亀本 : ギター、蒐集されてますか?
古市 : いや、全然。処分したんで今は20本……いや、もうちょっとあるかな。それくらいですね。新しいギターを弾いてみたいって気持ちは昔も今もあんまりなくて。出したい音があるんだけど手持ちのギターだと厳しいな、みたいな必要に迫られてのことはあるけどね。
亀本 : 僕はメーカーさんとかから借りてるものも含めて10本前後しかないです。ただ、聴いてる音楽によって欲しくなっちゃうことが多くて。この前、ロビー・ロバートソンが『ラストワルツ』で使ってた、リアだけハムバッカーのストラト(ストラトキャスター)があるんですけど、それが“フェンダーのカスタムショップから出る”って聞いて、めっちゃ欲しい! って思って調べたら200万円。何それ……と思って買えなかったんですけど(笑)。シグネチャーモデルとかもそうですね。この曲は気分がジミヘンで行くぞ! と思ったらそういうギターを持ちたくなっちゃうし。
古市 : へぇ〜。
亀本 : 弾いてる時もこのフレーズのこのポーズは誰々!っていうのがあって。この曲の一番格好いいところがここだから、この人と同じギターを使いたい!とか、そういう感覚ですね。
――ちょっとファッション的な側面も強いのかもしれないですね。
古市 : でも僕、ギターはずっとファッション目線ですよ。いつも言うんですけど、ギターはジーパンとか革ジャンと同じ扱い。僕がギターを始めた頃、1977年くらいだったんですけど、世の中はフュージョンブームだったんですよ。で、その人たちはテクニックもすごいから、ギターを格好いいと思ってもあんなの弾けないと思ったの。だけど、その時にピストルズ(セックス・ピストルズ)のPVを見て“これならイケんじゃないの!?”と(笑)。そう思ったのと同時にハンマーで殴られたような衝撃を受けた。中学校一年生でしたから、すっかり持ってかれちゃったんでしょうね。
――最初はうまい下手よりもファッションとかスタイルでハマっていったんですね。
古市 : そうですね。俺は音楽の成績も2だったし、元々期待してなかったですよ(笑)。音楽が2で体育だけずっと5っていう一番イヤなパターン。最悪ですよ(笑)。
亀本 : 僕も割とそうでしたね。音楽会とかでリコーダーか鍵盤ハーモニカのどちらかをやらなくちゃいけなかったんだけど、あれが苦手で。
古市 : リコーダーやった? 俺、あれできなくてさぁ(笑)。運指ができなくて。
亀本 : でもギターやった後だと動かしやすくなってますよ。僕、この前100円ショップで売ってるおもちゃのリコーダー押さえたんですけど、なんかうまくなってましたね。
古市 : 口はダメでしょ?
亀本 : 吹く方はダメでしたね(笑)。でも小指とかが言うこと聞くんですよ。昔より。
古市 : 俺、最近トランペット習ってたんですよ。でも難しい。ギターの運指が生かされてる感じもまったくないし(笑)。あれ、楽器の中で一番難しいんじゃないかなと思ったくらい。
亀本 : 古市さんの映像を色々見てて思ったんですけど、僕、古市さんが使ってる(ギブソン ES-)335が大好きなんですよ。自分も持ちたいなってすごく思うんですけど、やっぱり身長が大きい人じゃないと似合わないなって思ってて。古市さん、身長めちゃくちゃ高いじゃないですか。
古市 : いやいや大丈夫だって。(ギブソン ES-)345とか弾きなよ。
亀本 : 345いいですよね〜! でもやっぱりボディがデカいから勇気出なくて。
古市 : まぁ細けりゃ大丈夫じゃない?(笑)
亀本 : 古市さん身長おいくつですか?
古市 : 187(cm)なんだけど、縮んだんだよね。
亀本 : 本当ですか?(笑)やっぱり大きいなと思いましたけど。
古市 : 縮みますよ僕の年になると。10年前に会ったら多分もっとデカかったと思います(笑)。亀本くんは今メインのギターは何を使ってるの?
亀本 : メインはレスポールです。ちょっと小さめなんで使いやすくて。
古市 : レスポール似合いそうだもんね。髪がふわっとした少女漫画みたいな人が持ってるのが一番格好良いんだよ。それは昔から思ってた。
亀本 : 古市さん、アンプはマーシャルですか?
