亀本 : 僕らはやっぱりロックバンドはテレビに出ないもんだっていうので育ってたんで、じゃあ僕らは出ようってなった世代かも知れません。よくウチのボーカルが言うんです。「カッコイイことをやってるなら出ればいいじゃん」って。せっかくカッコイイことやってるなら、見てもらった方が当然いいですよね。
古市 : そりゃそうだよね。ものを作ってるんだからさ、一人でも多くの人に聴いてもらった方がいいよ。俺は人に“聴かせる”ことと“みせる”という感覚は昔から強かったです。見られてナンボの仕事だし、それを選んでるわけだから。そういう人たちをカッコいいな思って見ていたし、俺もそう思わせたかった。
亀本 : 僕らが高校生の頃に流行ってたバンドって、服装にしてもあまり衣装っぽくないというか。Tシャツにジーパンとかの人が多かったんです。で、レミさんも「そんなキラキラした衣装じゃなくて、Tシャツとかジーパンでいいじゃん」って言ってて。でも実際バンドを始めると、あらためてカッコイイ衣装が着たいと思うようになったんですよ。自分が普段聴いてる人って革ジャン着てるし、ジャケット着てるし、自分もそういう格好したいなって。元々私服とかもあんまり興味なくて、お金があったらおもちゃとかに使っちゃってたタイプの人間なんですけど。
――今日はローリングストーンズのTシャツなんですね。それは古市さんとの対談を意識して選んだんですか?
亀本 : そうなんです。本当は古市さんが<tangtang>と作ってる“BLUES”っていうTシャツを普段からよく着てるんですけど、今日着てきて古市さんとカブっちゃったら画的にマズいからやめとこう、って。だけど、ちょっとそれっぽくしたいと思ってストーンズの中から選んできました。
古市 : 俺も今日ストーンズ着てくるとこだったよ(笑)。
亀本 : (笑)。僕、そもそも服をそんなに持ってないんで、そこまで数は多くないんですけど、バンドTは好きなんです。わかりやすいじゃないですか。“この人これが好きなんだ”って。そう言いたいし、それで仲良くなれたら儲けもんだなって。
古市 : 好きでもないバンドのTシャツは着ないの?
亀本 : 着ないですね。
古市 : 俺、ぜんぜん構わず着ちゃうんだよなぁ(笑)。飲み屋で飲んでて、外人とかが「お前このバンド好きなのか!」って話しかけてくるんだけど、「全然」ってこたえてる(笑)。
亀本 : 僕はそうなった時に盛り上がりたいです(笑)。
古市 : 俺はもともとTシャツで自己主張をしようっていう発想がないからね。今日は晴れてるから白にしようっていうくらい。
亀本 : 僕もそのくらいしかこだわりがないですけどね。
古市 : そうなんだ。ポール・ウェラーが、Tシャツとジーパンでステージに立ってた時期があるんだけど、ステージ上ではその格好だけど私服はスーツなのよ。だからポール・ウェラーはその時そういう音楽を嗜好してたんだろうね。ニール・ヤングとか、その辺を。あれは衣装だったんだと思うし、それもこだわりだよね。
――ライブと言えば古市さんは30周年の武道館ライブを終えたばかりですけど、節目ということもあって、かなり盛り上がっていましたしね。
古市 : 盛り上がりましたね。本番前に袖にいたんだけど、武道館をやったことある人たちが「歓声が楽屋まで聞こえるよ」って話していて、俺は「本当かよ?」って思ってたんだけど、すごいのね。フェスなんかでも同じような感覚はいっぱいあるけど、ワンマンのあの歓声はやっぱり違うね。フェスも盛り上がるけど、熱さが違うというか。自分たちだけを見に来た人の強さというか。
亀本 : 僕らは正直、武道館を目標にして、とかって別になかったんですけど、今のお話を聞いてたらやってみたくなりますよね(笑)。僕も大きいところ大好きですし。
――グリムスパンキーではワンマンの野音が近づいてますよね。
亀本 : そうなんですよ。古市さん、野音いっぱいやられてます?
