音楽ってパーソナルな文化だとおもうんです。表向きに好きって言ってる曲と、部屋や車内、イヤフォンでひとり聞いている曲は違ったりもするわけで。だから「え、意外。そんな曲が好きなんだ」って言われると、はにかんでしまうし、逆もまた然り。でも、はにかんだ顔っていいんですよね。そこから広がる音楽もある。「死にたい夜にかぎって」を読んだのなら、爪 切男さんによる選曲に、おもわずはにかんで……いや涙してしまうかも。
UNICORN『与える男』
言葉や態度やお金や常識や噓か本当なんてどうでもいい。ただ、愛する人を幸せにすることだけに必死になれる男でいたい。この曲を聴くといつもそう思います。
堀江美都子『あかるいサザエさん』
どんなことがあっても明るさを忘れないサザエさんは最高の女性です。幼い頃に母親に捨てられた私は、サザエさんが待つ楽しい家に帰りたかった。サザエさんのことを性的な目でしか見れない時期もありましたが、私にとっての理想の母親は永遠にサザエさんです。
ホフディラン『恋する年頃』
自分がジジイになった時、好きなババアにこの曲を歌ってあげたい。この曲を聴いて濡れるようなエロいババアと恋をしたい。可愛い女性はみんな長生きして欲しい。そうすれば、私も長生きしたくなるので。
スガシカオ『夜明けまえ』
中学生の時、悪いことをした罰で、親父に焼却炉の中に閉じ込められました。死を覚悟して、暗闇の中で人生最後の自慰をしました。その時の私の気持ちを完全に代弁してくれた曲です。これからも勝手にそう思い続けます。スガさん、ごめんなさい。
KAN『まゆみ』
当時、同棲中の彼女が心の病気で働けなくなり、私は生活の為にキツイ仕事をやらないといけなくなりました。迷惑をかけている自分を責め続ける彼女。二人でカラオケに行くたびに、私はこの曲を熱唱して彼女を勇気付けました。歌詞の中の「まゆみ」を彼女の名前の「アスカ」に替えて歌ってました。あんな恥ずかしいことはもう二度としないでしょうね。
くるり『東京』
浮気性の彼女が外国人と浮気した腹いせに行った渋谷のソープランド。その帰り道で口ずさんだ「東京」。中央線沿いの安いピンサロに行った帰りに立ち寄った釣り堀。釣り糸を垂らしながら口ずさんだ「東京」。個人的に、くるりの曲は風俗の帰りに聴くと心に刺さります。風俗帰りに合うってことは名曲の証拠なんです。
須賀響子『近道したい』
根本敬さんの名言である「でもやるんだよ」。私にとっての「でもやるんだよ」はこの歌でした。たまには近道をしたい。でもやるんだよ。走ることはできなくても、歩き続けよう。それが大人だから。でも、できれば隣には可愛い彼女を連れて一緒にダラダラ歩きたい。
阿部義晴『僕のゆくえ』
過去の恋人を忘れることなんてできるわけがない。忘れることができないなら全てを良い思い出にしたい。彼女達への感謝の気持ちをずっと持って生きていきたい。女性は本当にすばらしいものだから。そんな気持ちを再確認できる曲です。
BOaT『All』
六年間同棲した彼女が去った日の夜。死にたい夜にかぎって空にはたくさんの星空が輝いていた。眠れない夜を越えて朝がやってきた。眩しい朝日が差し込む部屋で聴いたのがこの曲でした。再生の曲です。
never young beach『明るい未来』
「死にたい夜にかぎって」を執筆中にずっと聴いていた曲です。自分の唾を売り歩いていた彼女、初体験の相手だった車椅子の彼女、私と関わってくれた女性達のことを本に書きながら、彼女達を思い、反省し、もう一度恋をしました。私と関わってくれた女性達と私に明るい未来が待っていますように。
PROFILE
爪 切男
車いすの女性との初体験、風俗嬢との束の間の恋、うつ病を患う女性との同棲生活など、これまでに出会ったさまざまな女性への“愛と苦悩”を綴った青春私小説『死にたい夜にかぎって』が発売中。「笑って泣ける!」と話題になり、発売即重版が決まった。
3月9日、「本屋B&B」のトークイベント「掟ポルシェ×爪切男『俺たちの!ヤバすぎ仕事列伝』」に出演します。
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