暴風に耐え忍ぶ夜を超え、僕らのフジロック戦記も佳境に
The Avalanchesの至高のDJ Setを終え、多幸感に満ち足りてテントへ帰った3日目の朝5時過ぎ。まだ雨風は強めです。強風に耐えきれず飛ばされたテントの残骸を横目に、どうにか我が家へたどり着きました。足腰はガタガタ。体の調子も優れず、祈るような気持ちで寝床へ…。苗場の偉い狐様、どうか太陽に力を…。どうしてもCHVRCHESが観たいのです。そうして気絶するように夢の中へ。
若干不安定ではありましたが、3日目は概ね快適な気候でした。待ってろ、CHVRCHES。体のコンディションも戻り、最終日はまずKing Gnuのライブから。
アーティストの成長が見えるフジロック
相変わらず、クールかつエッジーかつセクシーな成分で構成されているKing Gnu。近年破竹の勢いで活躍している彼らですが、この日は特に素晴らしかったです。『Flash!!!』でいきなりアクセルを踏み倒し、新曲の『Prayer X』をかまし、『サマーレイン・ダイバー』で締める。『サマーレイン~』は個人的に本当にフジで聴くのを心待ちにしていたし、思った通り最高でした。
ところどころシューゲイザー的なアプローチを入れてくるのですが、これがサビのイノセントなコーラスと絶妙に相性が良く、瞬く間に涙を誘われます。次に彼らがフジロックへ帰ってくるときは違うステージかもしれないですね。
出演するステージが変わる――。フジロックではアーティストの成長が可視化されております。例えばKing Gnuは去年、新人アーティストの登竜門ステージ「ROOKIE A GO-GO」に出ておりましたが、今年の舞台はキャパシティ5000人を誇るレッドマーキー。メインステージのひとつです。彼らに限らず、フジロック内で成長を遂げるアーティストは多く、自分が推しているバンドやシンガーがステップアップしてゆく様は感涙ものです。サカナクションもSuchmosもGLIM SPANKYもOLEDICKFOGGYもD.A.N.も、みんなフジロックでステップアップしています。
つまりフジロック主催のSmashも、台風ごと苗場を愛してしまうフジロッカーたちも、みんな心から音楽が好きなんですね。音楽フェスだから当然と思われるかもしれませんが、シーンがこれだけ細分化した今、特定のアーティストを追い続けるのは以前より難しくなりました。更新スピードが速いと情報量もそれだけ多くなりますから、その中で自分が本当に求めているものを探すのは大変です。それでも、フジロッカーたちは音楽を求め、愛している。愛し続けている。この事実に、毎回泣きそうになるのです。大げさだけれど、本当に救われています。なんだか、「音楽が好きでいいんだよ」と言われているようで。
過去最高到達点。もはや涙でローレンの顔が見えなかった、CHVRCHES @ WHITE STAGE
で、個人的な話をさせてもらえば、やはり筆者にもそういうアーティストはおります。それが前編から散々名前を出している、グラスゴーが生んだ“ロックバンド”CHVRCHES(チャーチズ)。普段は“シンセポップ”や“インディー・ポップ”にカテゴライズされることが多いのですが、フジロックでの彼らは紛れもなくロックバンドでした。
「ヴォーカルのローレンが可愛い」というのは入り口に過ぎません。…いやまぁ実際めっちゃ可愛いんですけれども。音楽のスタイルを簡単に説明すると、Depeche ModeやNew Orderなど、UKのエレクトロニック・ミュージックの正当継承者です。スコットランドの先輩格、Cocteau Twinsの影響も色濃い。つまり、とっても80’sの香りを漂わせるバンドなのです。2018年からは基本メンバー3人に加え、ツアーミュージシャンとしてドラマーのジョニー・スコットが参加しております。
CHVRCHES – 『Graffiti』
このドラマーが本当によくハマっておりました。これまでのCHVRCHESを全体的にスケールアップさせた最新作『Love Is Dead』。本作に合わせてバンドのパフォーマンスにも厚みが出てきた印象があります。2012年にデビューシングル『The Mother We Share』をリリースして以降、彼らが立つステージの規模が順調に大きくなってゆきました。2016年の時点でコーチェラでは準ヘッドライナークラスの扱いを受けております。そして今年のフジロックで彼らに割り当てられたのは、ホワイトステージ(キャパシティ1万人強)の大トリ。日本の公演では、彼ら史上最大の規模です。
2013年のサマーソニックで初来日して以降、筆者は何度もCHVRCHESのライブを観ていますが、間違いなく今回がベスト。フジロックの素晴らしいサウンドシステムも相まってシンプルに出音が良かったし、何より彼ら自身が1万人を相手にしてもまったく違和感のない実力を備えておりました。ローレンは以前にも増してよく動くし、マーティン(Key,Vo)も相変わらずよく動くし、イアン(Key,B,Vo)はやっぱりシャイでした(Twitterの更新率も低め)。先ほど書いたようにドラムのスコットも良い仕事をしています。もうひとつ強調してきたいのは、オーディエンスもかなり盛り上がっていたこと。真面目な話、海外のフェスより熱量が高かったのではと思います。サイリウムを振る人までいました。とりあえずこちらにフジロックのセトリを再現したプレイリスト(by Hostess Entertainment)を貼りますね。
CHVRCHESの新たなキラーチューン、『Forever』には涙腺をやられる始末。みんな大好き、ちょいダサのシンセサイザーが耳を引きます。これは泣きますな。この曲のMVがない理由を知りたい。いや、今からでも遅くはないぞ! どなたかお願いしますよ! 必殺技と言えば『Clearest Blue』ですが、こちらもベース音とキックが強調されていて、その音圧でまた涙腺をやられました。もう風景がすっかり歪んでしまって、ローレンの美しい顔もよく見えない。唯一注文があるとすれば、新譜の『Love Is Dead』の曲をもっと聴きたかったことぐらいです。これは海外公演も同じで、なぜかこの最新作からセットリストに組み込まれるのは13曲中6曲程度。『Graves』や『Heaven/Hell』などはライブにも映えると思うんですがねぇ…。『Love Is Dead』のリンクも貼っときますので、こちらもぜひ。
『Wonderland』をライブで聴いたら、多分わたくし泣きすぎて消滅すると思います。
つい先日、CHVRCHESが2019年の2月26日からジャパンツアーを開催することが発表されましたので、もしかしたらこちらで本格的に『Love Is Dead』の曲がお披露目されるのかもしれませんね! 絶対行く!
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