「踊れる音楽」をテーマとし、札幌を拠点に活動しているバンド、The Floor。2012年に結成し、2018年にメジャーデビューを果たした彼ら。2019年には新体制になり、2ndアルバム「nest」もリリースしました。「nest」では3人それぞれが作詞作曲を担当し、アルバム名の通りThe Floorの「巣」となるような1枚に仕上がっています。そんなアルバムの製作過程や新体制での変化をメンバー3人にインタビューしました。
新体制になったThe Floorの変化
――本日は札幌からお越しいただき、ありがとうございます! The Floorといえば2019年に新体制になりましたが、これまでと変わった部分はありますか?
ササキハヤト(以下、ササキ) : これまでは、脱退した元メンバーがThe Floorの楽曲の9割を作っていたんです。でも今は僕らが楽曲を作るしかなくなって。はじめは右も左もわからなかったけど、メロディとコードだけだったり、弾き語りだったりと各々の作り方をしていました。なんとかアルバムのリード曲が仕上がってから、やっと作り方がわかってきて。それからはどんどん曲ができて、アルバムの完成に繋がっていきました。
――新体制で3人が作詞作曲を手がけるようになっても、The Floorらしさは変わっていないような気がします。
ササキ : そう言っていただけることは多いですね。自分たちがThe Floorとしてやりたいものはずっと変わっていないからだと思います。
コウタロウ : 「自分たちがいいと思うものを出していこう」という気持ちは4人体制の頃からあって、3人になっても変わらずに続いているのかなと思いますね。
ミヤシタヨウジ(以下、ミヤシタ) : 今までの自分たちを意識したわけでもなければ、めちゃめちゃ変えてやろうという気もなかったよね。新しいことを取り入れたり、やっていたことを無くしてみたりしつつ、今までの自分たちらしさを考えることなく自然な流れでできたアルバムになりました。
自分たちの巣であり、聴くひとの拠り所になるようなアルバム「nest」
――アルバムタイトルの「nest」は「巣」という意味ですよね。新体制になって、巣から飛び立っていくような意味合いですか?
コウタロウ : そうですね。居心地のいい場所という意味合いも込めているので、聴いてくれる人たちの拠り所になるようなアルバムになってくれたらいいなという意味も込めています。
――まさに今のThe Floorにぴったりなアルバム名ですね。他にタイトル候補に挙がったものはありますか?
ササキ : 「egg」があったんですけど、他のアーティストさんと被っちゃうので諦めました(笑)。でも、結果「nest」でよかったよね。収録曲は新体制となった僕たちをライブで出せるアルバムにすることをイメージして、たくさん曲ができた中から厳選しました。
――リード曲の「candy」は恋愛をキャンディに例えた曲で恋愛の甘さもありつつ、「いつか忘れちゃう」「永遠はない」などの切なさも混じっていますよね。
ササキ : 僕はリフが特に気に入っていて、とても楽しい曲だと思います。でも、楽しいだけの曲はあまり好きじゃなくて。ちょっと皮肉というか、右に左に転がっていくのが恋だよね、という思いを込めています。色々な経験があってこそ今の自分が出来上がると思うので、「一瞬でもいいから楽しめたらいいんじゃない?」って。全力の肯定でもないけど、否定でもない。一瞬で終わってしまいうもの、溶けてしまうものとして「candy」を作りました。
――The Floorの楽曲は楽しいだけじゃなくて、ちょっと影があるような曲が多い気がします。
コウタロウ : ただ楽しいだけだと、聴く側もあまり引っかかりがないかなという気持ちがあって、どこか表裏があるような曲が多いよね。
ミヤシタ : 曲自体は楽しいけど、切なげな雰囲気もあって相反するものが含まれている曲が好きです。
――それもまたThe Floorらしさのひとつですね。曲作りで大変だった点はありますか?
ササキ : 作り始めは「いいけど、何かが足りない」と思ったり、バンドで合わせるとイメージと違ったりして、「なんで!?」みたいな。とにかくトライアンドエラーを繰り返して、ようやく自分たちの作りたい音楽が研ぎ澄まされて見えるようになって完成しました。
――2曲目に収録されている「雨夜の月」もメロディがかっこよくてすごく好きでした!
