フジロックフェスティバル ’19、本編開幕
前夜祭をフルで楽しんでしまった手前、午前11時のフィールド・オブ・ヘブンを目指すのはなかなかに骨が折れます。メインステージのひとつでありながら、会場の最果てにあるヘブン。始まったばかりなのに我々は自分たちを励ましながら、中村佳穂の待つステージへ。何せフジロック本編の一音目ですから、この選択が1日を決定づけると言っても過言ではないのです。良い音楽を聴くためなら、野を超え山を越えエンヤコラ。
…と、志を同じくする人たちが多かったようで、彼女がステージに立つ頃にはフィールド・オブ・ヘブンは人で溢れておりました。3年前にジプシーアヴァロン(フィールド・オブ・ヘブンのキャパシティが5000人に対して、同ステージは1000人)でフジロックデビューを飾った彼女ですが、この間に大きく飛躍。フジロックの直前にリキッドルームで行われたワンマンライブのチケットは売り切れ、今や押しも押されもせぬライジングスターです。荒木正比呂(Key.)と深谷雄一(Dr.)は3年前も一緒でしたが、今回はホーンセクションやビートメイカーのMASAHIRO KITAGAWAらをバンドの編成に加えており、文字通りパワーアップして帰ってきたわけです。
端的に申し上げて、素晴らしいライブでありました。3年前にアヴァロンで見せたパフォーマンスも語り草になったほどだったのですが、今回はそれを超えてくる内容。本人もバンドも、この3年間にどれだけの山場を乗り切ったのやら…。「中村佳穂ってアーティストが最近有名だけど、どれどれ…」と見に来た初見のお客さんを全員ねじ伏せるような、そして抱きしめるような、そんなパフォーマンス。バンドのインプロも最高でしたが、本人の歌の力が非常に強い。「きっとね!」しかり、「AINOU」しかり、泣きながら聴いているオーディエンスが多数見受けられました。どこかからか「私も中村佳穂になりたかった」という声が聞こえてきて、その言葉がまた胸に迫ってしまい、なんだか今回のフジロックがここで終わっても悔いはないような、そんな気持ちになってしまいました。まだ初日の昼前なのに。
強烈な満足感を胸にGREEN STAGEへ
今回の最大目的のひとつ、ジャネール・モネイのステージを観る前にもう半ベソです。もちろんその間に色々見て、ケバブを食い、大好きな油揚げサンド(フジロックに来ると絶対食べる。お店の「越後きつね屋」はホワイトステージの近くにあります)も食い、絵に描いたような苗場ライフを満喫するわけですが、頭の片隅には常に中村佳穂。
が、こちらのコンディションとは無関係に苗場の時間はグングン過ぎてゆくので、あっという間に夕暮れです。ついにジャネール・モネイの登場。ELLEGARDEN(ジャネール・モネイの次に登場)のバンドTシャツを着たお客さんがステージ周りに増えてゆく中、LGBTQIのいずれかを想起させるファッションに身を包んだ人たちの姿も見られます。
「性別に関わらず、そして肌の色にも関わらず、あなたはあなた自身でいていいのよ」と社会性を帯びたメッセージを放つ彼女ですが、バンドの編成はシンプル。ベース、ギター、シンセ、ドラム。ストイックかつ艶やかなサウンドのもと、ダンサーたちが入れ替わり立ち替わり登場します。終始広大なグリーンステージを支配する様はまさしく“クイーン”。実際「Django Jane」では玉座がモチーフとして登場しましたから、演出としても完成度が高かったです。
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