こんな世の中だからこそリリースした「DINDON」
――新曲の「DINDON」はどういうところから作った曲ですか。
くぅ : NEEは激しい音楽が多いし、歌詞では恋愛を歌った曲が多かったん
ですけど「DINDON」では僕が生きてきた中で感じたことを歌にしようと思いました。それで曲調ももうちょっとソフトなもので作れたらなという意識で制作しました。――<果てしなく世界はずっと 僕達に投げかける だけど正解なんて分からないまま>という歌詞など、正解や生きる意味を問うような歌詞が印象的です。
くぅ : 「誰かから教えられて育ったことが、本当に自分の正解であるのか?」という葛藤を、初めて歌詞にした曲です。最近の感染症の情勢だったり、戦争が起きたり、そんな心苦しい世の中をみていたら「これを出さなきゃ」って気持ちになって、今リリースすることに決めました。
――リリックは内省的ですけど、曲は華やかで明るいですよね。
くぅ : 僕は暗い歌詞だけど曲調が明るい音楽が好きで、たとえばRCサクセションもそれに近いものを感じます。読むと結構暗い内容だけど、怒りのように明るくしている曲がめちゃくちゃ好きですし、島崎智子さんというシンガーソングライターもそういう歌を歌っているんですよね。僕もNEEでそういう曲を出したいと思っているし、これまでは割とカオスな曲調が多かったので「NEEってこういう曲もできるんだ」って知ってもらうきっかけになればいいですね。
――メンバーの皆さんが、それぞれ演奏でこだわったところはありますか?
夕日 : 「DINDON」を聴いた時に激しいバラードみたいなイメージが浮かんだので、この曲ではコードだなと思いました。そこでコードを分解して1個のフレーズにすることを心がけたのと、もうひとつイントロのど頭のフレーズでは、昔の人が弾いているような意識で弾こうと思いました。
――というのは?
夕日 : ジョン・フルシアンテの凄く古いビデオをイメージしたり、ジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」の冒頭のフレーズからインスピレーションを受けました。「DINDON」の歌詞は愛情を歌ったような難しいテーマの曲ですし、派手なパンクみたいな曲になったらもったいないなと思って、ギターフレーズをつけていきました。
大樹 : 僕は最近ゴスペルミュージックのドラマーのフレーズをよくインスタで見ているので、落ちサビの前のキメがあるところで叩くタムの使い方には、その影響が出ているなと思います。ゴスペルミュージックは出音がやばいしリズム感も半端ないので、見ていて気持ちがいいし、自分も叩きたくなりますね。
――くぅさんは制作の時に楽器のパートにオーダーを出したりしますか?
くぅ : そうですね。今回で言えば、ベースのフレーズには色々言っていました。
夕日 : 特にイントロは時間かけてたよね。
かほ : うん。でも、忘れちゃった。
くぅ : え。嘘でしょ?(笑)
かほ : めっちゃ変えた記憶はある。
――(笑)。ちなみにイントロではどんな話をしていたんですか?
くぅ : 気持ちを込めて弾く感じというか、感情に任せて弾いてほしかったので、ただのコードを弾かないでほしいと伝えていました。2Aの後半でも、音楽理論的ではなく、曲の物語に沿うような演奏ができたらいいと思っていました。
――技術的なことより、楽曲の情景が大事だったと。
くぅ : そうですね。
かほ : それと1Aをウォーキングベースにしたいっていうのもあって、「DINDON」は「障害とパプリカ」以来のウォーキングベースを使った曲になっています。あと、私はライブではやっていないんですけど、最近レコーディングの時には指弾きもできるようになったんです。「DINDON」は“素材系の音楽”なので、指弾きの良さも出せたらいいなと思っていました。
――素材系の音楽?
かほ : なんて説明すればいいんだろう。……あるよね?
くぅ : うん、わかる。
夕日 : NEEの中だけ通じる言葉だね(笑)。
くぅ : 電子音ではなく。
夕日 : オーガニックな感じ?
かほ : そう!
夕日 : 今まではケミカルな感じだったけど、この曲はオーガニック。
かほ : だから「DINDON」ではギターのニュアンスもめっちゃ出てると思う。今までは音が多すぎて軽減されてたところがあったと思うんだけど、「DINDON」はシンプルな構成だからこそ楽器の音が目立つし、楽器だけでなくコーラスも減ってダブりがないので、声のニュアンスだけで感情がわかる曲になったと思います。
負けず嫌いでロマンのあるバンド「NEE」
――4月からはZepp Haneda公演を含むツアーが始まりますね。
くぅ : 僕は元々あんまりライブをすることに積極的ではなくて、どちらかと言うと、創作の方が楽しいという気持ちが強かったんです。でも、最近は使う機材を増やしたり、ライブのクオリティを追求していくことを楽しめるようになってきました。
かほ : 曲の終わりも、今まではどの曲も同じような締め方をしていたんですけど、PAさんから音源と同じようにした方がカッコいいって言われてからは繋ぎも考えるようになりました。どうしたら演奏がもっと良くなるのかを考えるのって、シンプルに楽しいんですよね。
くぅ : そうだよね。どうやって観てもらうのが一番いいんだろうとか、どんなライブをするのが自分自身も楽しめるんだろうってことを考えることが、このツアーに向けて凄く増えてきているので、それをいっぱい発揮できるライブにできたらいいですね。
――夕日さんはライブで何か意識していることはありますか?
夕日 : 人のライブを観ていて「このライブ伝説だわ」って思うようなライブってあるじゃないですか。それって何が伝説なのかって言ったら、やっぱりその時にしか起きないアドリブのソロがあったりするからだと思うんですよね。僕もそういう方向でライブしたいと思っていて、もっとソロを増やしたり演出に力を入れたり、色々実験していきたいです。
――「日本一のバンドになる」という話も含めて、ロマンがありますね。
くぅ : めちゃめちゃロマンあります。
――何が原動力になっていると思いますか?
かほ : 私は馬鹿にされるのが嫌いだからですね。もしライバルがいなくなったら、一気にやる気がなくなる気がします。
大樹 : それはわかるわ。
かほ : 「うぜえ!」みたいな気持ちあるよね。
くぅ : うぜえ!って気持ちが強ければ強いほど、いいライブができる。感情が音に出るよね。
夕日 : 何があった?(笑)
大樹 : でも、本当に舐められたらだめですよ。ヤンキーと同じですからね。突っ張ってなきゃだめ。
かほ : NEEはヤンキーバンドなのかな?(笑)
くぅ : ド隠キャだよ(笑)
――でも、それだけ曲に自信があるってことですよね。
くぅ : そうですね。自信を持ってないと、NEEの空気感が変わっちゃうから。自分は、常にNEEというバンドと音楽に自信を持っています。
「DINDON」
2022/03/30デジタルリリース
配信はこちら
https://nee.lnk.to/dindon
NEE
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