ミヤシタ : あれは「超制作できるモード」のときにたまたまできた曲なんですよね。自分から出たとは思えないメロディで、イメージが消えないうちに作りました。
――いつの間にかできていたんですね(笑)。
ミヤシタ : そうそう。メロディとリフがいっぺんにできて、リフは自分っぽいなと思うけど、メロディはらしくなくて、今聞いても不思議な感覚ですね。
――たまたまできた曲だったなんて! 曲作りが進むときと行き詰まるときの波はありますか?
ササキ : ありますよ!作れないと思ってるときに誰かが曲を上げてくると、「負けらんないな、やらなきゃ」となるので、お互い鼓舞し合ってますね。こっちも曲出して「もっとこいや!」みたいな(笑)。1人だったら死んでいたと思うので、3人それぞれ作れたことが、今回のアルバムの強みだと思いますね。
――お互いを鼓舞し合えるのはいい関係ですね。「nest」には厳選された曲が入っていると思いますが、特にお気に入りの曲を選ぶとしたらどれですか?
ササキ : 「ナイトフォール」です。出会いと別れは生活の中で隣り合わせであるものだと思っていて。「またね」って言える関係がなくなったときに、「こんなに大事だったんだ」と気づいて歌にした曲です。アルバムの選曲のときに真っ先に入れたいなと感じた、思い入れのある曲ですね。
コウタロウ : 僕は「砂の山」ですね。ドラムやベースを打ち込んだバンドサウンドとは違う曲になっています。ミックスを初めて全部自分でやったので挑戦にもなったし、改めて自分と向き合えた曲。
ミヤシタ : 今までは「Shadow」と答えてたんですけど、ライブで「I Don't Know」を弾いたときに超楽しかったので、変わりつつあります(笑)
ササキ : わかる。ライブで演奏すると印象が変わる曲はあるよね。
――どのように印象が変わるんですか?
ササキ : 「ナイトフォール」はもうちょっと踊れる感じのイメージだったけど、実際にライブでやると思ったよりエモい感じになっちゃって(笑)。いい意味で雰囲気が変わって聞こえるんだなと。
コウタロウ : 僕たち自身、曲が変わっていく様子を目の当たりにすることはよくありますね。違った表情で曲が届いていくのは面白いです。
ササキ : 「え、この子こんな表情もできるの!?」みたいなね(笑)。自分たちも曲をどのように魅せていくのがいいのかわかってきたり、こう見せた方がかっこいいんじゃないか、受け入れてもらえるんじゃないかと日々ライブの中で試行錯誤しています。
――3人がそれぞれ作詞作曲する中で、各々のこだわりはありますか?
ササキ : メロディですね。生活の中でふわっと出てきたメロディにコードをつけることが多いので、メロがいいと思うものしか作ってないですね。
コウタロウ : 僕は「ライブで聞いたらかっこいいだろうな」って言うのが判断基準。大きな音で鳴って感動を受けた側の人間なので、ライブでの演奏をイメージしながら曲を作ることが多いです。
ミヤシタ : 自分がかっこいいと思えるメロディと、大きなサウンド感を意識して作っています。みんな意識する部分は同じだけど、感覚の違いでそれぞれの個性に繋がっていると思いますね。
――逆に意識して共通させていることはあるんですか?
ササキ : 最初はバラードを作ろうとしたんですけど、全然できなくて。こんなにできないんだってくらいできなくて(笑)。なんとか曲ができて、その後に「candy」ができたんです。そうしたら「こっち(candy)の方がよくない?」となって。バラードを作り終えたときにフリーな気持ちになってどんどん曲ができたので、決めない方が作りやすいのかなと。
――バラードと決めてしまうと、そこに囚われてしまうというか。
ササキ : 楽曲の作り始めだったからかもしれないけど、今回は決めない方が自分の好きなものを出すことができてよかったなと思います。
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