…とまぁ、アジカンを聴いて心がエモ散らかしてしまったわけですが、アドレナリンで乗り切ることが出来ないぐらい雨が強くなってきました。American Footballを楽しみにホワイトを目指して行軍していたのですけども、「これはちょっとカメラがやばいかもしれない」、「雨具が無効化されて風邪を引きそう」等々、懸念すべきことが様々出てきてひとまずテントへ避難。
やり過ごすためにテントへ漂着したのですが、一向に雨が止みません。ずっと雨のターン。遠くのほうからマーティン・ギャリックスがオーディエンスを煽る声が聞こえます…。「バケツをひっくり返したような雨」とよく言いますが、この手の雨は経験則としてすぐ止むイメージがありますよね。あれが延々続いたと思っていただけると伝わりやすいかもしれません。テントごとシャワーを浴びている気分でした。しかし“苗場にいるのにAmerican Footballを観られない”という状況も耐え難いので、YouTubeの配信でAmerican Footballの中継を観るという荒業にもチャレンジ。
配信は素晴らしいですが、やはり現場が最高ですね。「Never Meant」を最後に演奏したそうですが、豪雨の中で聴くのもオツだったろうな…。
その後Siaが始まっても雨の勢いは収まらず、まごまごしている間に時間だけが過ぎてゆきます。
「ちょっと僕、そろそろ行きますわ」。テントに同泊するカメラマン(まぁ彼のテントに居候しているのは自分なんですがね)にそう告げ、外へ出る準備をしました。豪雨の中、勇ましく入口のチャックを引っ張るわたし。もう気分は「アルマゲドン」のブルース・ウィリスか、はたまた「ザ・ロック」のショーン・コネリーか。Death Cab For Cutieのいるホワイトを目指し、その帰りにレッドマーキーに寄って朝まで踊ろう! そう意気込んで外へ…!
結果から申し上げると、テントサイト(レッドマーキーの裏)からホワイトへの移動は不可能でした。メロスでも無理。中にはほとんど水没してしまったテントも散見されまして、本当にディザスタームービーの中にいるような気分に…。グリーンからホワイトへ続く道が川になっており、充実した装備と勇敢な心がないと身の危険を感じるほどでした。そしてグリーンにとどまるのも難しいと判断し、避難所と化したレッドマーキーでジョナス・ブルーを待つことにしました。ホットワインとタイラーメンで体を温め、コンディションを整えます。
Jonas Blue – 「Perfect Strangers ft. JP Cooper」
毎年書いていることなのですが、フジロックはセレンディピティ的な設計が本当に上手いんですね。マーティン・ギャリックスとファン層が近いジョナス・ブルーでレッドマーキーに誘導し、次に出てくるバート・B・モアとアンナ・ルノーのベースハウス勢に繋ぐ。EDMからテックハウスまでの流れが非常に鮮やか。で、最後に出てくるのが日本人DJのokadadaなわけじゃないですか。完璧ですよ。個人的に、時間帯で言えば3日間の中で最も楽しかったのは2日目の夜でした。
実際、ジョナス・ブルーが終わった後も帰らずに残るEDMヘッズもいるわけですよ。しかも、ジョナスは元々アングラなハウスの出身(Defected Recordsから台頭)ですから、後に続く3人とも相性がすこぶる良いのです。すなわち、ストイックなダンスミュージックファンにもリーチ可能。まさしく全方位外交。ラインナップに隙がねぇ…!
Bart B More – 「Hamsterdam」
Anna Lunoe – 「303」
ベースハウス勢の2人のDJがまたとんでもなく上手い。特にバート・B・モア。ピークと引き際を知っているので、我々のテンションは彼によって自在に操られておりました。JOYRYDEのトラックまで使ってくるアゲっぷり。バート・B・モアとアンナ・ルノーに共通していたのは、「Night Bass」の存在。こちらLAのプロデューサーAC Slaterが主宰するレーベルなんですけれども、その名の通りベースミュージック系のサウンドを中心にリリースしています。ここから出ている音源を2人ともかけていました。一口にベースハウス、テックハウスと言っても様々ありますが、この日の夜にクリティカルなポイントを見た気がします。
で、待ちに待ったokadadaの登場。明け方4時!外ではまだ雨が降り続けている!
くー(泣)、豪雨の中特攻してきてよかった…。フジロックで気合いが入っていたのか、「okadada総集編」みたいな内容のDJでした。「Relight My Fire (Dimitri From Paris remix)」や「Use Me Again (Carl Craig Rework)」なんかはもはや半ば彼の曲だと思ってるフシがあるんですけども、漏れなく2つともかかったわけです。前の2人が超絶だったので、気圧される心配が無くはなかったのですが、杞憂も杞憂でしたね。甚だしい老婆心。フジロックだろうが、大阪の小箱だろうが、渋谷の大箱だろうがokadadaはokadadaなのである! 最後は「帰れない二人」(井上陽水)で〆。
外を見るとすっかり明るくなっていて、雨も上がってました。
(Day3に続く)
Photography_REIJI YAMASAKI
Text_Yuki Kawasaki
Edit_ADO ISHINO(E inc.)
■ FUJI ROCK FESTIVAL ’19
日時:7月26日(金) 27日(土) 28日(日)、前夜祭は25日(木)
主催:SMASH Corporation
■ FUJI ROCK FESTIVAL ’20
2019年8月21日(金)~23日(日)
<フジロック公式サイト>
https://www.fujirockfestival.com/
SHARE
Written by