コラボを通じてもたらされた、今までにないコアラモード.像
――『夕焼けのファインダー』は武田真治さんがサックスで参加されています。今回のコラボ相手としては、一番意外に感じる人が多いような気がしますね。
小幡 : 武田真治さんと岡部磨知さん(ヴァイオリニスト)がやっているラジオ番組に、よくゲストで呼んで頂いてるんですよ。お会いするたびに「いつかレコーディング呼んでね!」って言ってくださって、可愛がってもらっているんです。
あんにゅ : 番組内でも、よくセッションさせて頂いてるよね。
’小幡’ : サックスのフレーズに関しては武田さんにお任せしたんですか?
小幡 : ざっくりしたデモはお渡ししたんですけど、それ以外にもたくさん入れて下さいました。武田さん自身は謙虚に「一秒でも一小節でも使えるところがあったら使って下さいね」っておっしゃってたんですけど、たっぷり使わせてもらいました。よく耳を澄ませて聴くと、アウトロの最後の一音でも、遠くで武田真治さんの甲高いロングトーンが鳴り響いてるんですよね。情熱みたいなものをこの曲に吹き込んでくれたなって思います。これまで生のサックスを取り入れたことがなかったので、最初に武田真治さんとコラボできて、すごくメモリアルな一曲になりました。
――『トマレーニャ』という曲はコレサワさんが作詞されていますが、コレサワさんとは長い付き合いだそうですね。
あんにゅ : 私が18・9歳の時から東京のライヴハウスでよく一緒になっていて。それから、お誕生日ライヴでプレゼント交換したりとか、お茶会したりとか、そういう関係です。コレサワちゃんの作る歌詞も曲も個性的で、グッとくるところがたくさんあって、同い年の尊敬できる友達ですね。今回のコラボでは、私とコレサワちゃん二人だけで打ち合わせをしたんです。私が歌ったら良さそうな詞について話していたところ、コアラモード.の歌は恋の歌が意外と少ないって話になったんです。
――確かにそうかもしれませんね。
あんにゅ : 私が歌ったら可愛い恋の歌を書こうっていう話になって、『トマレーニャ』を書いてくれました。
小幡 : 曲自体はすごく古い曲で、コアラモード.として活動する前からあったデモテープが元になっています。良い歌詞がつかないまま時間だけが過ぎてしまっていたんですけど、メロディ自体は気に入っていて、ふとした瞬間に思い出す曲ではあったんですね。そこで、コレサワさんだったらこの曲をどう料理してくれるんだろう?という思いがあってお願いしました。
――この歌詞も今までのコアラモード.のイメージとは全く違う世界観ですね。
小幡 : 恋が始まる予感、みたいなものを歌う曲は今までにもあったんですけど、現在進行形のガーリーなドキドキ感はあまりなかったですね。
あんにゅ : 打ち合わせ終わりに駅まで歩いている時に、「タピオカ流行ってるよねー」とか話をしてたら、歌詞にもうタピオカが入ってるという(笑)。
小幡 : 「もうそろそろいい大人なんだし愛を知りたい!」とか、今まで恋愛の歌をあまり歌ってこなかったあんにゅが歌うっていうところをすごく心得て書いて下さったなって思いますね。コレサワさんのプロデュース眼みたいなものがすごく光っている感じがします。
偉大な先輩との共作は勉強になることばかり
――『五月雨式ですみません』はTAKUYAさんとの共作となっています。TAKUYAさんは前作『COALAMODE.2〜街風泥棒〜』収録の『恋愛定規』に参加されていましたね。
あんにゅ : その時はギターを弾いていただきました。その後も、TAKUYAさんの誕生日ライブで何曲か歌わせていただいたりして、色々お世話になっています。今回コラボ・アルバムを作るっていう話になった時も、真っ先に思い浮かんだのがTAKUYAさんでしたね。TAKUYAさんは、最近色んな人と会って、出会った人と一日で曲を作るっていう作り方でやっていると聞いていたので、コアラモード.とそれをやったら何が生まれるんだろうって気になっていたんです。今回コラボの話が上がったので、それをやってみたい!って。
小幡 : 最初に打ち合わせをした時に、どういう風に進めるか?という話になったんですけど、どうせなら楽しいやり方でやりましょうということで、満場一致で共作という形になりました。
――では、一日スタジオに入って作っていったんですか?
あんにゅ : スタジオではなく、小幡さんの部屋に来ていただいたんです。二日間で一曲ずつ作ったので、本当は二曲作りました。小幡さん、TAKUYAさんが自分の家に来るっていう感覚はどうだった?
