すっかり秋ですね。最近は「秋がなくなった」とか、「夏が終わればすぐ冬」なんて揶揄されることもありますが、今年は久しぶりに「秋がある」と思います。心地よい温度感と、色彩豊かな風景。
…なんだか、遠方に住む祖父に宛てた手紙のような文章を書いてしまいました。この記事では、そんな秋を彩る女性シンガーソングライターを特集します。
かつて「シンガーソングライター」と言えばギター一本の弾き語りのイメージがありましたが、今やその在り方は様々。宅録というスタイルを採用するアーティストもいるし、ジャンルはフォークからドリーム・ポップまで、実にバラエティに富んでいます。今回「女性」という括りを設けた理由は単純で、そういった音を鳴らしているのが今は往々にして女性シンガーソングライターだからです。
優しさと、繊細さと、どこか暗さを併せ持つおすすめの7人をピックアップしました。どうぞよろしくお願いします。
1. Fazerdaze
10月11日・12日に初来日公演が決定している、 Fazerdazeことアメリア・マーレイ。ニュージーランドを拠点に活動する彼女は、今年の5月にデビューアルバム『Morningside』をリリースしました。するとコレが各メディアで軒並み高評価を獲得。海を越え、イギリスのMOJOやアメリカのPitchforkが彼女の音楽を称賛しました。
Fazerdaze – 『Bedroom Talks』
一言で言えば、「ベッドルームのギター・ポップ」でしょうか。アズテック・カメラのようなギターサウンドに、浮遊感のあるアメリアのヴォーカル。90´sオルタナばりにアンニュイなところも印象的です。本国では既にアップカミングなアーティストの最右翼として期待されているようで、アンノウン・モータル・オーケストラやエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイのツアーアクトにも抜擢されています。
アメリアも所属する『フライング・ナン・レコーズ』を中心としたニュージーランドのインディーシーンが、今大変面白い。
2. Gordi
オーストラリアのシンガーソングライター、ゴーディことソフィー・ペイテン。彼女は人口わずか2800人の地方都市、カノウィンドラで生まれ育ちました。その後音楽へ傾倒し、ボン・イヴェール擁するアメリカの名門レーベル『Jagjaguwar』と契約します。素朴かつ知性的なサウンドスケープは、「Jagjagwar印」と言ってよいかもしれません。(ちなみにボン・イヴェールのフロントマン、ジャスティン・ヴァーノンもウィスコンシン州のオークレアという結構な田舎町で生まれ育っています)
Gordi – 『Bitter End』
ゴーディは昨年ごろから本格的に注目され始め、アメリカのStereogumでは「40 best new bands of 2016」に選出されました。アイスランドのシンガーソングライター、アウスゲイルのオーストラリアツアーではサポートアクトとして帯同しています。この組み合わせ、すごくしっくり来ますね。
今年8月にデビューアルバムの『Reservoir』がリリースされ、新人ながらオーストラリアのチャートで20位を記録。
3. Maika Loubté
Underworldが音楽人生の始まりだったようなリスナーは漏れなくハマるのではと。日仏ハーフの宅録系シンガーソングライター、マイカ・ルブテです。ちょっぴりエキセントリックで、ときに暴力的で、どうしようもなく美しい。まさしく、映画の『トレインスポッティング』のような音楽ですね。閉塞感が漂う今の時代に、彼女の歌声は強く響く。
Maika Loubté – 『SKYDIVER』
90年代に栄華を極めた「テクノ四天王(Underworld、The Chemical Brothers、The Prodigy、Orbital)」。このようなスターシステムを敷くことの良し悪しは置いといて、実はこの4組、ここ2年のうちに全員来日しています。しかもそれぞれがイベントの重要なアクトとして出演していますから、かつてのシーンが復権していることは間違いありません。そんな中、彗星のごとく現れたマイカ・ルブテ。機は熟しました。
余談ですが、「テクノ四天王」と一括りにされた彼ら、よく聴くと全然違う音楽ですのでご留意を。
4. mei ehara
安定と信頼のカクバリズムより。音楽活動のほかに文芸誌『園』を主宰する一面も持つ、シンガーソングライターのmei ehara。これまでに3枚のフルアルバムをリリースしていますが、ついに同レーベルから今年11月にアルバム『Sway』で本格デビューします。プロデュースはキセルの辻村豪文が担当しており、全貌が明らかになっていない今の時点で既に名盤の予感があります。
mei ehara – 『戻らない short ver』
以前リリースされたアルバムはBandcampでフル視聴できますから、ぜひ聴いてみて下さい。『私生活』は特に素晴らしく、筆者はLPで持っております。ピュアなアコースティック・サウンドなのですが、どこか陰があるように思いますね。
「これは良い音で聴かねば!」という使命感に駆られ、レコ屋で衝動買いしたのはもう5年ぐらい前のこと。今はどこに行っても置いていないようで、今宵も優越感に浸りながら針を落とします。
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