中学時代、初めてバンドを組んだ仲間同士が時を経て再会し、2012年からユニット「イトヲカシ」としての活動をスタート。動画サイトへの投稿楽曲が人気に火を付け、今年5月のインディーズのミニアルバム『捲土重来』もチャートを席巻。ワンマンツアーのチケットは発売1分で完売する人気ぶりを見せつけてきた。
そんなイトヲカシが9月21日、ダブルA面シングル「スターダスト / 宿り星」でついにメジャーデビュー! メジャーデビューを迎えた心境と、ファンと“直接会って歌を届ける”路上ライブにこだわる彼らの音楽活動について、伊東歌詞太郎(Vo)と宮田“レフティ”リョウ(Bass/Guitar/Key)が語ってくれた。
インタビュー・文/阿部美香
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「聴いてくれてありがとう!」と伝えたい
――動画投稿サイトでの活動を通じて、若い世代にはすでに圧倒的な人気を誇るイトヲカシなので、「まだメジャーデビューしてなかったの?」と思うほどですが……“メジャーデビュー”はやはり、おふたりにとって大きな目標でした?
伊東歌詞太郎(以下、伊東) はい、もちろんそうですね。僕ら、動画投稿サイトで名前を知ってもらう前は……僕なんかは下北沢を拠点に“ザ・ギターロック!”なバンドをやっていたし、彼(宮田“レフティ”リョウ)は彼でまったくジャンルの違うバンドを続けていて。その頃から、バンドマンの夢といえば、日本武道館でライブをやり、紅白歌合戦にも出たい。そうなるためには、メジャーデビューがひとつのキッカケになるので、ずっと憧れがありました。
宮田“レフティ”リョウ(以下、宮田) 最近の音楽業界は、いくらインディーズとメジャーの垣根はなくなっているとはいえ、ですね。だから、とても重要な通過点だと思ってます。
――でも、おふたりのインディーズブレイクのきっかけともなった、動画投稿サイトで活躍している方々を見ていると、昔と違ってメジャーデビューすることへの欲は、減っているように感じるんです。
伊東 あぁ……それはやっぱり時代の変化もあるし、音楽がどうやったらみんなに届けられるのか? というメディアの変化もありますよね。
宮田 僕らは、やっぱりバンドマン発想なんですよね。音源を人に届けるには、自主制作CDにしてライブで演奏して、CDも直接売るもんだという感覚でしたけど、インターネットで音楽を観聴きするのが当たり前な時代では……。
伊東 聴く側も届ける側も、意識が一辺倒ではなくなったったんでしょうね。メジャーからCDを出さなくても世界中に音楽を届ける方法はあるんだから、メジャーデビューにこだわる必要はないと考える人は、増えている気がします。
――では逆に、ライブハウスが主戦場だったバンドマンのおふたりが、2012年からニコニコ動画で音楽を発表するようになったのは、なぜだったんですか?
伊東 直接のきっかけは、お互いがやっていたバンドがほぼ同時期に解散したからですね。僕らは中学時代のバンド仲間でずっと交流があったので、「俺は音楽続けるつもりだけど、おまえどうするの?」「俺も続けるよ」「じゃあ、集まって何かやれないかな?」という会話があり。そういえば、世の中にはネットの動画配信サイトで楽曲を配信している人たちがいて、夢があるなと。
宮田 自分たちの歌、演奏や曲を広く知ってもらうチャンスだな……ということで、ネットを通じて一緒にユニット活動をしていこう、という話が進んでいったんです。
伊東 なので、僕らはニコニコ動画からボーカロイドがものすごい大ブームになって、たくさんの人がメジャーデビューして……みたいな詳しい経緯をじつはよく知らなくて(苦笑)。ライブハウスや路上ライブと同じ音楽活動の場のひとつとして動画投稿を始めたので、後からニコニコ動画の先輩たちにいろいろ話を聞いて、そのすごさを実感しました。
――だからなんですね。動画サイト出身と思っていたイトヲカシが、全国津々浦々をめぐる路上ライブにすごくこだわるのが、ちょっと意外で。このユニット、インドア派かと思ってたら、やけにリア充っぽいぞと(笑)。
伊東 あはははっ!! たしかに音楽活動では、外を飛び回っていますからね。私生活は全然ですけど!(笑)
宮田 ただ、バンドをやっていた頃の路上ライブとは、今はちょっと切り口は違うんです、僕らのなかで。バンド時代は、ライブハウスに来てもらうために、知らない人の前でやるのが路上ライブ。でも動画サイトに投稿を始めるようになると、バンドの常識では信じられないくらい再生数があってビックリして。そんなに僕らの音楽に興味を持ってくれる人がいるなら、やっぱり面と向かって歌を届けたいし、「聴いてくれてありがとう!」と伝えたい。だったら、直接会える場がなきゃダメだよと。
伊東 もうひとつ、僕らがニコニコ生放送でライブ決定の発表をしたとき、お祝いコメントに混じって「やっぱり会場は東京なんですね」という声があった。「これを見逃しちゃいけない!」と思ったんですよ。首都圏から離れた土地に住んでいる子たちは、最初から来るのを諦めちゃうなと。だから、路上ライブは県庁所在地じゃない街に、積極的に行くようにしています。
宮田 すると、僕らも予想してなかった嬉しいことも起こるんですよ。そもそもニコニコ動画の視聴者層は10代が多くて、なかには小学生の子もいるから、路上ライブをやると親御さんがクルマで送り迎えをしてくれる。一緒にライブを観て、家族ぐるみでファンになってくれるんです。
伊東 だから、僕らのファンってめちゃめちゃ幅が広い。下は8歳から、上は90歳のおばあちゃんまで、いろいろな方が応援してくれるのは、自慢ですね!
――それはすなわち、イトヲカシの楽曲自体が、老若男女すべてに愛されるポップスであることの証明ですよね。
伊東 僕らが目指しているのは、まさに“王道”のJ-POPでありロック。今、イトヲカシを好きでいてくれる10代前半の子に、10年後、20年後にも聴いてもらえる曲なんです。
宮田 例えばサザン(オールスターズ)やミスチル(Mr.Children)のような。すごくおこがましいですけどね。歌詞太郎自体が、言霊をちゃんと飛ばせるボーカリスト。それを武器に王道を貫きたいんです。
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《信じるべきは自分自身》
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