爆音映画祭は新宿ピカデリーで
映画ファンの間ではもはや定番でしょうか。今や日本各所で開催されている『爆音映画祭』。今日もどこかのスクリーンで爆音が轟いているかもしれません。都内の映画館に限らず、山口県のYCAMのようなアート・ミュージアムまで、『爆音映画祭』は全国津々浦々を行きます。
このイベントは、音楽のライブ用に組まれた音響設備で映画を体験しようというもの。文字通り、「爆音」です。上映される作品もそのときによって様々で、アニメが上映されたりミュージシャンのライブ映像が上映されたりと、実にバラエティに富んだテーマでラインナップが組まれています。今回ピックアップするのは、2月10日から新宿ピカデリーにて開催される爆音映画祭。こちらは言うならば、「新旧名画決戦」。
あっぱれなセレクション。さすがのセンスです。可能であれば全ての作品を観ていただきたいところですが、この記事では中でも特に爆音で体験すべき映画7作をフォーカス。
まずは近年公開されたばかりの新作映画から。
1. 『ベイビー・ドライバー』が2017年に巻き起こした旋風
昨年、劇場から出てきた人が口を揃えて絶賛した映画がこの『ベイビー・ドライバー』。
ベイビー(アンセル・エルゴート)。その天才的なドライビング・センスが買われ、組織の運転手として彼に課せられた仕事―それは、銀行、現金輸送車を襲ったメンバーを確実に「逃がす」こと。子供の頃の交通事故が原因で耳鳴りに悩まされ続けているベイビー。しかし、音楽を聴くことで、耳鳴りがかき消され、そのドライビング・テクニックがさらに覚醒する。そして誰も止めることができない、追いつくことすらできない、イカれたドライバーへと変貌する―。 – 公式サイトより
映画『ベイビー・ドライバー』冒頭6分カーチェイス
本作の監督を務めたのはエドガー・ライト。映画におけるサブカルチャーの使い方が、恐らく世界一上手い。さしづめ「イギリスの大根仁」と言ったところでしょうか。特に音楽の造詣の深さはピカイチです。上の動画は本作のワンシーンですが、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの『Bellbottoms』をたっぷり使っております。『ホット・ファズ』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』と同様、全編通して音楽を楽しめる仕上がり。これは爆音で観たい。
2. 『ブレードランナー2049』による全SFファンへの回答
2017年の「素晴らしきかな、SF映画」大賞(当社比)。1982年に公開されたリドリー・スコットの『ブレードランナー』の続編であります。
LA市警のブレードランナー“K”(R・ゴズリング)は、ある事件の捜査中に、《レプリカント》開発に力を注ぐウォレス社の【巨大な陰謀】を知ると共に、その闇を暴く鍵となる男にたどり着く。彼は、かつて優秀なブレードランナーとして活躍していたが、ある女性レプリカントと共に忽然と姿を消し、30年間行方不明になっていた男、デッカード(H・フォード)だった。いったい彼は何を知ってしまったのか?デッカードが命をかけて守り続けてきた〈秘密〉―人間と《レプリカント》、2つの世界の秩序を崩壊させ、人類存亡に関わる〈真実〉が今、明かされようとしている。- 公式サイトより
映画『ブレードランナー2049』日本版予告編
『ブレードランナー』に限らず、SFファンというのは理屈っぽい。科学を題材にしているわけですから当然です。それゆえ作品に求められる論理性も、他のジャンルに比べてハードルが高くなります。『インターステラー』ですら、一部では説明不足であるとの指摘を受けていました。
が、本作『ブレードランナー2049』は完璧であります。世界のSFファンも納得のクオリティ。何より続編として素晴らしい。この映画を爆音で観られるという滅多にない機会ですから、この際しっかり復習をした上で劇場へいらっしゃって下さい。出来れば前日譚にあたる3作(『2022:ブラックアウト』、『2036:ネクサス・ドーン』、『2048:ノーウェア・トゥ・ラン』)も観て欲しい。
3. 『20センチュリー・ウーマン』が喰らわす「今」への会心の一撃
映画も音楽も、僕らが生きる「今」を反映している。『20センチュリー・ウーマン』は1979年を舞台にした作品ですが、そう思わずにはいられませんでした。
1979年、サンタバーバラ。シングルマザーのドロシアは、思春期を迎える息子ジェイミーの教育に悩んでいた。ある日ドロシアはルームシェアで暮らすパンクな写真家アビーと、近所に住む幼馴染で友達以上恋人未満の関係、ジュリーに「複雑な時代を生きるのは難しい。彼を助けてやって」とお願いする。15歳のジェイミーと、彼女たちの特別な夏がはじまった。 – ロングライド公式サイトより
『20センチュリー・ウーマン』特別映像
タイトルが示す通り、主人公の周りに居る女性3人の視点で語られる物語。一見するとパーソナルな内容に思われますが、この作品の普遍性たるや、まさに時代を超えるスペクタルです。先日のグラミー賞やゴールデン・グローブ賞、そして「シスター・マーチ」運動を見ても分かるように、現在は「女性」というキーワードをもとに世界が動いています。それを1979年という時代に移し、この映画は壮大な普遍性を持って僕らに語りかけてくるのでした。当時の「強き女性たち」のアイデンティティの一部であったソニック・ユースなどの描かれ方も最高。
4. 『シング・ストリート』こそ爆音で
もはや「音楽映画といえばこの人」になりつつあるジョン・カーニー。今回の爆音映画祭では同じく彼が監督を務めた『はじまりのうた』も上映されますが、この記事では『シング・ストリート』をピックアップします。
1985年、大不況のダブリン。人生14年、どん底を迎えるコナー。父親の失業のせいで公立の荒れた学校に転校させられ、家では両親のけんかで家庭崩壊寸前。音楽狂いの兄と一緒に、隣国ロンドンのMVをテレビで見ている時だけがハッピーだ。ある日、街で見かけたラフィナの大人びた美しさにひと目で心を撃ち抜かれたコナーは、「僕のバンドのPVに出ない?」と口走る。慌ててバンドを組んだコナーは、無謀にもロンドンの音楽シーンを驚愕させるPVを撮ると決意、猛練習&曲作りの日々が始まった――。 – 公式サイトより
映画『シング・ストリート 未来へのうた』予告編
もうね、何度も観ちゃう。カーニー監督自身が元々ミュージシャンなだけあって、音楽がどのように生まれて、どういう影響を人に与えるかを熟知しております。それゆえライブシーンや作曲シーンを撮るのが抜群に上手い。個人的には、今回一番爆音で観たい作品です。80年代の楽曲アレルギー(これが結構20代そこそこの音楽ファンに多い)の人にこそ観て欲しい。その症状、完治しますよ。
(次ページ: 往年の名作編)
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