けれども、彼女は支配者でありながら圧倒的な博愛主義者なのでした。先述の通りLGBTQI的なアイコンとして扱われることが多いですが、その愛は全方位に向けられている。それは先の「性別に関わらず~」の言葉にも表れておりましたが、筆者のようなストレートのアジア人にも向けられているのです。昨年フジロックのヘッドライナーを務めたケンドリック・ラマーは「Alright」でアフロ・アメリカンを救ってみせましたが、ジャネールの場合はそこから更に進んで、「あなたを愛せ!」と喧伝するわけです。辛い現実が多すぎてちっとも進歩しない社会も、音楽は少しずつ僕らの世界をポジティブにしてくれる。
「PrimeTime」の時にPrinceの「Purple Rain」のギターフレーズをぶっ込んできたときは流石に動揺しました。過去の偉大な名作は、当時とは違う形で現在を照らし出す。ポップミュージックの壮大な物語と、僕たちの繊細なアイデンティティが繋がった瞬間でした。ドラァグクイーンの衣装に身を包んだ人と、ELLEGARDENのバンドTシャツを着た人が隣り合って彼女のステージを観ている光景は、たとえ様もなく美しかった。
SHARE
Written by