6月23日より、六本木の東京ミッドタウン内にある21_21 DESIGN SIGHTで「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」が開催されます。トップ画像にもある通り、途方もないことに挑戦するアーティストにフォーカスした企画展です。
「実現不可能性99%」や「重なる1°の奇跡」など、タイトルだけで気が遠くなりそうですね。
それはまるで、ホドロフスキーの『DUNE』のような
ここで少し本展から離れ、とある映画の話をさせてください。
「映画史上最も有名な未完の大作」と呼ばれた、鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーによる『DUNE』。1975年に同氏と映画プロデューサーのミシェル・セドゥーが企画を立ち上げたのですが、撮影に入る前に頓挫した作品です。ことの顛末を描いたドキュメンタリーが有名ですね。
映画『ホドロフスキーのDUNE』予告編
原作からして「映画化不可能」と言われた小説(のちにデヴィッド・リンチらによって映像化されますが)、フランク・ハーバートの『DUNE』です。ホドロフスキー版には桁違いの予算が注ぎ込まれ、豪華なスタッフと出演者が本作のために集められました。ミック・ジャガーやサルバドール・ダリ、ピンク・フロイドらがこの映画に名をつらねるはずだったのです。そしてさらに衝撃的なのは、その尺。なんと12時間の超大作だったのだとか。まさに「そこまでやるか」ですよね。
けれども彼らは本気だった。ドキュメンタリーでも当時の様子が描かれていますが、ホドロフスキーを中心とした制作者たちは、尋常ならざる熱量を持って作品を世に送り出そうとしたのです。頓挫こそしましたが、その思いは時空を超え、のちの映画界に多大な影響を与えることになります。スター・ウォーズも、マトリックスも、ブレードランナーも、みんなホドロフスキー版の『DUNE』からインスパイアされているのです。
途方もない作品というのは、それほどに人の心を動かします。このたび開催される、「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」にも、個人的には同じ匂いを感じます。作品を鑑賞する僕らにも夢を見せてくれる。ここからは、同企画展で期間中展示される作品をいくつかご紹介します。
時間的・物理的スケールの大きい、クリストとジャン=クロードのプロジェクト
2016年6月18日から7月3日までの16日間、イタリアのイセオ湖にて実行された『The Floating Piers』の様子。水面に揺らめく黄色い布が街と島を繋ぐという、一大プロジェクトです。いや、クリストとジャンヌ=クロードにとってはこれが常であります。彼らのインスタレーションはいつも壮大。
こちらは2005年のニューヨーク・セントラルパークにて展開された『The Gates』の様子。この企画は、セントラルパークの全域にサフラン色のゲートを出現させるというもの。2005年2月12日の時点で、実に7503個のゲートが設置されていました。
クリストは言います。「我々のプロジェクトは全ての人に開かれている。チケットもいらないし、予約も必要ない。オーナーだっていないんだ」
「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」では、彼らの初期〜現在進行中の作品が、ドローイングやコラージュ、地図やドキュメント写真で展示される予定です。
ジョルジュ・ルースによるビジュアル・マジック
この写真、どう見えますか?筆者は錯視だと分かっていても、部屋の中にまた別の空間が広がっているようにしか見えません。一つの部屋に、錯視を利用した絵が描かれているだけなのです。「だけ」というのは語弊がありますね。そこには僕らが想像もつかないような、緻密な計算があるに違いありません。わずか1°が、作品を左右する世界。
Georges Rousse à la Conciergerie
9歳のクリスマスにコダック社のカメラ『ブローニー』をもらい、そこからジョルジュ・ルースの写真家としての人生が始まりました。自分のスタジオを持ってからは、建築写真に情熱を傾け、それが彼の今のアート作品の礎になっているようです。
1981年にフランスで展示会を開いて以来、今や世界中を回るアーティストになりました。
「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」では、21_21 DESIGN SIGHTの建築空間に合わせた新作のインスタレーションとともに、その写真作品を展示するほか、過去のプロジェクトのスケッチや映像などが紹介される予定です。なお、6月23日にはジョルジュ・ルース本人が登場するトークイベントが行われます。
その土地の風土を再解釈するアーティスト、ダニ・カラヴァン
文字どおり、その土地をインスタレーションにしてしまうアーティストです。彼の「そこまでやるか」なところは物理的なスケールよりも、その土地への理解度にあるような気がします。その土地の風土・文化を徹底的に理解してから再解釈する。こちら、1992年から1999年まで札幌芸術の森で展示された『Sapporo Way to the Hidden Garden』。
ダニ・カラヴァンはイスラエル出身のアーティストですが、彼のインスタレーションには強烈な既視感を覚えます。どこか全然知らない世界に迷い込んでしまったかのような、アンビバレンスさもともなって。その土地の文化に対する執着こそ、彼の最大の魅力だと思います。
「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」では、諸プロジェクトのスケッチ写真などのドキュメントを展示し、綿密なプロセスが可視化される予定です。
■『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展
会場: 21_21 DESIGN SIGHT
会期: 2017年6月23日(金)- 10月1日(日)
休館日: 火曜日
開館時間: 10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
入場料: 一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
<公式サイト>
http://www.2121designsight.jp/program/grand_projects/index.html
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