夜明け前の素敵な出会い。
インディーズバンドを観にライブハウスへ行くことは、大きなフェスに出向くのとまた違った楽しみがある。ヘッドライナー級のアーティストともなると、検索エンジンに名前一つ打ち込むだけで膨大な量の情報が出てくるけれど、インディーズはなかなかそうはいかない。予習しようにも限界がある。ライブを観て初めて、「このバンドはこんな凄かったのか!」と気付くことも度々あるわけです。それが堪らなく楽しい。音楽に限らないけれど、すごく良いモノと出会ったときの感動って、誰かに伝えたくなりますよね。それがまだあまり知られていないモノなら尚更。それはつまり、夜明け前の出会い。『exPoP!!!!!』は、いつもそんな出会いを僕たちに届けてくれる。
95回目を迎える今回は、Sentimental boys、バレーボウイズ、踊る!ディスコ室町、DATS、PAELLASという、3月の終わりにピッタリなラインナップで僕らを楽しませてくれた。
あの日の風景が目の前に。Sentimental boysが見せる僕らの町。
トップバッターのSentimental boysは、長野県出身の4人組ロックバンド。王道のJ-Rockに、程よくシューゲイザーを塗したようなサウンドが印象的だ。『metro.』に始まった彼らのステージは、一貫して映画的。そこで紡がれるのは「僕らの物語」である。歌詞の主語は「僕」だけれど、そこに自分を重ねずにはいられない。様々な思いを胸に抱えて東京へ出てきたあの日のことを、抗いようもなく思い出してしまう。彼らが紡ぐ物語には普遍性があって、長野だろうと、茨城だろうと、北海道だろうと関係なく、思春期を地方で過ごした人は押し並べて「あの日のあの場所」を見出してしまうのだ。
Sentimental boys – 『青春が過ぎてゆく』
4月から新生活が始まる人、会場内にどれぐらい居たんだろう。新しい環境や人間関係が不安で仕方ないとき、彼らの音楽は胸に刺さる。ギターの残響音に身を委ね、嫌いだったあの町に立ち返ってみる。『青春が過ぎてゆく』が終わる頃、ほんのちょっと鼻の奥がツンとした筆者でした。
思春期に居残り続けるパンキッシュ!今を突っ走るバレーボウイズの激情。
続いては、京都市左京区で結成されたバレーボウイズ。予習はしてきたつもりだけれど、全くそれが役に立たなかった。誤解を恐れずに言えば、彼らはもっと優等生なバンドかと思っていたのです。あけすけにコミックバンド然としたアーティストって、どうしても型にはまってしまうというか、狙い過ぎている印象を受けませんか?正直な話、僕はバレーボウイズもその類だと思っていた。
バレーボウイズ – 『卒業』
いやはや、「型にはまる」なんてとんでもない。初期衝動の塊のようなエネルギーには、暴力性すら感じてしまった。これはYouTubeでは分からない。多分彼らは、青春とか思春期をコンセプトだと思っていなくて、至って真面目にそこに居残り続けているのだろう。根っからのピーターパン。渋々「大人」を演じる僕らには、どうしたって彼らがヒーローに見えてしまう。何かに直接反抗するわけではないけれど、研ぎ澄まされた刃物のような反骨心を感じさせる。これこそが日本流のパンクだと思います。
漆黒のグルーヴが最高にイカす!圧倒的パーティー集団、踊る!ディスコ室町。
次に登場したのは、バレーボウイズと同じく京都出身の6人組ファンクバンド、踊る!ディスコ室町。同じ京都でも、こちらのバンドの武器は漆黒のグルーヴである。まさしくジェームス・ブラウン(以下JB)直系。かつてのJBと同様、Vo.のミキクワカドがとにかくコントロールフリークなのだ。一挙手一投足でサウンドを操ってゆく。バンドのメンバーもそれぞれ熟練したテクニックを持っているのだが、それが霞むほどのカリスマ性。一曲目の『嘘800』からアクセルを踏み倒していた。
踊る!ディスコ室町 – 『嘘800』
繰り返しになるけれども、バンドの技術力が本当に高い。ミキクワカドのカリスマぶりと喧嘩しないのは、彼らの実力による部分が大きいだろう。それは『ODORUYO~NI』に顕著で、全パートの演奏者が抜群のテクニックを誇示していた。MCの上手さも含めて、とことんまでにオーディエンスを躍らせ、ワクワクさせるバンドである。あえてステレオタイプな言い方をすれば、やはり関西人。彼らにとってアウェイだったはずの東京を、すっかりホームに変えて去って行った。
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