古市 : アンプはマーシャル。
亀本 : やっぱりそうなんですね。すみません、楽器の話ばっかりしちゃって。
――全然大丈夫です(笑)。モノとしてのギターはやっぱりお好きなんですね。
亀本 : 逆にこういう話だと口数多くなっちゃうんです。“音楽以外のお話でも大丈夫”って言われた時にどうしようかと思いましたから(笑)。ギターは大好きですね。おもちゃというか、これカッコいいな! みたいな感覚で集めたくなっちゃう。
古市 : うらやましいな(笑)。こういう音を出したい! と思ったら僕も日本中探すくらいの熱意はあるんですけどね。
亀本 : 人にもよるけど、ギタリストってガジェット好きとか機械好きとか、多いかも知れないですね。
――ビザールギターが好きな人とかも多いですもんね。
古市 : うちのボーカル(加藤ヒサシ)がそうです。倉庫が<テスコ>だらけですもん。俺もコレクターズとは別に、テスコしか使っちゃいけないっていうバンドをやってるし。
亀本 : 曲の中盤くらいからチューニング心配になってきそうですね(笑)。
古市 : だから袖にリペアマンがずっといる。いつでも駆けつけられるように。
亀本 : やっぱりそうなりますよね(笑)。
古市 : チューニングもズレるし弾きにくい(笑)。335で楽にできるフレーズがテスコだと全然できないし。でもそこがおもしろいんですよ。弾きにくいから出るニュアンスとかもあるしね。
亀本 : ありますあります。ストラトだと上手そうに弾いちゃうとか、よくありますね。弾きやすさも違うし、持ってる時の気分も違うから。
古市 : 楽器って弾かされるからね。結構。
亀本 : すごくわかります。出た音に自分が反応しちゃう感じですよね。335とかだと下がしっかり出てるから、そういう演奏になるし、ストラトとか持つと、音の立ち上がりがすごく早いから和音を弾いて歪んでも分離が良かったりすると気持ちよくて。そういう演奏ばっかりしちゃったりとか。
――失礼な言い方ですけど、亀本さんはちょっとオタク気質なのかも知れませんね。
亀本 : そうだと思いますよ。単純に凝り性だし、趣味が好きだし。
古市 : その方がギタリストには向いてると思う。俺もオタクだし。
亀本 : ギター以外でもですか?
古市 : むしろギター以外の方が凝っちゃう(笑)。一時期はジーパンに関してもスペックとかを徹底的に調べて、博士みたいになってたし。街を歩いてる人のジーパンが何年製かすぐわかったり。一度ハマるとしばらく続くんですよね。バイクとかもそうでした。
――古市さんの世代はやっぱりロックとそういうものってセットだったんですね。
古市 : というか、エレキギター自体が不良のものだったんですよ。俺、中一でエレキギターを買った時に職員室に呼ばれたもん。バイクよりギターの方が不良だった。
亀本 : それフォークギターだったらOKなんですか?
古市 : うん。エレキって名前がついてちゃダメなの。シンナーかエレキかっていうぐらい(笑)。これ本当の話だよ。東京の豊島区のド真ん中だよ?(笑)。
――亀本さんはロックを不良と結びつける感覚はなかったですか?
亀本 : 本当にないですね。なんていうか、僕らもよく言われるんですよ。写真だけ見て「タバコいっぱい吸ってそう」とか。「どうもよろしくお願いします!」とか言うような人じゃないと勝手に思われてて。
古市 : それでいいんだよ。不良っぽくやる必要なんてないんだし。
亀本 : それでショボいと思われるならそれでいいやって思っちゃって。
古市 : 大人だなぁ(笑)。まぁ時代もあると思うんだけどね。たとえば対バンでも、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)とやるとしたら「お前ら、明日スカパラとだから、ネクタイあの色な」とかって打合せしといたり。楽屋でもバチバチだったもん(笑)。
亀本 : 僕らはそういう経験がまったくないんですよね(笑)。
古市 : ライブハウスなんて対バンの何かをかっぱらってこなきゃ気が済まなかったもんね。向こうもそうだし。“絶対あのエフェクターパクって帰ってやる”とか思ってたと思うよ(笑)。そういう時代だったんですよ。
亀本 : (笑)。でも自分がいいと思うものについては最高だねって言うし、そうじゃないものにはそっぽ向きたいって感覚はありますけどね。
古市 : それでいいじゃない。ナチュラルで。昔でいうとミッシェル・ガン・エレファントくらいまでの時代はテレビに出たらロックじゃねぇ!とかいう空気もあったでしょ。でも、俺はその頃からそんなこと全然思ってなくて。テレビ出てどんどん顔広めた方がいいよって俺が言ってたくらい。
ギタリストとしてのスタイル、そしてこれから。SHARE
Written by