウト。yahyelのライブ開始30分前の段階で、既に会場キャパシティのほとんどは埋まっていたように思います。筆者は下記の記事にて「本公演は2017年のハイライトになりうる」と書きましたが、それは決して装飾過多な表現ではなかったと自負しております。
オーディエンスもトレンドセッターらしき人が多く、みんな「しっかりカッコ良かった」のです。服のセンスが良いとか、メイクが可愛いということではなく、この日会場に来ていた人たちはどこかギラギラした質感を放っていました。全体の雰囲気としては、FKA twigsの初来日公演のときに似ていたかもしれません。
舞台は整い、いよいよオープニングを飾るyahyelのライブへ。『Alone』のイントロに始まった彼らのライブは、やはり多くの示唆がありました。
場数を踏むごとに進化を遂げるyahyel
最近のyahyelにはサウンド面における進化があります。それはつまりライブバンドとしての可能性。この日のセットリストでは『Fool』〜『Midnight Run』の繋ぎに顕著でした。
原曲よりもキック(ビート)が多く、あえてEDM風の言い方をすれば、しっかり「ドロップ」があったのです。本当に、どんどんアレンジのアイディアが豊富になってゆきますね。原曲を知っていてもその全貌を掴めません。しかも彼らには、曲の全景が不確かでありながら「聴かせる」技術が備わっています。「ドロップ」という表現を使った真意はここにあって、この方法論は、テンプレート化したダンスミュージックへのアンチテーゼにもなり得ると思うのです。海外で言えばDisclosureの態度ですね。
当然ですが、VJの山田健人(dutch_tokyo)による映像表現は、ライブでしか体感できません。yahyelのMVを作っているのも彼ですが、「MV」というパッケージされた映像と、ライブ表現の一部としての映像はやはり異なります。彼のVJは極めてバンド的なのです。
単純に場を盛り立てるだけでなく、表現を拡散するという役割がある。例えば、道教のシンボルである『太極図』(黒と白の勾玉が絡み合った有名なマーク)。
これがVJの映像の中で使われていました。ライブ中、筆者がモチーフを特定出来たのはこれだけです。それ以外はほぼ記号(WRECKING CREW ORCHESTRAも使われていましたが、やはり記号的方法論でした)。ここに何か意味を見出そうとするのは、やや読みすぎでしょうかね。「匿名性」を担保しつつ「アジア」を表出させたかったのか、はたまた『太極図』の本来の解釈である「表裏一体」をメッセージとして投げかけたかったのか…。いずれも推測の域を出ませんが、yahyelのライブに深みを生み出す意味で、VJの果たす役割は非常に大きいと感じました。まぁ、こうして憶測を重ねている時点で、恐らく彼らの術中に嵌まっているのでしょうね。内臓の深いところまで届く重低音の蠢きと共に迫ってくる圧巻の視覚表現が、リキッドルーム全体を巻き込み、丸ごと揺るがしたのでした。
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Warpaint、変幻自在・流動体的フォーメーション
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