小幡 : 横浜だけど、都会でもないような場所なんですよ。アクセスの悪いところに、TAKUYAさんがタクシーから降りてきて、「うわ、本当に来てくれた!」みたいな(笑)。TAKUYAさんの曲作りは、本当にスピード感がすごいんですね。一日でアレンジも含めたフル尺の一曲を作り切るっていう。二日目とか、気が付いたらTAKUYAさんが家のソファに座ってギターを弾いてて。
あんにゅ : 本当にそのために来てるっていうスピード感ですよね。ちょうど五月で雨が降ってて、っていうところから作っていって、出来た人から手を挙げて歌ってみるみたいな。
――じゃあ歌詞とメロディ一緒に作っていく感じだったんですか?
あんにゅ : そうなんですけど、TAKUYAさんの作るスピードがあまりにも早いんですよ。そうなると、TAKUYAさんの歌詞の世界観に入れなくなっていって、結局歌詞は全部TAKUYAさんになりました。あんにゅはもういい年なのにオーバーオールとか着てて、もっと大人の女性のイメージを出していけよ!みたいな感じでイジってもらっていて、今までにない歌詞を提案してくださいました。
小幡 : TAKUYAさんのイズムがものすごく詰まった曲になりましたね。ポップさは残しつつも、そこにどうアヴァンギャルドさを上乗せしていくか、というところをすごく大事にされれる方なので、Aメロの押さえたところからBメロでリズムのループが入って、サビでドカーンと疾走していく、みたいなアレンジもTAKUYAさんらしさが出ていると思います。
あんにゅ : アレンジのアイデアも次々と出てくる方で、思いついたら一回試すんですよ。その上で「これは違う」「これは残しておこう」って、実験的に何度もチャレンジしていくんです。
小幡 : 僕も「ここにリズム乗せて」って言われて打ち込んでみたら、「それダサいよ」とか言われたりして(笑)。アイデアへの反応速度がすごいんですよ。
あんにゅ : 歌詞を書いても、「何でそんな普通のことしか出てこないの?」とか言われて(笑)。意味を考え出すよりも先に声に出してみて、後から意味を合わせていくみたいなやり方で、曲に関しても歌詞に関しても、ものすごく勉強になりました。
――最後に収録されている『思い出の雨が降る』も、伊藤俊吾さん(キンモクセイ)との共作になっていますね。
小幡 : この曲は一番時間がかかったんですね。曲作りという点では、アルバムの構想初期の段階からスタートしたんですけど、Aメロ・Bメロ・サビのパートごとに皆でアイデアを出し合ってプールしていって、本当に色々と試行錯誤しました。結果、Aメロの部分は伊藤さんが最初の方に出して下さったものになって、そのモチーフがすごく良かったので、それを土台に作っていきました。
あんにゅ : 最初の打ち合わせの段階で、私の影響を受けたアーティストの一人が荒井由実さんだけど、コアラモード.の楽曲に荒井由実さんっぽさがあまり出ていないねっていう話になって、間を大切にする曲を作るのはどうか、ということになったんですね。あとは、ロングトーンを大切にした曲もあまりないということで、その二つのテーマからアイデアを出していったんです。
――あんにゅさんと伊藤さんのデュエットという形ですが、それぞれが一番と二番を歌って、ハーモニーを聴かせるのは最後のパートのみという構成が印象的です。
あんにゅ : ボーカリストそれぞれに個性があって、歌い回しも微妙に違うんですよね。私と伊藤さん、それぞれの歌い方を大切にして、カチっとし過ぎないようにしてますね。
小幡 : もっとハーモニーをふんだんに入れる案もあったんですが、より言葉とメロディを聴かせられる方法って何だろう?と考えた結果、本当にシンプルなアレンジになりました。
――それぞれに違うアプローチで制作されたこの6曲のミニアルバムには、最終的に『空色コントラスト』というタイトルがつけられました。この言葉にはどういった意味が込められているのでしょうか?
小幡 : タイトルは曲が出来ていく終盤で付けたんです。一曲一曲、コラボする皆さんと打ち合わせする席があって、それぞれに「コアラモード.とこんなことがしたい」という案を出してくれたので、作品としてのまとまりは当初狙ってませんでした。ある意味バラバラでいいやという意識があったんですけど、仕上がってきた曲を改めて聴いてみると、6曲全て空模様だったり空の色だったり、ふと見上げた空を描写する歌詞が印象的だったんですよね。それぞれの主人公、登場人物が別々だけど同じ空の下で暮らしているイメージが見えてきて、『空色コントラスト』という言葉が生まれました。このアルバムを聴く人にとっても、そういった空の移り変わりが感じとられると嬉しいですね。
コアラモード.
公式サイト
https://www.coalamode.net/
Twitter
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2019年7月17日 Release
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