19歳から音楽シーンに殴り込み、アルバムごとに挑戦を続けてきたOKAMOTO’S。1月に発売した8枚目のアルバム『BOY』を引っさげて、4月から全国を回った彼らはツアーファイナルに、1万人を収容する初の日本武道館公演を実現させた。中学1年生からの幼馴染がバンドを結成して、10年の中で挑戦し続けたことの真価を証明させるようなライブであった。
Photography_Shun Komiyama,Kazushi Hamano
Text_Hiroyoshi Tomite
8th アルバム『BOY』を中心に会場を沸かせ、踊らせる。
期待に胸を膨らます会場にまずは挨拶代わりにとぶちかましたのが、最新アルバムから『Dreaming Man』。スーツ姿に身を包んだ4人は完璧に決まっている。ツアーを通して鍛え抜かれたバンドアンサンブルに魅せられながら、サビに入るとフロアの観客が拳を突き上げ、呼応する。2曲目『Hole』で会場全体にリアルタイムの映像が映し出されると割れんばかりの声援が。序盤、雰囲気を探っていたようなメンバーとフロアであったが「新宿から来たオカモトズです!」とショウが叫ぶ頃には、既に一体感が生まれていた。
筆者はOKAMOTO’Sのライブは初体験。それでもすぐにOKAMOTO’Sの面々がスター性を帯びた存在であることを知る。なぜだか武道館の広さをそこまで感じさせないのだ。それもそのはず、彼らはプレイヤーとしても卓越した名うての存在。それぞれの楽曲の中でプレイヤビリティが光るのが観ていてとても楽しい。
『NO MORE MUSIC』では、オカモト・コウキの軽やかでリズミカルなクランチギターが小気味よく鳴らされ、5曲目『Higher』では、ハマ・オカモトのうねるようなベースが炸裂。来場者達の腰に直接揺さぶりをかけてくる。OKAMOTO’Sが10年の間に積み上げてきたものを想像するのは容易だった。
武道館の大舞台もなんのその。自由なMCと強烈にサイケデリックな音楽がムードを牽引する
中盤のMCでは、一転リラックスムード。ハマ・オカモトを中心に長尺でたっぷりファンを楽しませ、武道館という特別なステージをものにしている。オカモト・レイジは「緊張している」と正直な気持ちを吐露するものの、むしろ余裕すら感じさせるような時間であった。大会場よろしく、炎の演出でメンバーがキャッキャと遊び終えた頃、気付けば後方に白い垂れ幕が現れた。
中盤、『NOTHING』からシックにスタートし、最近OBKRこと小袋成彬とYaffleがリミックスしたことでも話題の1曲『ART(FCO2811)』を披露。続けざまに、初期アルバム『10’s』からTame ImpalaさながらのOKAMOTO’s流サイケデリックソング『マダラ』になだれ込む。曼荼羅模様のVJが後方に映し出され、武道館をドープな世界に引き連れていった。楽曲中オカモト・レイジがアグレッシブなソロを披露するが、バンドとしてのリズム帯の軸は走らずにどっしりと構えていて頼もしい。そうした楽器隊の後押しを受けてオカモト・ショウが思いの丈を言葉に乗せて、前のめりにグイグイと会場のムードを牽引していった。
ステージを縦横無尽に駆け回るOKAMOTO’Sの面々。
気付けばライブも後半戦に。もはや武道館の会場の雰囲気を掌握したOKAMOTO’Sに怖いものはない。オカモトショウが内省的なフィーリング孕んだ『SAVE ME』をエモーショナルに歌いあげた後には、ハードロックなテイストが漂う『HEADHUNT』を力強く披露。激しいドラミングと、ギターソロが印象的な楽曲だが、この頃にはステージ左手にいたハマ・オカモトが右手に、右手にいたオカモトコウキが左へとステージを所狭しと駆け回る。今まで築いてきたOKAMOTO’Sのすべてを見せつけんとばかりにアグレッシブな演奏に熱気が帯びていく。2階席の最後方までもが体を揺らし、反応していた。
会場に来たすべての人に捧ぐ、Dancing Boyを披露
本編最後に『BROTHER』や『ROCKY』までの気迫あふれるアグレッシブな演奏を終えてからのオカモトショウのMCをできるだけ削らずに掲載したい。
「今回の『BOY』というアルバムは俺たちの心を表したアルバムです。俺たちがやりはじめたのはちょうど10年前。まだ19歳の頃。ここまで突っ走ってきて、10年前と同じ気持ちでやっていてもやっぱりすり減った部分、同じように出来ない部分があったり…。BOYから大人に変わっていくそのちょうど狭間に僕たちはいるんじゃないかなって、アルバムを作る過程で思って…。その儚い一瞬を真空パックして残したいなと思ったのが、『BOY』というアルバムでした。(中略)でも、こうしてツアーに出て、色んな所を回って、いろんな会場を回っているうちに、『やっぱりこのバンドをやり続けている限り、ずっと心の何処かがBOYでいられるんじゃないか』と思いました。それも、なるだけ自分達が格好良いと思えるものを正直に、ピュアに作り続けて来たからだと思います。だから俺たちの心の中にBOYがいるし、このバンドやり続ける限り、BOYはなくならないんじゃないかなと思いました」
そうした万感の思いに会場から惜しみなく拍手が送られる。ラストに披露されたのが最新アルバムよりMVになった『Dancing Boy』。メンバーは感慨深げな顔をみせながら「これからもOKAMOTO’Sをよろしく~!」というコールとともに熱い演奏を終える。メロウなサウンドの最後の1音を惜しむように互いの顔を見つめながら奏で続ける面々。少年性を抱いたまま、走り続ける。彼らが迷いながらも自分達の音楽を信じて走り続けてきた軌跡がその一音一音に込められていた。
彼らのひたむきなスタンスや音楽に救われる人が少なくとも1万人はいる。その事実こそが2019年のバンドシーンや平成の世を生き抜いてきた少年の心を持った人達の“救い”そのものに思えた瞬間だった。
アンコールでは超初期の“音楽室で作った曲” 『Beek』に次いで、前作から『90’s TOKYO BOYS』を披露し、さらなるバンドとしての飛躍を予感させて大団円を迎えた。
彼らがステージから降りた後、興奮冷めやらない会場に発表されたのは、新木場STUDIO COASTでの “オカモトショウ 生誕祭 オールナイトイベント”の発表。更にオカモトコウキ1stソロライブイベントを発表されると会場の黄色い声援は最高潮に。記念すべき1日であったことは言うまでもないが、ここが一つの通過点に過ぎないことをまざまざと魅せつけたOKAMOTO’S。ああ、なんて頼もしい5人なのだろうか。
<セットリスト>
01. Dreaming Man
02. Hole
03. FOOL
04. NO MORE MUSIC
05. Higher
06. NEKO
07. ハーフムーン
08. Animals
09. 偶然
10. Phantom (By Lipstick)
11. NOTHING
12. マダラ
13. ART (FCO2811)
14. SAVE ME
15. HEADHUNT
16. BROTHER
17. ROCKY
18. Dancing Boy
encore
en1. DOOR
en2. Beek
en3. 90’S TOKYO BOYS
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