日本を代表する芸術家、葛飾北斎
多くの日本人が教科書でその名を見かけたであろう、葛飾北斎。夏目漱石や谷崎潤一郎らがそうであるように、日本の古典的芸術家というのは「学校で勉強してからそれっきり」という存在になりがちです。そんな状況が作用してか、歴史的偉業を成し遂げた日本人を高く評価しているのは、僕らよりもむしろ海外だったりします。葛飾北斎はその典型例ではないでしょうか。
古くはゴーギャンやマネに影響を与え、フランスを中心に「ジャポニズム」という一大ムーヴメントにまで発展した葛飾北斎の作品。世界から多くの画家・画商が、北斎の作品を求めたといいます。
『世界が絶賛した浮世絵師 北斎展 ~冨嶽三十六景・エッフェル塔三十六景の共演~』が、池袋・パルコミュージアムにて開催!
そして来る6月30日より、池袋のパルコミュージアム(池袋パルコ 本館7F)にて、葛飾北斎の展覧会が開催されます。代表作「冨嶽三十六景」をはじめとする、「東海道五十三次」などのシリーズもの、妖怪絵、戯画などの50作品が展示予定。さらには、北斎の影響を強く受けたといわれるフランス人画家アンリ・リヴィエールの「エッフェル塔三十六景」も、本展で紹介されます。
葛飾北斎の足跡を、今一度
さて、来る展覧会に備え、本稿では改めて葛飾北斎の足跡を辿ります。世界一有名な浮世絵師の生涯や如何に。彼の人生は必ずしも順風満帆ではなかったけれど、それでも現世にこれだけ名を残せたのは、つまるところ「絵を描くこと」への並々ならぬ情熱によるものだった。
霊峰・富士を様々な場所と角度から描いた『富嶽三十六景』。日本画の象徴と言っても過言ではありませんね。北斎が本作を世に発表したのは、実は彼が70歳を過ぎてから。50代のときに旅先で目にした富士山にすっかり心を奪われ、それからというもの、どのような構図で富士山を描くかに異常な執着を見せるようになります。大胆に、そして幾何学的に、富士山を描き倒しました。『尾州不二見原』はその妙技の代表例として挙げられますね。
浮世絵は元々風景画ではなかったのですが、彼の描いた『富嶽三十六景』のセンセーショナルな登場により、風景画としての方法論が確立されました。この点においても、北斎の絵画における功績は大きいです。本作が元となって、歌川広重は『東海道五十三次』を刊行できました。ちなみに北斎が風景画を見出したのには理由があって、実は先ほどの「ジャポニズム」に関係しています。彼は海外に浮世絵を知らしめ、多くのアーティストに影響を与えましたが、彼自身もまた海外の画法からインスパイアされていたのです。「風景画」と聞いてピンと来ませんか?当時のヨーロッパで、いち早く「風景」に芸術を見出した国はどこでしょう。オランダです。北斎が生きていた時代、ちょうど日本は鎖国中。数少ない貿易相手がオランダでした。このときオランダが日本と関わりを持っていなかったら、『富嶽三十六景』は生まれなかったかもしれない。不思議な巡り合わせですね。
本項の冒頭でチラッと書きましたが、北斎の画家人生は必ずしも順風満帆なものではありませんでした。その証左に、ほとんどの重要作は晩年期に描かれたものです。それまではなかなか評価されず、生活は困窮しておりました。長いこと多額の借金を抱えていたといいます。そんな状況にあっても、彼は絵に対する情熱と誇りを失いませんでした。生活のために仕事を選ばなかったのですが、それでもそれぞれの仕事に手を抜くような真似はしなかったのです。相撲画から本の挿絵まで、当時の北斎の仕事は多岐にわたります。名義(彼には役号が30個ほどある)を「画狂人」としたこともあるほど、絵を描くことが好きでたまらなかった。彼の画家としての才覚に疑いの余地はありませんが、一番の才能は、実はそこにあったのかもしれません。
余談ですが、北斎の娘である葛飾応為も大変優秀な画家です。彼女を主人公に据えた『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』というアニメ映画があるのですが、本作で北斎展の予習をするのもオツですね。アヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞を受賞するなど、国際的な評価も高い作品です。
映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』予告編
■世界が絶賛した浮世絵師北斎展~冨嶽三十六景・エッフェル塔三十六景の共演~
会期 :2017年6月30日(金)~7月17日(月祝) 18日間
時間 :10:00~21:00 ※入場は閉場の30分前まで ※最終日18:00閉場
会場 :パルコミュージアム(池袋パルコ 本館 7F) 東京都豊島区南池袋1-28-2
入場料 :一般700円 学生500円 小学生以下無料
<特設サイト>
http://www.parco-art.com/web/museum/exhibition.php?id=1109
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