音楽をディグっていると、「情報量が多い」アーティストに出会うことがあります。彼らは特定のジャンルに依存せず、様々な音の世界を僕たちに見せてくれます。そういうアーティストの曲は、聴いていてシンプルに楽しい。ただ、彼らの音楽は人に説明するのが難しいのです。「基本的にサイケデリアだけどヒップホップっぽいところもあって、それでいてしっかり日本の歌謡曲なんだ!」と言われたところで、ちょっとよく分からない。3月18日、渋谷WWWに集まったバンドは揃いも揃ってそんな感じでした。
Tempalay(テンパレイ)の『5曲』リリースパーティー & Jerry Paper来日公演。オープニング・アクトを務めたドミコをはじめ、この日のステージを彩るアーティストは、それぞれの方法論でもって僕たちをカオスな世界へと連れて行ってくれました。
2ピースバンド、ドミコが鳴らす骨太ギターロック
先陣を切るのは、2ピースロックバンドのドミコ。彼らの音楽はオルタナとも、サイケとも、シューゲイザーとも解釈できそうな気がします。音の作りがとても精巧で、歪んでいて暴力的だけれども、しっかり耳に残る。ギターのリフがカッコいいんですよね。YouTubeにはOGRE YOU ASSHOLEなどと比較するコメントが見受けられますが、僕はUS産のオルタナ・ロック(The Jon Spencer Blues ExplosionやThe White Stripes)を思い浮かべました。UKインディーが持つダンサブルでキャッチーな雰囲気も感じます。ルーツとなった音楽は色々ありそうですが、根っこの部分は王道のロックンロールなのだと思いますね。つまり徹底的に踊らせる。その特徴は最新アルバム『soo coo?』に顕著で、『Pop,Step,Junk!』はその最たる例でしょう。
ドミコ – 『Pop,Step,Junk!』
タイミングを合わせるだけでも至難の業のはずですが、この二人はそこへ更に音のレイヤーを重ねてゆきます。そのアイディアは実に豊富。エフェクターを巧みに操り、独特の音圧でオーディエンスに迫ります。その意味では、ドミコは音楽性だけでなく、バンドの方法論としても参照点の多いユニットだと思います。彼らを見て勇気付けられるアーティスト、かなり多いんじゃないかな。
Jerry Paperの「変態性」
続いては、今回が二年ぶり二回目の来日公演となるJerry Paper。2016年にリリースされた最新作『Toon Time Raw!』は、名義が『Jerry Paper & Easy Feelings Unlimited』となっておりました。つまり、かつてのソロ・プロジェクトからバンド編成へ移行したということです。この日もバンドセットによるライブでした。
「変態」の意味がそぐわなければ、「奇才」でも「異才」でも良いです。ただ、彼がステージ上で女性用のワンピースを着ていなかったとしても、僕は彼に「変態」という言葉を宛てたろうと思います。というのも、彼の怪しさは、表層よりもむしろ音楽性に現れていたからです。
徹頭徹尾グルーヴィー。出オチ感の強いルックスながら、サウンドの内容が驚くほど豊かでした。シャンソン歌手のようなヴォーカルに、ジャジーで洒脱なバンドの演奏。単純に上手い。メンバーがそれぞれ熟練した技術を持っているので、音のバランスが良いのです。見てくれに騙されそうになりましたが、その音楽性にこそ「変態的」な才能を感じました。
「古い曲もやるよー」と言って、ソロ時代の代表曲『Reprogram Ourselves』も演奏してくれたのですが、これをバンドセットで聴いてしまうと、もう以前には戻れませんね。
Jerry Paper – 『Reprogram Ourselves』
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