TAICOCLUB’16が閉幕した際、突如としてTAICOCLUBが残り2回で終了することが明らかになった。傍からは集客もブランディングも上手くいっていたように見えたので、大いに僕たちファンは驚いたものである。詳しい経緯については、フィールドワークマガジン『SILLY』の記事で確認してほしい。
つまり今回のTAICOCLUB’17はセミファイナルに当たるわけで、何としても見逃せないのだ。ちなみに今回のラインナップはこんな感じ。
相変わらずバラエティに富んでいる。同じクラブ・ミュージック系のフェスティバルでも、『rural』とも『THE STAR FESTIVAL』とも違う。クラブ・ミュージックというベースがありながら、多様性も担保する。Bibioの記事で書いたこと(Warp Recordsについて)とニュアンスが似ているが、TAICOCLUBの多様性は更にレンジが広い。そして、「フジロックほど巨大なスケールでない」という点も特筆すべきだろう。
さて、本稿ではそんな独自の路線を行くTAICOCLUBに出演予定のアーティストに焦点を当ててみる。「とっておき」と題しているからには、「良いライン」を攻めたかったし、実際そのようにピックアップしたつもりだ。この記事を読んでくれる人が、対象となったアーティストのステージへ足を運んでくれたら最高だし、何より僕が現地で「キャッキャウフフ」したい。昨年で言えばテイラー・マクファーリンやダン・ディーコンなどが、まさしく「良いライン」である。
以下、今回のとっておき。
Acid Arab
Daphni (a.k.a Caribou)
Gabriel Garzón-Montano
Little Simz
Motor City Drum Ensemble
書き並べるだけでテンションが上がるメンツだ。早速、Acid Arabからフォーカスしてみよう。
アラブとアシッドの素敵な化学反応。Acid Arabの挑戦的グルーヴ感。
Acid Arab(アシッド・アラブ)は、パリ在住のDJ/プロデューサー・チームで、ギド・ミニスキーとエルヴェ・カルバーリョの二人から成る。その名の通り、彼らが鳴らす音はアシッド・ハウスとアラブ音楽を掛け合わせたような内容だ。アルジェリア出身のシンガー、ソフィアン・サイディをゲストに迎えた『La Hafla』は、彼らのプロダクション的な特徴がよく出ている。
Acid Arab – 『La Hafla』
ときに、皆さんはコンピレーションCDをお持ちだろうか?今は新人アーティストをPRするための手段としても用いられており、ライブ会場なんかでは無料で配っている人の姿をよく見かける。僕はこれ、結構好きです。お財布に優しいうえ(激レア盤化して価格が高騰することもあるが)、予想外の出会いがあるので。なぜ唐突にそんな話を始めたかというと、実はアシッド・アラブとの出会いもコンピレーション・アルバムだったからである。2014年にリリースされた『Acid Arab Collections』。2013年に発売された4曲入りのシングルがそもそもの始まりだったのだけれど、そちらの存在は後で知った。どちらも既に廃盤になってしまって、今では配信のみの流通となっている。
オマール・スレイマンやアイキューブなども参加しており、豪華な内容のコンピレーションであった。アシッド・アラブは『Berberian Wedding』という曲を提供している。今ではジャンルが違う音楽を掛け合わせることは珍しくなくなったけれど、さすがにここまで異質な組み合わせは類を見ない。それこそスレイマンがブレイクするまで、凄まじい数の試行錯誤があったはずだ。その意味で、今回のTAICOCLUB出演者の中で最も挑戦的な音を鳴らすのは、アシッド・アラブかもしれない。
Acid Arab – 『Berberian Wedding』
Caribouの別名義はフロア仕様。Daphniが揺らすTAICOの夜。
日本に限らず、カナダ出身(現在はロンドン在住)のミュージシャンであるダン・スナイスは、Caribou(カリブー)名義のほうが有名だろう。TAICOCLUB’17では、彼の別名義であるDaphni(ダフニ)として出演する。名義を使い分ける理由については、2012年に行われたiLOUDのインタビューに詳しい。
最近はバンドを観に行くよりもDJを聴きに行くことが多くてね。それで、自分がDJをする時にかける曲をつくりたいと思ってたんだよ。
(中略)
それに、ダフニはつくり方からして明確な違いがあるんだ。ダフニの曲は、シンセやドラムマシーンを使った作業の中から曲をつくっていく。でも、カリブーはソングライティングのアイデアを頭の中で構築していくんだ。 – ダン・スナイス
(出典: iLOUD – ロック&クラブ・ウェブマガジンより)
Daphni – 『Ye Ye』
最近はさらにモードの切り替えが明確なようだ。彼のスケジュールを見る限り、イベントの内容によって名義を完全に使い分けている。例えば、サブライム・ウィズ・ロームのようなロックバンドが出るフェスにはカリブーとして出演するし、他方では、Dimensions Festival(クロアチアのフェス)のようなダンス・ミュージック主体のイベントにはダフニとして出るという。
Daphni – 『Vikram』
確かに改めて聴くとカリブーの叙情性が希薄になり、ダフニのサウンドはより艶やかでドラッギーだ。ちなみにカリブーの曲をダフニの世界観のもとに再構築したものもあり、両方の人格を知っておくと更に楽しめそうである。
Caribou – 『Our Love (Daphni Mix)』
SHARE
Written by