ササクレフェスが今年も渋谷のWOMBで!
インディーレーベルの『術ノ穴』が主催する『ササクレフェスティバル(以下、ササクレフェス)』。今回は7月8日(土)に開催されます。このたび本イベントは8回目を迎えるわけですが、いよいよ独自のフェスカラーを確立した感がありますね。会場となるWOMBにはよく行きますが、このイベントのときは独特の雰囲気を感じます。参加者のファッションなど、見かけは各々バラバラなのですが、全体の空気に何となく統一感があります。「Kawaiiままクール」というか。何を言ってるんだお前は、とお思いのかたはぜひコチラのダイジェストをご覧ください。昨年のササクレフェスの様子。
ササクレフェスティバル 2016ダイジェストムービー
呂布カルマやFINAL FRASHがラップをかっ飛ばしたかと思えば、そのすぐ後にゆるめるモ!がハジけ倒す。そのうえ、本イベントでは音楽のほかに様々なコンテンツ(アートやフード)が展開されます。一見すると情報過多のようですが、不思議なことに至極スタイリッシュなのです。雑多だけれどもノイジーにならない。これは間違いなく主催の『術ノ穴』のキュレーションによるものでしょう。今年で設立12年目を迎える『術ノ穴』。今やこのレーベルは、現在の日本のインディー・シーンにおいて欠かせない存在であります。間欠的にリリースされるコンピレーション・アルバムも良い。
【ダイジェスト】術ノ穴presents『HELLO!!! vol.9』
術ノ穴が提示する「ジャパニーズ・ヒップホップ」
レーベルを主宰するのは、kussyとdeiiによるトラックメイカーデュオ『Fragment(フラグメント)』。自らの楽曲制作のほか、様々なアーティストのプロデューサー・リミキサーを務めています。やくしまるえつこ、私立恵比寿中学、パスピエ、LEO今井など、彼らが関わったミュージシャンは枚挙にいとまがありません。オリジナルも素晴らしく、2010年にリリースされた彼らのセカンド・アルバム『vital signs』は、ジャパニーズ・ヒップホップの新機軸を切り開いたという意味で大変重要だと思います。当時のクラブシーンで鳴っていたビートを積極的に取り入れ、同時代の日本のヒップホップとは一線を画すプロダクションを展開しました。
Fragment – 『先へ feat. 5lack』
術ノ穴に所属するアーティストの顔ぶれを見ると、やはりレーベルのカラーはヒップホップ寄りでしょうか。DOTAMA、泉まくら、DALLJUB STEP CLUB…。けれども、いわゆるUS的ヒップホップではないですね。いや、日本のレーベルだからそれはそうなのですが、僕が言いたいのは「これこそが日本のヒップホップ観なのではないか」ということなのです。ギャングスタやドラッグはさして重要ではなく、ひたすらパッチワーク的。異なるジャンルや領域から果敢に引用してゆくスタイル。リリックは内省的で、ダークなニュアンスをはらみます。術ノ穴はここにファッション性を直結させました。それぞれバラエティに富んでいながら、独特の暗さを持ち、それでいてアイコニック。ヒップホップ以外のアーティストにもそれは言えるでしょう。例えば、『禁断の多数決』。
禁断の多数決 – 『ユーロビートを追いかけて』
志向するのが一癖も二癖あるポップミュージック。彼らの音楽はどこかVaporwaveっぽいですね。今になってようやくガイド本が出るほどニッチなジャンルですが、彼らはデビュー以来ずっとここにいるわけです。禁断の多数決に限らず、『術ノ穴』のアーティストの多くは、いつのまにかトレンドの中心地にいることが多いような気がします。
昨年デビューしたANIMAL HACKも間も無くそのような存在になるでは。
ANIMAL HACKの可能性
まさに彗星の如く現れた二人組のトラックメイカー。個人的には、今回のササクレフェスで最も楽しみにしているアーティストです。ブロステップやトラップ、フューチャー・ベースなどを通過し、独自の解釈で再構築したようなダンス・ミュージックを鳴らします。ビートは複雑そのものですが、上に乗るメロディがたまらなくキャッチー。2016年の9月には、配信限定でファーストEP『ANIMAL HACK』をリリースしました。
マッド・ディセントやOWSLA系のサウンドを横目に、彼らは明らかに「EDM以降の音」を模索しています。その証左に、『ANIMAL HACK』から約8ヶ月後に発表されたセカンドEP『Boy』は、より多くのレイヤーで構成されていました。前作の流れを引き継いだ『Franny』、メランコリックなヴォーカルが印象的な『Moment』、メロディとビートが均衡した割合で結びついた『(500) Days Of Innocence』、ミニマムとマキシマムの間を自在に往来する『Rêverie』。
そしてつい最近公開された『Plastic Night』。筆者の主観では、この曲が現時点では彼らのベストです。これまでと比較してテンションは控えめだけれど、それがかえってエモーショナル。FlumeとThe Japanese Houseの間を射抜くようなサウンドですね。
ANIMAL HACK – 『Plastic Night』
『術ノ穴』から出てきたことも、半ば必然だったのかもしれません。ヒップホップを横断的にとらえ、他ジャンルと相互関係を築く同レーベル。独自のダンス・ミュージック観を持ち、多層的にその未来を切り開こうというANIMAL HACK。彼らが見ている景色は、きっと限りなく同じものなのでしょう。Fragmentがヒップホップの可能性を切り開いたように、ANIMAL HACKもまたダンス・ミュージックのフィールドでその役割を担おうとしている。デビューしてからまだ1年しか経っていませんが、彼らならやれるはずです。
■術ノ穴presents『ササクレフェス2017』
日程: 2017年7月8日(土) 14時〜
会場: 渋谷 WOMB
<関連リンク>
http://sasakure-fes.subenoana.net/
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