GLIM SPANKY(グリムスパンキー)が2017年4月12日にリリースした新作ミニアルバム『I STAND ALONE』は、その先に見据えるサードアルバムへの導入剤になる作品だという。メジャーデビュー以来リリースしてきた2枚のアルバム『SUNRISE JOURNEY』と『Next One』では、’60~’70年代のロックンロールやブルースに影響を受けた、泥臭くハイエナジーなロックナンバーを中心に届けてきたGLIM SPANKYだったが、今作で醸し出すのはサイケデリックな匂い。いままで、あえて封印していた大好きなカルチャーへのチャレンジは、いま、GLIM SPANKYが世間に広く認識されるようになったからこそ踏み出せる、彼らのネクストステージだ。映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌となった『怒りをくれよ』のヒットもあり、多くの新人アーティストが羨むようなサクセスストーリーの裏で、いっそう研ぎ澄まされるふたりの感性と、高まるクリエイティブへの欲求。そして、一途なロックへの愛。そんなGLIMSPANKYの本質に触れながら、ふたりの音楽が持つブレない強さの秘密を探った。
Text_Rie Hada
――前作アルバム『Next One』とはまた違うモードで音楽と向き合っていることが明確にわかる作品になりましたね。
亀本 : 同じことをやり続けても、つまらないと思うんですよ。やっぱり聴いてくれる人に「お? 違うグリムが来たぞ」って思われたいのはありますね。
松尾 : やりたいことが溢れてるんです。私たちはまだ自分たちが持ってる音楽性の、いちばんシンプルなところしか出してないんですね。だから次に出すサードアルバムは、もっと自分が好きな音楽の深みに入った部分を出したいと思ってて。その手前にある『I STAND ALONE』は、それを予感させられる導入剤にしようと思ったんです。
――自分の好きな音楽の深みに入った部分というのは、どういうものですか?
松尾 : 今回で言うと、サイケデリックなサウンドですね。ロックのなかでも、私はサイケデリックなものがすごく好きなんです。だから、いままで『Next One』で出してきたような、勢いのある音だけじゃなくて、いろいろな実験のなかで出来たのがこのミニアルバムですね。
――サイケデリックなロックといっても、捉え方の幅は広いですよね。
松尾 : そこは、いきなりガチサイケをやっちゃうと伝わらないなと思ってるんです。これから作るサードアルバムのなかには、ガチサイケな曲があってもいいんですけど。今回はその導入剤としての作品だから、いまのGLIM SPANKYの土台があったうえで「なんとなくサイケな匂いがする」っていうぐらいのものを目指しました。
――次のサードアルバムから変えたいというのは、いつ頃から考えていたことですか?
松尾 : (前作の)『Next One』をレコーディングし終えたあとでしたね。
亀本 : デビューして、まだ認知されていない状態というのは、CDを出すたびに常に自己紹介じゃないですか。そこを早く消化しないと、良い創作活動の循環にならないと思っていました。セカンドを出し終えたところで、周りの反応を見てても、もう(自己紹介は)完結したなって判断できたから、そろそろ次の段階にいってもいい時期がきたなと。
――今日、訊きたいテーマのひとつに、GLIM SPANKYの音楽のブレない強さの秘密を知りたいなっていうのがあったんですね。
松尾 : ああ、なるほど。
――その理由が、いま言ってたような、自分たちがやりたいことをやるためにプロデューサー的な視点を持っていることが大きいのかなと思いました。
亀本 : それもあると言えばあるけど。たぶんこれは……自分で言うのもあれなんですけど、下手くそだからだと思うんですよ。
松尾 : そうだね(笑)。
亀本 : 僕らは真面目じゃないというか。ロックに対してはストイックですけど、そういう意味じゃなく。たぶん真面目な人は「いろんな音楽を勉強しなきゃいけない」って考えると思うんですけど、僕らは「別にこれは好きじゃねえからいいや」っていう感じなんです。
松尾 : 知らなくてもいいから、とにかく表現してみようっていうスタンスですね。ギターの速弾きを練習しなきゃ、手数を増やさなきゃ、とはならない。逆に今回のレコーディングは「もっと下手に弾こう」っていう感じなんです。私たちが器用だったら、いろんな音楽性ができちゃうけど、不器用だからこそ、何をやってもロックにしかならないんです。
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