5. 第88回アカデミー賞で悲願を達成したのはレオ様だけではなかった
レオナルド・ディカプリオ悲願のオスカー像受賞に沸いた、2016年2月28日(現地時間)。確かに『レヴェナント:蘇えりし者』で彼が見せた演技は鬼気迫るものがありました。世界中の映画ファンが待ち望んでいた瞬間でしたから、彼の名がコールされたときは映画さながらのカタルシスを感じたのを覚えています。
けれども、個人的にはそれに匹敵する出来事がその約2時間ほど前に起きていました。『ヘイトフル・エイト』のスコアを書いたエンニオ・モリコーネのアカデミー作曲賞受賞。彼はこれまで5回のノミネートを経験し、アカデミー名誉賞まで獲得しておきながら、肝心な作曲賞は一度も手にしていませんでした。
『ヘイトフル・エイト』予告編
ちなみにゴールデングローブ賞は『ヘイトフル・エイト』以前に二度ほど受賞しています。1986年に制作されたイギリス映画『ミッション』と、イタリアの巨匠ジュゼッペ・トルナトーレが1998年に世に送り出した『海の上のピアニスト』。
僕は朝から真昼間まで授賞式をリアルタイムで観ておりましたが、”the oscar goes to…… Ennio Morricone!”と告げられた瞬間泣きましたよ。当時の様子がコチラであります。
「素晴らしい映画があって、美しい音楽が生まれる。クエンティン・タランティーノ監督、私を選んでくれてありがとう。この賞は今も私を見守ってくれている妻のマリアに捧げるよ」。
6. 暗黒の青春グラフィティ『ウォールフラワー』
2017年現在、エマ・ワトソンの最高傑作は本作『ウォールフラワー』だと思います。青春グラフティの傑作。中高生の頃はスクールカーストの上下に限らず、どこの層にいても闇を抱えてしまうもの。主人公のチャーリーはギーク層の人種ですけれども、この闇の在り方は万国共通ではないでしょうか。
『ウォールフラワー』予告編
そしてそういう闇を抱えた人たちが漏れなく通過するのが、ザ・スミスやデヴィッド・ボウイなど、ある意味で何かを超越したヒーローたちです。僕らの場合はまた別にヒーローがいそうですけれども、本作の舞台は90年代初頭。チャーリーたちにとっては紛れもなくザ・スミスやボウイがそれにあたるのでした。
その曲を聴くだけで何でもできる気になる瞬間が本作では描かれていて、その意味では『シング・ストリート』とはまた別なベクトルで音楽の可能性を追求した映画だと思います。「誓って言える。今この瞬間、僕たちは無限だ」と本気で思える瞬間の横には、大いなる音楽があった。
7. ベスト・オブ・エンディングテーマ賞はこちら。『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』
「ベスト・オブ・エンディングテーマ」なんて書くと、そこに至る過程をすっ飛ばしてエンディングだけ観ようとする人がいることを僕は知っています。当たり前ですけれども、それまでのストーリーがあってエンディングがあるわけですから、やはり断片だけで完全なカタルシスを得ることは不可能です。
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』予告編
特に本作『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』は連綿と続く家族の物語。ぜひ最初から最後まで、一瞬も見逃すことなく鑑賞していただきたい。
で、本作のエンディングを飾るのはボン・イヴェールの『The Wolves』。エンディングゆえあまり深くは語りませんが、これほど優しく、切ない終わり方は他にないです。静かにそれでも衝動的に進行するドラマに、エンドロールを観ながら一粒の涙を流す。そんな映画です。
僕はこの作品を劇場で観て、ボン・イヴェールが大好きになりました。
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