さらに拡張されるyahyelの世界観
バンドが鳴らす音だけでなく、dutch_tokyoこと山田健人による映像表現も、yahyelを構成する重要な要素である。新曲も披露された今回は、以前から担保されていた匿名性はそのままに、彼らの世界観が拡張されていた。以前VJで使われたことのあるモチーフも、同じ方法論で用いられることはない。ライブごとに何かしらの変化がある。ピンク・フロイドの『Dark Side of the Moon』のジャケ写もサンプリングされており、表現に奥深さを与えていた。まだ咀嚼し切れていないが、その意味を考えるのが堪らなく楽しい。変化があるのはセットリストにも言えて、お馴染みの『Once』や『Why』の他にも、Warpaintの『New Song』のカバーなんかも披露してくれた。
yahyel – 『Once』
新曲については、ボン・イヴェールとジェイムス・ブレイクの邂逅といったところ。もっと具体的に言えば、クリアなファルセットにあえてオートチューンを施すところが前者で、静謐なイントロで始まり、途中で凶悪なドロップが出現するところが後者だ。とにかく、新曲もドえらい出来であったとお伝えしておきます。曲のタイトルは発表されなかったのだけれど、ファンをその気にさせるには十分なインパクトがあった。
純然たるラスボスだったJOJO Mayer & NERVE
『SYNCHRONICITY’17』、僕が最後に観たのはJOJO Mayer & NERVE。まさしく超絶技巧。独断と偏見でベストアクトを選んでも良いのなら、今回は彼らを推します。ひとことで言うのなら、「ライブバンドによるクラブミュージックへの回答」。この方法論ではBattlesやTychoが有名だけれども、ちょっと彼らは次元が違う。もはや「人力ドラムンベース」だ。この感動はぜひ彼らのライブで直に感じてもらいたいが、この動画を観て欲しい。
Jojo Mayer & NERVE – 『Live in Europe』
まるでSquarepusherの曲を生演奏しているようではありませんか!何より驚くべきは、これがほぼ全て即興だということ。ライブ中、メンバー間でアイコンタクトを取りながら演奏する様子が本当にスリリングだった。中心にいるのはジョジョ・メイヤーだけれど、キーボード奏者のジェイコブ・バーグソンとベーシストのジョン・デイヴィスも相当な手練れである。テックハウスのようなミニマルな展開から、どんどんスケールを拡大させても破綻する気配がない。この一点だけでも、彼らの玄人ぶりが窺える。アンコールの『Extendency』を含む1時間強、片時も彼らから目を離せなかった。
text_Yuki Kawasaki
■SYNCHRONICITY’17 「外」という概念がなくなった今。プレイリスト
■『SYNCHRONICITY’17』
開催日時:
2017年4月8日(土)
開催場所:
TSUTAYA O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest
公式Webサイト
■本稿でピックアップしたアーティスト
WONK
Nulbarch
yahyel
JOJO Mayer & Nerve
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