古市 : 結構やってますよ。野音はなかなか歓声聞こえないんだよ。上に抜けちゃうからさ。何月にやるの?
亀本 : 6月です。
古市 : 晴れたら一番気持ちいい時期だね。最高だと思うよ。
亀本 : なんかすごい雨降りそうですよね。梅雨だし(笑)。でもやっぱりワンマンはいいですよね。よくうちのボーカルがインタビューの時に言うんですけど、お客さんが1人とか、多くて10人のステージとかもやってきたから、いまだに「お客さん、今日5人来てくれるかな?」と思うって。僕もステージに上がったら会場がスカスカだったらどうしようっていつも不安で、そういう感覚がぬぐいきれないんです。
古市 : 30年経ってもぬぐいきれないよ(笑)。
亀本 : (笑)。だからステージに出た時にお客さんがいっぱいいるうれしさは、いつもすごく感じます。
古市 : 30年経っても夢見るもんね。アンコール前に何かトラブって、機材直してる内にお客さんがどんどん帰ってっちゃうとか。ライブ前って緊張する?
亀本 : ライブで失敗したらどうしようっていう不安とかプレッシャーはあんまりないですね。僕、サッカーをやってたんですけど、サッカーって試合前、相手がどう動くかがわからないからすごく緊張するんですよ。でもライブは誰も邪魔してこないから、自分が思い通りのパフォーマンスができれば成功するじゃないですか。
古市 : 僕もしばらく緊張したことがなくてね。もう10年以上もそうだなあ。だから最近は緊張したらどうしようって緊張してる(笑)。でもこの前の武道館でやったツアーファイナルは本番前にみんなでシャンパン開けて、楽しんでやれましたよ。
亀本 : そう言えば僕も昨日、変な夢を見ちゃって。なぜか僕がソロライブをするっていう夢で、パソコンにオケを仕込んで僕はギターを一人で弾きまくるっていうライブだったんですけど、持ってきたのがデータが入ってない方のMacBookなのに本番10分前くらいに気づいて。どうしよう、ヤバイ!ってとこで目が覚めました。起きたら汗だくでしたね。何を緊張してたのかわからないんですけど。もしかしたら、今日の対談が近かったからなのかもしれません(笑)。
――ライブよりも緊張したんですね(笑)。どうでしたか?実際にお会いしてみて。
亀本 : 自分もこれから音楽を続けていって、こんな風になれたらいいなっていう、ある種カッコいいギタリストのお手本みたいな人とお話できたので楽しかったです。緊張もしましたけどね、変な夢を見るくらい(笑)。
古市 : 僕はもともと年齢はあんまり気にしないんだけど、息子のようなジェネレーションの人なのに思った以上に近くに感じたね。ギタリストとしても似てるのかなって。実際好きで僕も聴いてるし、今日は会えてよかったですね。あ、息子にサインもらってかなきゃ! 良いですか?(笑)
亀本 : もちろんです(笑)。ありがとうございます!
((プロフィール))
古市コータロー
1964年生まれ。10代前半でパンクロックに出会い、高校中退後に東京で加藤ひさし率いるザ・コレクターズに加入。自身が影響を受けたロックの流れを汲んだ音楽性でその存在感を知らしめる。以降はバンドと並行してソロでも活動し、楽器をテスコに限定したエレキバンド、コータロー&ザ・ビザールメンでも新たな一面を覗かせる。ザ・コレクターズでは先ごろ、結成30周年を記念した武道館でのライブを終えたばかり。
古市コータローオフィシャルブログ Brilliant Days
古市コータローTwitter
亀本寛貴
1990年生まれ。サッカーに明け暮れていた高校時代にギターを始め、過去のロッククラシックやギタリスト達を掘り下げるようになる。その後、在学中に、同じ高校の後輩だった松尾レミらが結成したグリムスパンキーに加入。その後メンバーの脱退などを経て、現在のユニット形式に落ち着く。大型フェスへの参加や各地でのライブなどを精力的に行い、今年6月には日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブの開催を控えている。
GLIM SPANKY オフィシャルWebサイト
亀本寛貴Twitter
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