様々なアニバーサリーのお供に、『ビートルズ語辞典』
2017年7月6日、ビートルズ研究者の藤本国彦により、『ビートルズ語辞典』が刊行されました。今年は名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド』発売から40周年を迎え、さらにはジョンとポールが出会った1957年7月6日から60年の節目にあたります。NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』でも注目されるなど、近頃は何度目かのビートルズ・フィーバーが起きているように思いますね。
『ビートルズ語辞典』はアニバーサリーに伴って発売されたわけですが、その内容は他のガイド本とは一線を画します。というのも、対象とする読者層がものすごく広いのです。歴戦のビートルズマニアから、昨日彼らを知ったキッズまで、様々な層が楽しめるでしょう。楽曲のバックグラウンドはもちろん、メンバーの歴代ガールフレンドまで網羅されています。
The Beatles – 『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』
さて、この記事では本書の内容に触れつつ、様々な角度からビートルズを概観します。まずは冒頭でも少し触れた『サージェント・ペパーズ』について。
『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド』とは何だったのか。
年季の入ったビートルズファンにとっては、もはや耳タコな話でしょう。最近音楽をディグり始めたという人も、本作の重要性はどこかで耳にしているかもしれません。
このアルバムは、「世界初のコンセプト・アルバム」と言われています。音楽でいう「コンセプト」とは、作中に通底するテーマ性や物語のことを指します。本作には「架空のバンド『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド』がショウを開催する」という、起結があるストーリーが展開されるのです。上に貼った『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』に始まり、設定上アンコールである『A Day In The Life』に終わる。
The Beatles – 『A Day In The Life』
のちに出てくるザ・フーの『トミー』やデヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』のような傑作の礎となったと考えると、金字塔のようなアルバムですよね。本作は音楽面も先鋭的で、前作・前々作の『ラバー・ソウル』と『リボルバー』の内容を発展させたような音が鳴っています。壮大なオーケストレーションを展開し、ニワトリの鳴き声をサンプリングするなど、斬新なアイデアに溢れていました。本作はいまだに各メディアや評論家から揺るぎない評価を受けていますが、全く大げさなものではありません。
面白いデータが豊富な『ビートルズ語辞典』
ビートルズほど偉大であれば、楽曲がカバーされた回数で立派なデータが取れるのです。意外なのは『Blackbird』人気。シングルカットされていないにも関わらず、カバーされた回数で『Yesterday』や『Something』に迫る勢いです。2016年のアカデミー賞授賞式では、デイヴ・グロール(フー・ファイターズ)もその年に亡くなった映画人を追悼するパフォーマンスとして、この曲をカバーしておりました。筆者も大好きな一曲なので、この結果は嬉しいです。
ここでは、コリーヌ・ベイリー・レイとハービー・ハンコックの無敵コンビによるカバーを。
Corinne Bailey Rae and Herbie Hancock – 『Blackbird』
本書によると、カバーされた回数が多い曲のほとんどがポール・マッカートニーの曲なのだとか。『Yesterday』も『Blackbird』も、彼によって生み出されたナンバーです。彼のソングライティング力の高さが窺い知れるデータですね。
ビートルズの音楽にも大いに影響を与えたミューズたち
素晴らしいラブソングも数多く残したビートルズ。その影には当時彼らが付き合っていた、または婚姻関係にあったガールフレンドたちの姿がありました。例えば、先述の『Something』はジョージ・ハリスンがパティ・ボイドに向けて書いた曲だと言われていますし(諸説あり)、オノ・ヨーコに至ってはジョン・レノンの音楽の一部と言っても良いでしょう。
それから、やはりポール・マッカートニーの元婚約者であるジェーン・アッシャー。ポールが1963年〜1966年ぐらいに書いたラブソングは、大体彼女に向けられたものです。アルバム単位で言うと2作目の『ウィズ・ザ・ビートルズ』〜7作目の『リボルバー』あたりですね。一口に「ラブソング」と言っても、その内容は実に様々。ひたすら愛を叫ぶ曲もあれば、失恋がテーマの曲もあります。こちらで歌われているのは、「仲直り」について。もちろん相手はジェーンです。
The Beatles – 『We Can Work it Out』
辞典という言葉が使われていますが、本書のタッチは極めて軽妙であります。けれども情報の充実度は凄まじく、読み始めればマニアでも前のめりになってしまうでしょう。
なお7月15日(土)と8月20日(日)には、本書著者である藤本国彦のトークショーがアップリンク渋谷にて開催されます。ぜひお誘い合わせの上、遊びに行ってみてください。
■『ビートルズ語辞典』トークショー
<イベント情報>
著者 藤本国彦によるトークイベント開催!
日時:7月15日(土)開演19:00/8月20日(日)開演19:00 ※開場15分前
料金:前売¥2,500(ドリンク付)/当日¥3,000(ドリンク付)
会場:アップリンク渋谷 FACTORY(1F)
<公式サイト>
http://www.uplink.co.jp/event/2017/47686
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