エンタメ大国の前大統領が作るプレイリストは伊達じゃねぇ
アメリカ合衆国の44代目大統領、バラク・オバマ氏が先日「SUMMER PLAYLIST 2019」と題し、自身のお気に入りの楽曲を発表しました。こちら毎年発表されるリストなんですけども、毎回驚かされるわけです。ジャンルの幅広さ、オールドスクールとニュースクールの絶妙なバランス、曲の順番…。何より、このプレイリストからは「アフリカ系アメリカ人の元大統領(58歳)」という人物像がヒシヒシと伝わってくるように思うのです。Drakeで始まり、ATCQで〆る。ヒップホップやソウルを基調にしつつ、The Black KeysやSharon Van Ettenなんかも合間に差し込んでくるわけですよ。これはもう、辣腕のDJのなせる業。
一介のライターとアメリカの前大統領。立場は雲泥の差ですけれども、DJ Barackによって揺さぶられた音楽好きの魂はもう止めようがありません。もっとオープンマインドに音楽の好みは語って良いはずだし、時として「選ぶ」ことは自分のその時の状況を端的に表すことにも繋がる。このプレイリストを見たとき、「まだまだ音楽にできることはあるかもしれない」と感じました。
「27歳、今の社会との距離感がうまく掴めず、それでも世の中に居場所を探す男(クラブは好き)のSUMMER PLAYLIST 2019」。どうぞよろしくお願いします。よかったら、あなたのプレイリストも聴かせてほしいです。
スキゾインディアン / Dos Monos
3人組ヒップホップクルー、Dos Monos。彼らは「自分たちの音楽がヒップホップかどうかなんてどうでもいい」という趣旨をインタビュー等で度々語っていますが、確かにカテゴライズが難しいです。というか、そんなのは要らないかもしれません。…と言いつつ、個人的にはトリップホップやBrainfeederの系譜に並べて聴くとしっくりきますね。今回もそういう並べ方をしたつもりです。色々と過激ですが、このグロさに「今」を感じてしまいますね…。
Mile High (feat. Travis Scott & Metro Boomin) / James Blake
暗いベッドルームから僕らを照らし続けてくれる、ジェイムス・ブレイク。そんな彼が今年の頭にリリースした新譜は、比較的明るい印象を受けるサウンドでした。暗がりから生まれた人間が、必ずしもそこに住み続けなければいけない理由はなく、時として日の光を浴びたい瞬間だってあるわけです。今回のジェイムス・ブレイクは、「幸せな時は幸せだと胸を張ります!」とでも言いたげな、朗らかな様相でした。ずっと暗い人よりも人間らしくて良いと思います。
I Like America & America Likes Me / The 1975
今年のサマーソニックには行かれましたか? 自分含め、周りではThe 1975をベストアクトに推す声が圧倒的に多いです。実際、それぐらいのライブパフォーマンスでした。オートチューンを用いながらも、マシュー・ヒーリー(Vo.)の肉声にははっきりとしたソウルがあったと言いますか…。「I Like America & America Likes Me」の時の、オートチューンがかかった叫ぶような歌声に、鬼気迫るものを感じました。めちゃくちゃな世の中だからこそ、機械と肉体のちぐはぐな関係性が際立ちます。彼らのライブ終了後、一切の感情を使い切って日が落ちたマリンスタジアムに立ち尽くしてしまいました。
My Girl / Kan Sano
Kan Sanoの「My Girl」も一癖あります。4つ打ちってどの曲もシンプルになりがちなんですが、この曲は違う。けばけばしいニュアンスは無いですけども、印象としてカラフル。3分越えたあたりでまた一気にカッコよくなります。数々のミュージシャンたちとセッションを重ねてきた彼だからこそできる芸当だと思いますね。パッケージされた音源にすら、ライブ性をもたらすことができる。録音された音源を何回聴いたところで展開は変わりませんが、なぜかいつも新鮮に聴こえるんです。マジック。
On & On / Erykah Badu
今回のプレイリストを作成するにあたり、最もDJ Barackに影響を受けたのがソウルの選曲かもしれません。「ローリン・ヒルにジル・スコット? じゃあこっちはエリカ・バドゥとディアンジェロだ!」という意気でした(ディアンジェロは客演であちらのプレイリストにもいますが)。個人的な話をすると、90年代のネオ・ソウルには特に力をもらえるんです。ラブソングにもシリアスな雰囲気を感じると言いますか。まぁシリアスな曲ばかり聴いても疲れてしまいますが、やはり今はそういう音楽に逃げ込むことが多いです。…逃げ込むというか、戦うというか、何というか。
Lady Sunshine (Night Tempo Showa Groove Mix) / Night Tempo, 杏里
「未来こそ懐かしいものにしなくてはならない」と、「結-YUI- feat. 志人」に登場する地底世界の住人も仰っています。Night Tempoはその最たる例ではないでしょうか。今や世界的なムーブメントとなった“シティ・ポップ”の先駆者ですが、最大の武器としているのが「昭和グルーヴ」なわけで。それをナイル・ロジャースとTake Thatで挟むことによって、更にはすぐ後のtofubeatsと繋げることによって、このグルーヴは完成するのであった…。と、自分で言ってしまうあたり本当にアレですが、ここまで記事を読んで下さった人には細部までお伝えしたくなってしまい…。
言葉のやり取りだけでは伝えられないことも、音楽を介すると伝えられる。そんな場合もあると思います。
MEETIA × LINE MUSIC プレイリスト『オバマに触発された男』
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