個人の活動によりさらなるムーブメントの形成へ
常田は米津玄師の3rdアルバム『BOOTLEG』の楽曲において共同プロデュースとして『爱丽丝(アリス)』をアレンジしギター・キーボードで参加、家入レオのアルバムへの楽曲提供など、ソロとして他アーティストの作品へ携わることも少なくはない。そんな音楽に愛されるために生まれたような常田の快進撃は現行に収まらず、2019年にソロ活動millennium parade (ミレニアム・パレード)をスタートさせた。millennium paradeではKing Gnuで打ち出しているJ-POPとしての側面を剥奪し、新しい音楽表現をかたちにした、実験的な楽曲を展開している。1バンドの1メンバーという言葉ではとうてい言い表せない、常田のシンボリックな独創性。彼の存在自体が、日本のカルチャーそのものの概念を変貌させていくことになるかもしれない。
井口は学生時代から舞台などへの出演はしていたが、前述の通りバンドのMVでの演技や本映画への出演を皮切りに本格的に俳優としての活躍が期待されてる。メンバーのなかでも一際アグレッシブな動きを見せる井口だが、バンドや音楽というジャンルの枠にとらわれるのではなく、アウトプットの発信源を“自分”に集中させることで、外的からのしがらみの一切を排除し表現方法の境界線をぶち破ろうと目論んでいるのではないかと、活動見ていて強く感じた(2月のMステ出演時のハジけた演出もそうだと信じたい)。井口のTwitterで炸裂されるローマ法王、NASA、ジャスティン・ビーバーなどに対する最高の「クソリプ」は、そんな井口の型破り活動の一環としてぜひ拝見してみてほしい。
ジャスティン、いつものやで。https://t.co/wVHdqhSOr3 pic.twitter.com/UoNN2sDbIZ
— 井口理 (@Satoru_191) November 5, 2018
本当にあったクワイ話してよ。
— 井口理 (@Satoru_191) January 4, 2019
また、新井にいたっては中田裕二のアルバム『NOBODY KNOWS』、甲田まひる a.k.a. Mappyのデビュー作、KANDYTOWN・IOのバンドアレンジ楽曲、君島大空のフジロックROOKIE A GO-GOステージのバンド・セット、MELRAW(安藤康平)のワンマンなど、ジャンルを問わず多くのアーティストのバンドや楽曲へ参加している。
King Gnuせしめる“何か”を持つ4人組
常田、井口、勢喜、新井の4人が集まったことで、King Gnuは誕生した。そもそもバンド名は、動物の「Gnu(ヌー)」が春から徐々に合流し、やがて巨大な群れになる習性を持っていることから、「自分たちも老若男女を巻き込み大きな群れになりたい」という思想を盛り込んだもの。そこに「King」と名付けるあたりに、彼らの圧倒的な自負を感じざるを得ない。出生や活動経歴、ソロでの活動を垣間見ることで、それぞれが敬意を持ちあわせた。常田が井口であり、勢喜であり、新井である意識を持つ。他メンバーも同様にKing Gnuの活動範囲すべてにおいて誇りを持っているからこそ、あれだけのクリエイションができているのではないだろうか。自分とメンバーへの信頼の強さ、ある種ナルシシズムな思考のもと、楽曲・MV・ライブパフォーマンスの強度が高められていく。彼らはそうして、今日も唯一無二もアーティストとしてのカタチを確固たるものにしているのだろう。
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