盤石の輝きを見せたTempalay。
今までのTempalayのライブで一番良かった。フジロックの「ROOKIE A GO-GO」を含め、彼らのライブを複数回見ていますが、いよいよ「売れる」準備は整ったと思います。僕は今回のライブの前に一本記事を書いており、そこでTempalayの新作EP『5曲』を「US経由」と形容したのですが、それは少々間違っていたかもしれません。本作は「経由」というより、「帰還」に近かった。
細かいニュアンスで伝わりにくいかもしれませんが、「経由」とは「どこかを経て、また違うどこかへ行くこと」。対して「帰還」とは、文字通り「帰ってくること」です。「経由」と言ったときに辿り着く場所は不特定ですが、「帰還」と言えば行き着く先は往々にして一つなのです。つまりTempalayの音楽には、しっかり日本の情感があったのです。そこに様々な要素が乗ってくる。例えば、ファースト・アルバムに収録されている『made in Japan』。筆者の気のせいと言われればそれまでですが、『5曲』のリリース以降では、この曲が持つ意味合いが少し変わったのではと感じます。以前は海外への憧憬が先行しているような印象がありましたが、今のTempalayは土着性も備えているように思うのです。だから、雑食性の高い音を鳴らしても日本のリスナーの耳にスッと入ってくる。
Tempalay – 『made in Japan』
で、今回最も驚いたのは、Tempalayの音楽性そのものです。今回のライブには、『ZOMBIE-SONG』に客演で参加したヒューマン・ビートボクサーのREATMOも登場し、オーディエンスを沸かせました。『ZOMBIE-SONG』は原曲がそもそもブラックミュージック然としているのですが、ライブでは更に黒さを纏います。REATMOが紡ぐサウンドと絶妙に絡み合い、即興的なグルーヴを生んでゆく。「Tempalayが目指してたのはこれか!」と、思わず膝を打った瞬間でした。
極め付けは『Oh.My.God!!』の前に披露されたジャムセッション。もうね、ここだけでお金取れます。往年のジャズバンドのように渋いドラムソロに始まり、エフェクターが強めにかかったギターが轟音をかき鳴らす。黒く滑らかな音からローファイで攻撃的なサウンドへ変貌する様は、まさに一つの到達点です。そのグルーヴの連なりから『Oh.My.God!!』に繋がったとき、強烈な快感が全身を貫きました。圧巻。
Tempalay – Oh.My.God!!
アンコールには、バンドのルーツとなったUnknown Mortal Orchestraの『Stage Or Screen』のカバーを赤裸々に歌い上げ、自分たちの足元を再確認しているようでした。それは小原綾斗(Vo.Gt)のMCにもよく現れていたように思います。
「皆とこうして対面するのがね、僕には何だか不思議なんですよ。どこで僕らのこと知ったの? 友達? 雑誌?」。 言葉を選びながらオーディエンスに語りかける彼の様子が印象的でした。
Tempalayは、自分たちの音楽を受け取る人達のことを理解したいのだと思います。もっと言えば、自分たちも理解されたい。だからこそ、情報量が多くても「伝わる音楽」を作れるのでしょう。こうまとめると彼らが物凄く器用なアーティストのように思われますが、実は不器用であるがゆえに音楽の道に進んだような気がします。それほどに、彼らのサウンドは雄弁に物語っていました。
Photography_樋口 隆宏
Text_Yuki Kawasaki
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