――GOMESSさんが面白いのは、いつも自分から始めていくことだと思います。そこに勇気や強さを感じます。
ひとに相談するときって、僕の中でなんですけど、「マイナスになりそうなものをゼロに戻すとき」なんですよ。「ゼロから上に行くとき」は必ず自分で生み出す力だと思っているんで。
――それに関連して、”オリジナリティ”についてどう思いますか。
中学生のときに書いた歌詞で、ずっと「ああ、変わらないな」って、聴くたびに安心する曲があって。世に出していない曲なんですけど。「普通のことは出来ないから、変であることを求めた。周りのやつはスキルを求めたが、俺はただスタンスを固めた」ってあって。
その歌詞が中3のときに書いた歌詞で。…みんなは上を目指そうとしたときに、必ず努力をするんですよ。例えば受験勉強だった場合、その努力っていうのを「勉強」みたいな、そういう感覚でみんな努力してて。僕はなにを努力すべきかっていうと、「インプット」なんです。「吸収」。
「吐き出す」っていうのは、僕のなかで、結果論で。もちろん、それを積み重ねていくことで良くなっていく技術もたくさんあるけど、実は大概のことは、インプットをちゃんとすれば、アウトプットは1回で完結する、っていう想いがあって。
だからゲームとか、ラップとか、なんでも大体そうだと思っているんですけど、やらないほうが上手くなると思いますね。やらないで、もっとそれに関連する、吸収するものを吸収する。
――即興性を大切にしている、という想いもあるんでしょうか。
そうですね…。なんていうか、「今は今しかない」という感覚がすごいずっとあって。
(例えば)ホントにパッて目を閉じてパッと開けたら(目の前のひとが)いなくなってた。それを「神隠しだ、神隠しだ」って騒ぐかもわからないですけど、それを”神隠し”で済ませられるわけないじゃないですか。「なにが起きたのか」って、やっぱりなっちゃうんですよ。そういう妄想があって。パッと目を閉じて、目を開けたときに、世界のなにかが変わっている。もしかしたらそれに気づけないかもしれないし、気づけるだけ幸せなのかもしれないですけど…。そういう恐怖がずっとあって。
逆に、そういうわくわくもあるんですよ。目を閉じて開けたら、「もっと光り輝いているかもしれない」みたいな。そういう、「今は今だけで、次の瞬間には違うなにかが起きている。それはデメリットだけじゃなくて、いろんな意味で」っていうのは、ずっともう、人生単位で気にしている。
――「世界が次の瞬間には変わっているかもしれない」という、そうした感覚と”パニック”は関係があるんでしょうか?
たぶんあるんじゃないですかね。さんざん小中学生のときに、目が覚めたら三日後だった、みたいなことはあるんですよ。で、お母さんに聞いたら、「あんたずっと発狂してた」と。赤ん坊に戻ったりとかしてるんですよ、1回。僕知らないんですけど、恥ずかしくって、怖くって…怖いんですけど。なんかもう、パって目が醒めて、僕は動かなかったらしくって。目は開いているんですけど。それで、(親が)ずっと名前を呼んでいたら、完全にオウム返し状態になっちゃって。オウム返しと、これと、これ(※ちょっとした身振り)しか出来なくなったらしくって。
でもそんなこと憶えていない。それで、俺は、知らないあいだに自分になにが起きているか全然わかんないんですよ。目が覚めたら、教室にいて、「さっきまで東京にいたはずなのに、ここどこ?」みたいな。教室で、めっちゃ机とか椅子がバーっと荒れてて、先生に取り押さえられている。「意味がわかんない」みたいな。で、泣いたら泣いたで、なんかすごい変がられてとか…。下手したらそれで警察呼ばれたりとかもあって。
まあ、そういうことはいっぱいあったから、たぶん、関係はしてる気はします。
――2013年に松山市で行われた『ヲタスコ!』というイベントで、GOMESSさんがこういうフリースタイルをしていたのが、印象に残っています。
「誰が見てもおぞましい、思われながら、こいつマジでおとなしい、つって蹴られながら。つって慰められながら。つってなじられながら。障害者って呼ばれながら、何回もマイクを握って上を目指したぜ。だからこそ、あいつらには見えない世界を描いたぜ」。
こうした言葉から、”自分にしかできない”とか、”自分から見て”、というように、GOMESSさんは、”自分である”ということをすごく大事にしているように感じさせられます。
「自分」と、「それ以外」っていう意識は常にあるのと、それと、ひととひととをすごく比べてます。常に優先順位を決めるっていうのはやってて。
人間って、両手があるじゃないですか。この意味に気がついたときに、自分のなかですごく想いが強くなったんですけど。ひとは、両手があるから、一度にふたつ掴めると、勘違いする。でも実は、両手、…なんなら全身使って受け止めきれるものはひとつだけなんですよ、常に。選択は常に一個しか取れない。二つ取ったように見えても、それはひとつの次に、もうひとつを取っているだけに過ぎない。それは、ひとつを捨てたあとに、もうひとつを掴んでいるんですよ。ふたつを同時に掴んでいることは出来なくって。
「お母さんとお父さん、どっちを守るの?」って言われたときに、即答できなかったら、どっちも死なしてしまうかもしれないっていう恐怖がずっとあって、だからそういう優先順位を常につけるようにしていて。それは、友達とかも全部そうで。
――GOMESSさんは、ほかのひとよりも強い覚悟で生きているように感じます。
どうなんですかね…。みんな、言わないだけなんじゃないかな、ってちょっと思ってるんですけど。でも、いつ死んでも良いようにしたいし、いつ誰かが死にそうになったとしても、後悔しない選択を取れるように、常にしていたいですね。
(後編に続く)
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