渋谷 eggmanで輝いた4つの才能
9月4日(水)、渋谷のeggmanにて「ローチケpresents LIVE BEATER!! 2nd match」が開催されました。出演アーティストは4組。初恋モーテル、レイラ、osage、ヨイズ……。当日にチケットを買っても3000円+ドリンク代で注目のインディーバンド4組を見られるという、なんとも破格のイベントでありました。最近ライブハウスの役割について考えることが増えてきたんですけども、やはり考えるよりもまず現場に足を運ぶことが大事ですね。eggmanから出る頃には、心も頭も晴れやかでした。
今って、大規模な音楽フェスティバルのために可処分所得(&時間)を積み上げ、会心の一撃のようにライブを楽しむことが増えてませんか? 個人的にも音楽ライフの中でフェスが占める割合が増えてきました。けれども、1年を通して様々なイベントがライブハウスでは行われているのです。
「ライブハウスを大事にしたい」と言うバンドもいるぐらいですから、ハコ的なカルチャーはアーティスト側も大事にしてきた経緯があります。ELLEGARDEN、the HIATUS、MONOEYESのフロントマンである細美武士氏はその代表的な存在として挙げられるかもしれません。飲み代1回分のチケット代、ステージとの距離感、秘密基地みたいな排他性……。確かにフェスとは明らかに別の楽しみ方ですね。
この日の「LIVE BEATER!!」に集まった4組も、フェスで見かける機会がこれから増えていくでしょうが、ここで観たことを忘れたくないと強く思います。なお、ミーティアでは出演者であるヨイズとレイラに対談インタビューを実施しました。
さぁ、トップバッターは初恋モーテル。
切なさが爆ぜていた、初恋モーテル
「初恋モーテル」。名前からして甘酸っぱいカルピスのような雰囲気を感じます。男女混合の4人組ロックバンド。メインヴォーカルとコーラスは基本的に女性の2人(Vo.のワカメケイナとBaの内村萌乃)が担っていて、職人気質な男性2人(Gt.の筒井翔平とDr.の井田恵輔)がいぶし銀に演奏する。全体的な質感はソリッド。特にドラムパターンが複雑で、1曲の中で8ビートっぽいリズムから要所で4つ打ちになったりする。「ビスケットアイス」に顕著なのではと思います。しかも、このバンドは硬派なだけではないんですね。名前の通りカルピスなところもあるわけです。歌詞やギターのリフは、しっかり甘酸っぱいのであった……。
「サーズデイ」に出てくる“僕”と“君”の距離感や、私小説的な描写。それらが軽快なカッティングに乗って僕たちのハートを射抜くのです。胸の奥がキュッとなる感覚は、少しばかり年齢を重ねただけでは消えてくれないようでありました。
「1組目からこのレベルか……」。彼らの出番が終わってから、思わず口をついて出た言葉。タイムテーブルは様々な要素を考慮して作られますが、観客の心理として後に続くアーティストへは更に期待してしまうものです。初恋モーテルの時点で、「今の邦ロック界隈にはこんな凄いバンドがゴロゴロいるんかい……」と戦慄しました。そしてその期待感は、この日一度も裏切られることなく続くのです。
出てきた瞬間に空気を変えた、レイラ
出演バンドが4組もいれば、各々がまとう空気の違いも如実に分かりますが、それを踏まえてもレイラが放つオーラは異質でした。海外で言えばSlowdiveやMy Bloody Valentineらに代表される“シューゲイザー”と言われる方々、レイラの音楽は彼らに近いように思われます。第一印象としても、「何やら話しかけがたい」と言いますか。それは普通だと音楽を聴いた後に抱くイメージなのですが、このバンドの場合はステージ上に現れた瞬間にそのような印象を持ったのです。本人たちにそんな意図があるのかはさておき、傍から見ていて尖ってるなぁ~と感じました。
で、彼らが楽器を構えた瞬間、本当にシューゲイザーが鳴り出したわけです。この「通じ合えた感」は現場で味わってこそであります。轟音と静寂を使い分け、センシティブな世界へと連れて行ってくれました。「アパートの中で」のAメロに見られるように、ミニマルな構成から段々音数を増やしてサウンドを最大化させていく精度がすこぶる高い。これでメンバーの年齢がまだ20歳前後というのだから恐れ入ります。上でSlowdiveの名前を挙げましたが、百戦錬磨の彼らのアプローチを既に踏襲できているとさえ感じます。かと思えば、「SEASIDE」ではFazerdazeばりのフレッシュなギターポップを聴かせてくれる。シューゲイザーを主軸にしながら引き出しも多そうであります。何とも末恐ろしいバンドが現れましたね……。
しばらくアップテンポな曲が続くのですが、やはり抜き差しの妙を分かっているのか、「音楽のある風景」をセットリストに加えてバランスを取ります。“バランスを取る”というのはいささか語弊があるでしょうか。そんな考え方をしなくとも、彼らの曲は漏れなく素晴らしい。そもそもバンドの演奏も完成度が高いため、文字通り隙がありません。音楽シーンがちゃんと機能してさえいれば、スタジアム級のハコで演奏する日も近いと思います。その手のバンドの夜明け前の瞬間を見られるのも、ライブハウスの醍醐味ではないでしょうか。
クドいようですが、ここでまだ2組目です。
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